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幻の獣と人の世界  作者: お終い
第1章【竜王キング編】
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現状

 フラス達が家に戻ってきてから一時間半が経過した。でもそのフラス達をつけていたフェインが戻ってこない。今はリビングにフェイン以外全員いるためその話を誰も切り出すことができずにいた。全員とはフラスやソラス、ルイも含む。

 みんな気になっているがここで三人以外がリビングから出てしまったら、ルイに怪しまれてしまう。ルイが席を立った時に話すか、みんなを解散させてからルイ以外を集めるかのどちらかだ。今は三人が中心になって話しているためにどちらも出来ない。少し慎重な気もするが怪しまれないため、みんな口には出さないが思っていることは同じだ。

 因みに三人にはフェインは自主トレしてるって言ってある。アリエス曰く、フェインは本当にちょくちょく自主トレしてるらしい。


「そろそろ僕は部屋に戻るよ」

 蒼井さんがタイミングを見計らってそう言った。それに続くようにみんな、時勿論俺も時間をずらして何かしら理由をつけて席を立った。因みにその時海香は良い理由が思いつかなかったのか「カ…カメラテストしてくる」と言って席を立った。流石にその時は三人の頭の上に? が浮かんでいた。俺も頑張って笑いをこらえた。勿論ソラスとフラスは海香と一緒に部屋に戻った。

 全員が解散してからボルクにギアから通信があったらしく、「五分後に竜樹の部屋に集合」という内容だったらしい。

 なんで俺の部屋なんだ…?



 五分後にルイ以外の全員が俺の部屋に集まった。

「なんで俺の部屋に集合なん?」

 さっきの疑問をアリエスに聞く。

「だってルイの部屋と一番遠いのが竜樹の部屋だし」

 確かにこのばかでかい豪邸の一番東にルイの部屋、一番西に俺の部屋がある。

「あの…なんでみんなで集まったの? 誰か説明してくれないかな?」

 状況を理解できていないフラスが遠慮がちに聞いた。

 アリエスがことの流れをすべてフラスとソラスに説明した。

 二人とも納得がいってないようだが不自然には思ったのか何も口出ししなかった。

「どう考えてもおかしいからさっきからフェインに通信を送ってるんだが応答が全くない。多分今取り込み中なのかもな」

 ギアがそう言った。

「じゃあどうする? 探しに出かける?」

 姉ちゃんが言った。

 確かにこんなに時間が経っているのに帰ってこないのは明らかにおかしい。フェインの身に何かあったと考えるのが妥当だろう。でももし探しに行って見つけても、あのフェインが対処できてないかも知れない事態に俺なんかが対処できるのか? つくづく自分の無力さが嫌になる。

「探しに行こう。効率は悪くなるけど、みんなで一緒に探せばもしもの時も何かしらの対処ができるでしょ」

 そんな俺の考えを見透かしたように蒼井さんが言った。みんなそれに賛成する。

 そしてみんな部屋を出たところでギアがみんなを呼び止める。

「今、フェインから通信が入った」

「!」

 全員の足が止まる。

「動けないから迎えに来てって、場所は……ここから二十分くらいのところだ」

「一体何があったの!」

 海香が興奮気味に言った。

「分からん。それは帰って来てから聞こう」

 ギアがそう言うと部屋の窓からアリエスとギアが飛んで行った。



 その後一時間くらいしてフェインを担いだアリエスが窓から戻ってきた。肩を貸しているのではなく、担いでいた。フェインは人狼型で体中ボロボロで立ち上がることも出来なそうだ。アリエスはフェインのその大きな体をベッドに寝かせ、ソラスが治癒を始めた。ソラスが言うには見た目以上に内臓や骨などが傷ついていて、慎重にやらないと危ないらしい。


 ソラスが集中したいというので俺達は、隣の蒼井さんの部屋に行った。

「いったい……何があったんだ。フェインがあんなになってるとこなんて久しぶりに見た……」

 ギアは動揺を隠せてないようだ。

 確かに上位でS級のフェインがあんなになるのはただ事ではない。もしも俺や姉ちゃん、海香がその場にいたらと思うとゾッとする。

「因みに前見たのはいつなの?」

 海香が申し訳なさそうにギアに聞いた。

「ん~…いつだったかな、だいぶ前なのは覚えてるが」

「その時の理由は?」

 姉ちゃんが聞いた。

「ものすごい頭にきたことがあってな、つい半殺しに……」

 ギアはえへへと笑っているが、ついで半殺しにしてしまうとか怖すぎる。

 みんな同じことを思ったのか口を閉じてしまった。海香は血の気が引いてしまったみたいで若干青くなっていた。でもアリエスだけは腹を抱えて大爆笑していてその声だけが部屋に響いた。

「あ…あんまりうるさくしたら、ソラスちゃんが集中できないよ」

 海香が遠慮がちにそう言うと姉ちゃんがその後に続くように言った。

「それに、ルイにも気づかれるよ」

 そっちのことはすっかり忘れてた。そのために部屋に集まったのに。



 それから四時間程経ってから、汗だくになったソラスを抱えた人型のフェインが部屋から出てきた。

「この子は今疲れて眠ってしまった。部屋に入ってくれ、すべて話す」

 フェインはそう言って俺の部屋に入って行った。

 みんなソラスが起きてからでもいい、と言ったのだがフェインがすぐ話したいと強く言ってきたので誰も口を出せず、ソラスに起きてもらった。

 ソラスはまだ眠そうだが、場の空気を読んで黙った。


 フェインが全員の顔を見回してから口を開いた。

「結果から言うとルイに監視がいた」

 誰も予想していなかったと思われる発言に対して、みんな言葉を発することをしない。

「監視は上位でA級のドワーフだった。俺がそいつに気づいたのはフラス達がショッピングモールに入ってからだ。奴は最後まで何も行動を起こすことはなかった。でもそれはつまりこの家までついてくるということだ」

 誰も口を挟まない。いや、挟めないと言った方が正確か。

「それをさせないために俺はそいつを止めることにした。勿論勝算があったから実行した。奴は上位のA級、俺は上位のS級、本来ならあそこまで大怪我をすることはなかったんだ。ただのドワーフなら」

「ど…どういう事……?」

 海香が少し震えた声で聞いた。

「奴は体を機械で改造していた。簡単に言うとサイボーグだった」

 みんな声が出せずに一様に驚いた顔をしている。俺も例外ではないだろう。

「通常のドワーフはバカみたいな怪力と高い防御力が特徴で動きは遅く、固定砲台のような戦い方をする。でも俺が戦ったドワーフは右腕、首、両足、内臓の一部を機械化してあり、そのおかげで人狼型の俺にひけをとらないスピードでの機動力に、元々のドワーフの攻撃力にくわえ機械化してあることで通常の倍近くの攻撃力、固すぎる防御力、内臓も機械だから毒も効果がなかった。奴は自分で体の半分近くを機械化してもらったと言っていた」

「…それは誰に……?」

 蒼井さんが真剣な目をして言った。

「わからない。でも人間にしてもらったと言っていた」

「人…間…」

 人間が何のためにそんなことを………

「俺は奴の体の生身の部分を狙うことで何とか勝てたけどあの有り様だ」

 俺は、俺だけでなくみんな声を発することはなかった。

「あとこれは推測だが、ルイに監視がついていたということは恐らく奴は敵に信頼されてないか利用されてるかのどっちかだろう。恐らく後者の方だと俺は思う。だからみんなルイとはある程度距離を置くようにしてくれ」

 俺達は頷いた。でもソラスとフラスは納得できないようで頷くことをしなかった。

「ソラスとフラスはつらいかも知れないが耐えてくれ。利用されてるってことは助け出して全部聞き出せばいい。心配するな」

 フェインがやさしい声でそう言った。二人はコクリと頷いた。

「あと事情がかわったからお前達の専用武器も作る。いいな?」

 俺はフェインの目をまっすぐに見て頷いた。



 すると廊下の方からコツコツと足音が聞こえてきた。

「!」

 俺は少し驚きみんなの方を見た。ルイ以外の全員がここに集まっていたら怪しまれる。それくらいなら俺でもわかる。

 俺意外の全員が二つある部屋の窓から次々と出て行く。ここは二階だが、みんな力を使って元々開けておいた窓から自分の部屋に戻って行った。

「竜樹君」

 ドアをコンコンと叩く音の後に俺の名前を呼ぶルイの声が聞こえた。

「はい」

 俺は返事をしてドアを開ける。一応すぐ戦闘が出来るように気を引き締める。

「フラスがどこにいるかわかる? さっき部屋行ったらいなかったから」

「トイレでも行ってたんじゃない? もう一回部屋に行ってみたら?」

 俺は怪しまれないように不自然ではない答えを言った。

「同じ部屋のソラスと海香もいなかったんだけど?」

「あぁ…その二人は買い物に行ってたよ。もう戻ってきてるんじゃないかなぁ」

 俺は一瞬ドキッとしたが何とか平静を装って答えた。

「ふーん。ありがと」

 ルイはそう言って部屋を出ていった。

 コツコツと言う足音が遠くなっていくのを確認してから俺はふぅー、と一息ついた。少し時間を稼いだからみんなちゃんと部屋にもどれただろう。

 少し離れたところからフラスとルイの話す声が聞こえた。よかった、間に合ったようだ。

 俺はまた少し安心した。


 その日はその後は何も起こらずに夜になってベッドに入って眠った。

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