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幻の獣と人の世界  作者: お終い
第1章【竜王キング編】
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決意と不安

 ワイバーンの爪が姉ちゃんに当たる直前、突然そいつの体が燃え上がり動きが止まる。

 何が起きたか分からず、俺は困惑する。姉ちゃんも何が起きたか分からないような顔をしている。

 するとワイバーンの体が少しずれる。

「な……何が……」

 ワイバーンが苦しそうにそう言うとゴトッと言う音がして頭のようなものが落ちた。そしてそいつの腕が落ち、体が倒れ、そこから勢いよく出てきた液体が姉ちゃんにかかる。

「無事かい?」

 姉ちゃんの前にはかなり大きく、体格もがっちりとしていて二本の足で立っている、明らかに人ではない人のような生物がそう言った。

「済まないな、遅くなった」

 空から女性の声がして上を向くと、そこには長い髪をたらし背中から大きな翼を生やした人がいた。暗くて特徴がそのくらいしか分からない。

「自己紹介はもう少し待ってね」

 そう言った女性は一体のワイバーンに向かって行き、炎を纏った拳で殴った。そいつはその一撃で気を失い、吹っ飛ばされ他のワイバーンに当たりさらにとんでいく。そのとばされた先には大きな人が短剣を構えて立っている。

「ふん!!!」

 そう声を出しその短剣を振った。

 俺にはその太刀筋がよく見えなかった。

 二体のワイバーンはすぐに肉塊になった。

 そのあと大きな人は別のワイバーンに向かっていき短剣を振るった。ワイバーンは次々に倒れてく。女性の方も確実にワイバーンを倒していく。

 俺達が苦戦して、倒れて死にかけた相手なのにそいつらが次々と倒れていく。でもまだ十体以上残っている。リーダーが死んだのにワイバーン達はそんなのを気にしないかのように、冷静で統率がとれていてこちらを攻撃しようとしてくる。

「きゃっ!」という声がしてそっちを見ると海香が一体のワイバーンに掴まっていた。

 俺は力を振り絞ってそのワイバーンの方に向かって電撃を出した。でもその電撃は弱弱しく、ワイバーンにはじかれる。それのせいでワイバーンはこちらをギロッとにらみつけ海香を地面に叩きつけるかのように離し、こっちにむかって来る。

 ……よし、海香を離した。攻撃が当たるところを鱗で固めれば死ぬことはないだろう。

 ワイバーンが爪で攻撃してきたが鱗で防御する。

「ぐ……」

 衝撃がすごい。もう動けない俺にはかなり大きなダメージを受ける形になってしまった。

 連続で反対側から翼が俺の脇腹に当たる。

 反応できなかった。いや反応出来たとしても鱗が出せない。さっきの一撃で体力のほとんどを持ってかれた。考えが甘かった。

 攻撃が当たったところからミシミシと音がして俺は血を吐いた。口の中が鉄臭い。

 目の前にいるワイバーンが大きく息を吸い込む。

 あの高温の炎を吐く気だ。

 まずい、今の俺は避ける体力もそれをガードするための電撃や鱗も出せない。

 何とか腕をあげるがそれではガード出来ない。

 口から炎が出る、瞬間、そのワイバーンの体が左右にずれ、崩れ落ちた。

「しっかりしろ、ボウズ」

 大きな人が俺に背中を向けたまま言った。

 いつの間にか、ワイバーンの数は残り四体にまで減っていた。

 蒼井さんも戦ってくれている。フラスは海香を守っている。姉ちゃんも一緒にいる。

「うりゃぁ!」

 女性は叫びながら腕を大きく振り下ろした。すると女性の近くにいた三体のワイバーンの周りに無数の火の粉が舞う。その火の粉がワイバーンの体に当たるとそれは爆発してワイバーン達は燃え焦げ、倒れた。

「くそッ」

 一体だけとなったワイバーンが逃げようと飛び立ったが、大きな人がその尻尾をつかみ地面にたたきつける。

 ワイバーンはその一撃で気絶して辺りはとたんに静まりかえる。

「全員うちにきな。治療する。と言っても動けない奴ばっかだから家まで運ぶぞ」

 女性はそう言って姉ちゃんを抱え上げた。俺と海香は大きな人の肩に乗せられ運ばれた。蒼井さんがフラスを抱えている。




 俺達はその人の家に運ばれたあと、簡単な治療をされ、全員リビングに集められた。俺と海香と姉ちゃんは立てないので横になったままだが。

「自己紹介が遅れたな。私はアリエス・ラスタニア。フレイムギアのパートナーだ」

 そう自己紹介した女性は肌は白く、腰よりもある金色の髪で緑色の瞳をしていて年は俺よりも年上っぽくて、凛とした雰囲気をしている。

 その人の腕から声がする。

「フレイムギアだ。ギアって呼んでくれて構わない」

 それに続き、隣にいた大きな人が喋り出す。

「ウェアウルフのフェインだ」

 フェインと名乗った奴を見ると体格が、がっしりとしていて身長は二メートル以上あり、顔はまさに狼の顔だった。

「さっきは助けてくれてありがとう」

 俺はお礼を言った。

 アリエスと名乗った女性は俺の挨拶を鼻で笑い、強めの口調で喋りだした。

「あんた達、あんなワイバーン達になにやってんの? あんなの下っ端もいいとこの奴らに数だけでおされてたらあんたら近いうちに死ぬよ? あんたら全員訓練が足りないんだよ」

 いきなり説教された。でも確かに訓練は不足してると思う。俺達は黙って話しを聞いた。

「いいか? 幻獣達の力ってのはちゃんと訓練して、使いこなすことができれば幻獣のみの時とは比にならない程の力が出せる。でも、あんた達は訓練不足で力を使いこなせず、幻獣達の力を半分も出せてない! あんたら殺されたいの?」

「その辺にしとけ」

 フェインがアリエスを止めた。

「お前らは恐らく俺に専用武器を作ってもらおうと思ってここに来たんだろうが今のお前らでははっきり言って満足に扱えない。作ってやってもいいが、しばらくはお前達はそれを使うな。いいな? 」

 俺は頷く。

「ま、はっきり言ってお前ら全員経験不足で訓練不足だ。今回のことでそれぞれ何か感じたと思うからせいぜい頑張れや」

 そう言ってフェインはリビングから出て行った。


 そういえばさっきからフェインのパートナーが見えない。いや、戦ってる時もいなかった。

「なあ、フェインのパートナーは?」

 俺は横になったままアリエスに聞いた。

「死んだ」

 俺達は予想していなかった答えに一瞬凍りつく。

「ラスタという名前で私の父親だ。父はキングの手下に殺された、私をかばってな。だから私はもう誰も死なせない為に毎日訓練をした。お前らも訓練しないとほんとに死ぬぞ」

 アリエスはも立ち上がって続ける。

「お前ら部屋に戻れよ。運ぶのめんどくさいから自分で戻れ」

 そう言ってアリエスは出てってしまった。


 自分で戻れって言われても俺達は動けないんだよな…。

「そういえばボルク、ワイバーンが言ってた上位幻獣ってどういう意味?」

 俺は俺の中にいるボルクに聞いた。

「幻獣はその種族や能力、力によって大きく四つに分けられる。上から、最上位、上位、中位、下位だ。下位幻獣が一番数が多く、最上位幻獣はドラゴンの一種類しかいない。上位から下位はさらにS級からE級までの各二つずつに分かれる。因みにフェニックスのカイエンは上位のS級、魔女のフラスは上位のA級、ソラスは中位のB級、グリフォンのリフは上位のA級、ウェアウルフのフェインは上位のS級、最初に攻めてきたゴブリン達は恐らく下位のE級、さっきのワイバーンはリーダーが中位のC級、それ以外が下位のD級とE級だ」

 幻獣達にそんなのがあったとは知らなかった。

 俺のパートナーは最上位なのに下位のゴブリンやワイバーンに苦戦してるようではいつか本当に死ぬかもしれない。アリエスやフェインが言ったように訓練不足だと実感する。


 姉弟で世界を救う英雄になると思ってボルクや姉ちゃん達と旅に出た。でもやっぱり楽観的すぎたんだ。フェインが言ったように訓練不足で経験不足だ。そんな俺達が世界を救うとかただの妄想野郎と笑われるのがオチ。


 俺が姉ちゃんの方に顔を向けると姉ちゃんと目が合う。その目はさっきまでの姉ちゃんの目とは違い、気迫がこもっていた。姉ちゃんも俺と同じ思いをしてるんだとわかった。海香や蒼井さんの目も今までとは違った。


「さて、みんな部屋に戻るよ。アリエスが部屋の方の準備をしといてくれてたよ。この家は広いからみんなを部屋まで運ぶのが大変そうだ」

 蒼井さんが程よく緊張していた空気を崩してくれた。


 俺は蒼井さんに部屋に運んでもらいベッドに寝かしてもらった。掛布団をかけてもらい部屋の明かりを消してから蒼井さんは部屋を出てった。

 今日は自分達の力不足を実感した。俺は、俺達は幻獣達と強くなるどころか完全に足手まといになっている。ボルク達幻獣はどう思っているんだろう?今彼は俺の中にいるが俺にはボルクの気持ちも分からない。俺は不安になってきた。

 結局その日は疲れているのになかなか寝付けず、結局眠ったのは布団に入ってから約二時間が経ってからだった。

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