↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガールライダー☆ 〜凄腕ガンマンの彼女と過保護な死神と真面目な元保安官の裏社会コメディ〜  作者: VANRI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/98

誇りあるバッジ

 その街は、西日に赤く染まっていた。

 木造の保安官事務所の軒先で、トニーは足を止め、ポケットからくしゃくしゃになった煙草を取り出した。マッチを擦る手の動きが、ほんの少しだけ止まる。


「……トニー?  どうしたの? 急に立ち止まって」


 隣を歩いていたメアリーが、不思議そうにトニーの顔をのぞき込んだ。金髪のポニーテールが、夕風にそよそよと揺れる。


「いや……なんでもない……」


 トニーが紫煙を吐き出した、その時だった。


 事務所の扉が開き、一人の青年が出てきた。仕立てのいい茶色のベストに、しっかりと手入れされた革のホルスター。そしてその胸元には、夕日を受けてギラリと輝く銀色の六角星――保安官バッジがあった。


 整った顔立ちの茶髪の青年――ウェインは、手にしていた指名手配書の束を抱えたまま、ピタリと固まった。

 その緑色の瞳が、驚きと懐かしさ、そして溢れんばかりの感情で激しく揺れる。


「……ト、ニー……先輩……?」


 ウェインの声は震えていた。手から手配書がひらひらと数枚こぼれ落ちるのも気にせず、彼は一目散に大股で駆け寄ってきた。


「本当に……本当にトニー先輩なんですかッ!?」

「……久しぶりだな、ウェイン。元気そうじゃないか」


 トニーは少し照れくさそうに、ハットの庇(ひさし)を指で押し上げた。

 ウェインはトニーの両肩をガシッと掴み、穴があくほどその顔を見つめる。かつて自分が背中を追い続けた、憧れの保安官の顔を。


「元気に決まってます!  あなたがこの街を去ってから、僕は一日だって鍛錬を怠ったことはありません! 見てください、このバッジを……!」


 ウェインは誇らしげに胸を張った。


「あなたが街を出るあの日……僕にこのバッジを預けて言ってくれたでしょう。『いつかまた、俺が保安官をやりたくなった時まで持ってろ』って!  僕はあの言葉を胸に、血の滲むような思いでこの街の保安官になったんです!」


「……ああ。覚えてるよ」


「町長も、街の連中も、みんな『トニーは街を捨てる気か!』とあなたを責めました!  でも、僕は! あなたを信じて、必死で周りを説得したんです!  あなたが帰ってきた時に、いつでも胸を張って迎えられるように……!」


 ウェインの熱い言葉に、トニーはどこか気まずそうに目を逸らし、煙草を深く吸い込んだ。 


「……ウェイン。お前はもう立派な一人前だ。もう俺の影を追う必要は――」

「いいえ!  追います!」


 ウェインは食ってかかった。そして、トニーの後ろに佇むメアリーたちへ、初めて険しい視線を向けた。


「先輩……なぜこんな賞金稼ぎの群れの中にいるんです?  なぜ、こんな子供の旅のお供なんてしているんですか!?  あなたの腕と正義感があれば、どこでだって一流の保安官としてやり直せるのに!」


「なっ……!  なによあんたッ! 人のことを『子供』扱いしてッ!!」


 メアリーがカッとなって身を乗り出したが、トニーがそっと手を出してそれを制した。


「ウェイン。メアリーはただの子供じゃない。俺が自分の意思で選んだ『相棒』だ」

「相棒……?  ああ、そんな……っ」


 ウェインの顔に、ショックと悔しさが入り混じる。自分が何年も温めてきた「トニーと共に街を守る」という夢が、目の前の少女に奪われたような感覚だったのだ。


「……納得がいきません。先輩、今夜僕の家に来てください。昔みたいに酒を飲みながら話し合いましょう。あなたが目を覚ましてくれるまで、僕は諦めませんから!」


 ウェインは悔しそうに唇を噛み締めると、翻って事務所へと戻っていった。

 その背中を見送りながら、モネが扇子で口元を隠し、くすくすと妖しく笑った。


「ふふ……あらあら。トニーを巡る『一途な元後輩』と『今の相棒』の嫉妬劇かしら? 観客としては最高に面白いわね」

「笑い事じゃないわよモネ!  なんなのあいつ、あたしたちのことバカにしてッ!」


 プンプンと怒るメアリー。だがトニーは、去っていくウェインの背中に漂う「過剰な緊張感」を見逃していなかった。


(……あいつ、肩に力が入りすぎてやがる。一人で何を背負い込んでるんだ……)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。