お仕置きタイム
激しい衝撃とともに転倒した馬車から、這い出てくる刺客たち。
そこへ、馬から降り立ったメアリーたちが影を落としながら歩み寄る。
「モネさん、後方よし!」
「ええ、ベイル。全員、戦意を喪失しているわね」
モネが美しく仕込み刀を鞘に納める音がカチリと響く。すでに他の刺客たちは、トニーとベイル、フランによって瞬く間に無力化されていた。
馬車の荷台から、厳重に施錠された金庫を引きずり出すキャル。
そこには、街の人々が騙し取られそうになっていた全財産の金貨と、大切な土地の権利書がそのまま残されていた。
「あった……! これで、街の人たちは救われる……!」
キャルは金貨を抱きしめ、ポロポロと目から涙をこぼした。
「よかったな、キャル。お前のその神業射撃のおかげだ」
トニーが優しく微笑みながら、キャルの小さな肩を叩く。
そこへ、這い起きてきた刺客のリーダーが、青ざめた顔で捨て台詞を吐いた。
「く、くそっ……! だがな、大牧場主様とペテン師オーナーの『ダイヤモンド鉱山』の嘘はもう街中に広まってるんだ! 証拠のダイヤ原石がない限り、あの二人を罪に問うことなんて――」
「あら、証拠? これのことかしら?」
モネが優雅に歩み寄り、扇子の中から一粒の大きな「ダイヤモンドの原石」を取り出した。サロンからベイルが密かに回収してきたイカサマの原石だ。
「ふふ、この石が本物かどうか……キャルちゃん、確かめてあげなさい」
モネから原石を受け取ったキャルは、ニヤリと涙を拭って不敵に笑った。
「本物のダイヤモンドはな……銃丸で撃ったくらいじゃ傷一つ付かねぇんだよッ!」
キャルが地面にその石を転がし、至近距離からリボルバーをぶち抜いた!
――ズドンッ!!
パリイィィィンッ!!
激しい音とともに、原石は跡形もなく粉々になって砕け散った。ただの安物に化学薬品を塗っただけのガラス細工だったのだ。
「ひ、ひえぇぇぇ……ッ!?」
「はい、イカサマ決定ー! これで大牧場主もペテン師も、全員御用ですねぇ」
フランが嬉しそうに手を叩く。
事件は完全に解決した。
詐欺のからくりと粉砕されたガラス片、そしてベイルがスり取った裏帳簿によって、悪徳オーナーと大牧場主は保安官に逮捕され、農民たちの土地と財産は無事に守られたのだった。
夕焼けが街全体を赤く染める頃、街の外れでメアリーたちは旅立ちの準備をしていた。
「本当に……ありがとう、お姉さん。みんな」
男物のポンチョを脱ぎ、動きやすい新しいカウガール姿になったキャルが、少し照れくさそうにメアリーたちを見上げていた。
「俺……じゃなくて、私、もっともっと射撃の腕を磨くよ。いつか、メアリー姉さんを超えるような、凄腕のガンマンになってみせる!」
「ふふっ、言ったわねボクちゃん! 楽しみに待ってるわよ」
メアリーはしゃがみ込むと、キャルの赤毛をこれでもかと愛おしそうにガシガシと撫で回した。
「痛たたっ! だから撫でるなってばッ!」
「いいじゃない、あたしたちはもう『荒野の姉妹』なんだから!」
真っ赤になって暴れるキャルと、嬉しそうに笑うメアリー。その光景を後ろで見守りながら、トニーが煙草に火をつけた。
「やれやれ……これでまた一人、恐ろしいおてんば娘が増えたな」
「ハハッ……賑やかで良いじゃないですか」
「ふふ、いつか彼女が壁にぶつかったら、また助けに来てあげましょう」
夕日に向かって馬を進める5人の背中に、キャルはハットを高く掲げて大きく手を振った。
「またねー! クソお姉さーん!!」
「誰がクソお姉さんよーーーッ!!」
メアリーの威勢の良い叫び声が荒野に響き渡り、新しい風とともに、5人の旅はまた次のアドベンチャーへと続いていくのだった――。




