荒野の激戦
「一気にお掃除といこうじゃない!!」
メアリーの咆哮とともに、二挺拳銃が跳ね上がった!
――ズドンッ! ズドンッ!!
迫り来る用心棒たちの手首と銃身を正確に撃ち抜くメアリー。
その真横で、赤毛の少女キャルも弾丸の如く飛び出した。
「俺を……俺の銃をコケにしやがってぇぇぇッ!!」
キャルが小柄な身体を活かして敵の懐に滑り込み、カスタムリボルバーを放つ。
驚異的な速射速度。投げ上げられたコインすら撃ち抜くその神業射撃が、用心棒たちの太ももや拳を的確に穿ち、次々と膝をつかせていく。
「へぇ……大した腕前じゃない、キャル!」
「フンッ! あんたに褒められたって嬉しくねぇよ、クソお姉さん!!」
強がりを言いながらも、メアリーとキャルは背中合わせになり、お互いの死角を完璧にカバーし合いながら弾丸の雨を降らせていく。二人の息は、出会ったばかりとは思えないほどピッタリだ。
「わあ、若者たちが元気ですねぇ。僕たちも負けてられないな!」
フランが身軽なアクロバットで宙を舞い、頭上から敵のハットを叩き落としながら短銃の柄で脳天を叩き割っていく。
「まあ……イカサマのペテン師に、少年の――失礼、少女の純情を踏みにじった罪。高くつくわよ」
モネの仕込み刀が一閃!
突進してきた刀持ちの用心棒たちの武器を、一瞬にして三スカスカに切り刻んで無力化する。
「モネさんの周りには誰も近寄らせません!」
ベイルも隠しナイフを手裏剣のように飛ばし、遠くから銃を構えようとした用心棒の手を正確に刺し穿つ。
「おいおい、俺の出番が残ってねぇぞ……」
トニーは苦笑しながら、逃げ出そうとした悪徳オーナーの前に立ち塞がり、重厚なリボルバーの銃口をその額にピタリと突きつけた。
「どこへ行く気だ? ペテン師さんよ。俺たちの連れが、たっぷりと話をしたそうにしてるぜ?」
「ひ、ひぃぃぃッ!?」
あっという間に全滅した用心棒たち。
メアリーとキャルは、硝煙の立ち上る銃口にふっと息を吹きかけると、同時に銃をホルスターへ収めた。
「どうよ、キャル! あたしの腕も捨てたもんじゃないでしょ?」
「……っ、チッ。まあまあだな……まあまあ!」
キャルはプイッと横を向いたが、その頬は少し赤くなり、エメラルドグリーンの瞳にはメアリーへの強い憧れと尊敬の色が浮かんでいた。
だが、トニーに捕まった悪徳オーナーは、冷や汗を流しながらもニヤリと醜い笑みを浮かべた。
「ふ……ハハハ! 殴り込みは威勢が良いがな、遅かったな!」
「なんだと……?」
「すでに『本物の金貨』を載せた我が社の特別郵便馬車が出発したところだ! 大牧場主様の刺客どもが案内して、今頃農民たちの土地の権利書と引き換えに全財産を奪い取っている頃よ! お前たちが追いつけるわけが――」
――ガンッ!!
言い終わる前に、キャルがオーナーの顔面を思い切り蹴り飛ばした。
「うるせぇ!! 俺の街の人たちに手ぇ出すんじゃねぇッ!!」
キャルはメアリーを振り返り、真剣な眼差しで叫んだ。
「メアリー! 頼む、俺に貸しを作らせてくれ! あの馬車を追うのを手伝ってくれッ!!」
メアリーはポニーテールを揺らし、最高の笑顔で親指を立てた。
「当たり前じゃない! さあみんな、荒野の大追跡といこうか!!」
ドドドドドドドッ――!!
夕日に染まる赤茶けた荒野を、激しい地響きとともに一台の重装郵便馬車が爆走していた。
馬車に乗っているのは、大牧場主が解き放った凶悪な刺客ども。そして車内には、農民たちから騙し取ろうとしている巨額の金貨と土地の権利書が積み込まれている。
「急げ!! 追っ手が来ないうちに大牧場主様の屋敷へ届けるんだ!」
御者席の刺客が鞭を荒々しく振るった、その時――!
――ババババンッ!!
進行方向の岩山の上から、猛烈な旋風とともに馬を駆る人影が躍り出た!
「逃がすかぁぁぁッ!!」
ポニーテールを夕風になびかせたメアリーと、その横で馬の手綱を握り締めながら必死についてくる赤毛の少女キャルだ!
さらにその後方からは、トニー、モネ、フラン、ベイルが馬を並走させ、完璧な包囲陣を敷いている。
「な、なんだアイツらは!? 撃て! 蜂の巣にしろッ!」
馬車の屋根や小窓から、銃を持った刺客たちが一斉に身を乗り出して乱射を始めた。
飛び交う鉛の弾丸が、メアリーたちの足元のアスファルトや土を激しく跳ね上げる!
「キャル! 前の御者を狙える!?」
「当たり前だ! 俺の神業……見やがれぇぇぇッ!!」
爆走する馬の上という極限の揺れの中、キャルは一瞬だけ手綱から手を離すと、愛用のカスタムリボルバーを構えた。
エメラルドグリーンの瞳が、研ぎ澄まされたスナイパーの光を宿す。
――ズドンッ!!
「ぐあぁっ!?」
放たれた一弾は、見事に御者が持っていた手綱だけを正確に撃ち切った。暴走しかける馬車。
「へっ、やったぜ!」
「ナイスショット! でも、後ろの刺客はあたしたちが叩き落とすわ!」
メアリーが跳ねる馬の上から二挺拳銃を連射し、馬車の屋根にいる刺客たちの銃を次々と弾き飛ばす。
「ふふ、ちょっと派手に行こうかな」
フランが馬の上で身を起こすと、すれ違いざまに馬車の車輪の車軸へ向けて特製の小さな炸薬ナイフを投げつけた!
――ドカンッ!!
「ひやぁぁぁっ! 馬車が傾くぞー!?」
片方の車輪を破壊された郵便馬車は、凄まじい砂煙を上げながら横転しかけ、荒野の真ん中で激しく停止した。




