煌めく街の陰り
その頃――天幕の奥にある、金持ちや投資家たちが集まる絢爛豪華な特別サロン。
煌びやかなドレスに身を包んだモネが、ワイングラスを優雅に傾けながら、部屋の中心で熱弁を振るう男を見つめていた。
その男の横には、ハットを深くかぶった気取った仕草の若い男――この興行の主宰者であり、キャルの雇い主でもあった。
「みなさん! ご覧ください、これが我が社が荒野の秘境で見つけた【本物の未研磨ダイヤモンド】です!」
男が掲げた革袋から、握り拳ほどもある大きな原石が転がり出ると、サロンに集まった大富豪や銀行家たちから「おおーっ!」と歓声が上がった。
「この秘境の鉱山に出資していただければ、わずか数ヶ月で投資額の十倍の配当をお約束しましょう!」
群がる出資者たち。
だが、その人集りの後ろで、フランが薄く冷ややかな笑みを浮かべながら、モネの耳元でヒソヒソと囁いた。
「なあモネ。あの原石、表面の傷とカットの角度が不自然じゃないか?」
「ええ……気づいた? フラン」
モネは扇子で口元を隠し、鋭い琥珀色の瞳を細めた。
「あのダイヤモンド……一見すると発掘されたばかりの原石に見えるけれど、あらかじめカットされた安い南アフリカ産のダイヤモンドの表面を、意図的に薬品と砂利で傷つけて『荒野で採れたばかり』に見せかけているわ」
「やっぱりな。 いわゆる『塩撒き(本物の宝石を土に埋めて採掘されたフリをする詐欺)』ってやつか。あの詐欺師ども、街中の金持ちから莫大な出資額を騙し取る気だな」
「それだけならまだいいのだけれど……」
モネの視線が、サロンの窓の外――貧しい開拓農民たちが集まる広場へと向けられる。
「あの詐欺師たちのバックにいるのは、この地域の土地を狙う大牧場主よ。彼らは農民たちにも『夢の鉱山投資』を持ちかけて土地の権利書を担保に金を貸し、破産させて土地を丸ごと奪う気だわ」
「へぇ……えげつないねぇ。あ、ベイル、口開けてボケっと見てないで、あの社長のポケットから裏帳簿でもスってきてよ」
「は、はいッ! モネさんのためになるならお安い御用です!」
ベイルがハットの端をサッと深めにかぶり直し、人ごみに紛れてスリの超一流の手腕を発揮しに消えていく。
広場へ戻ってきたトニーとメアリー。
そこへ、顔色を変えたベイルと、優雅に歩み寄ってくるモネ&フランが合流した。
「メアリーさん! 大変です!」
ベイルがスり取ってきた帳簿を開きながら、メアリーたちに事の真相(ダイヤモンド詐欺と、農民たちの土地横領計画)を素早く説明する。
「な、なんですって……!? ダイヤモンドが偽物で、農民たちを騙して土地を奪うですって!?」
メアリーが目を見開く。
そして、その説明を聞いていた赤毛の少女――キャルが、顔を真っ青にして激しく狼狽し始めた。
「っ……、嘘だろ……!? オーナーがそんな悪い奴なわけ……! だってあの人は、天涯孤独の俺を拾って、撃ち合いのショーで飯を食わせてくれてるんだぞ!?」
「キャルちゃん、騙されちゃダメだよ」
フランがキャルの肩にそっと手を置き、意地悪く、でもどこか優しく囁く。
「君のその見事な神業射撃ショーもね、客の目を逸らして『この街には夢がある』と思わせるための、ただのド派手な『目くらまし』に使われてただけさ」
「そんな……ッ!!」
ショックを受けるキャル。
その時――天幕の奥から、ガラの悪い用心棒たちがゾロゾロと姿を現し、キャルとメアリーたちを取り囲んだ!
「おいおい、小娘。余計なことを喋ってもらっちゃ困るんだよ」
悪徳オーナーが冷笑を浮かべながら出てくる。
「キャル、お前は黙って銃を撃っていればいいんだ。……おい、その連中、怪しい真似をしやがる。消せ!」
「……へえ」
メアリーの顔から戯れの手加減が消え、ポニーテールを揺らしながら冷徹な殺気が立ち上った。
愛用の二挺拳銃のグリップに手をかける。
「自分の手汚さずに子供をダシにして、農民から土地を騙し取る……。あたしの嫌いな要素が全部詰まってるじゃない」
「メアリーちゃん、お怒りだねぇ♡」
「キャル! 自分の銃は持てるわね!?」
メアリーが叫ぶと、キャルは一瞬ビクッと身体を震わせたが、すぐに涙を拭い、エメラルドグリーンの瞳に強い光を宿してカスタムリボルバーを引き抜いた!
「当たり前だッ! 俺の銃は……悪党の手先になるためにあるんじゃねぇ!!」




