反撃
「モネさん……」
トニーが手際よくジネの肩と足の止血処置を施しながら、感極まったように呟く。
「よし、これで片方は収まったわね……」
メアリーがジネの身体を優しくトニーに託し、冷ややかな殺気を孕んだ青い瞳で、未だに傭兵たちを従えているバレット社長の方へとゆっくり向き直った。
「さあ……次は、うちの可愛い恩人を射ち抜いてくれたクソ野郎どもの番よ」
首元にフランのナイフを突きつけられ、冷や汗を流して震えるバレット社長。
「俺たちの負けだ……! 引き揚げる! 引き揚げるから命だけは……っ!」
首元に突きつけられたフランの刃に怯え、惨めな声で降伏を口にするバレット社長。
だが――その目が、あからさまに背後の岩陰へと怪しい合図を送った。
(……この往生際の悪さ、期待を裏切らないわね!)
メアリーが口元をニヤリと歪めたその瞬間!
「野郎ども、構うなッ! 全員ブチ殺せぇぇぇッ!!」
岩陰からバレットが隠していた凶悪な雇われ用心棒たちが一斉に飛び出し、メアリーたちへ襲いかかってきた!
「ひやぁぁぁッ!? 俺ごと撃つ奴があるかバカ者――ッ!?」
「あはっ、仲間にも見捨てられちゃうなんて惨めだねぇ♡」
フランが呆れ果てたように笑いながらバレットを蹴り飛ばし、襲いかかる刺客の銃弾を軽やかなステップで回避する。
「モネさん!! ジネちゃんとトニーさんは俺が守ります!! モネさんは思いっきり暴れてください!!」
「ふふ、頼もしいわねベイル。……さあ、女の子を傷つけた報い、たっぷり受けてもらうわよ」
ベイルが黒いハットの端をキリッと深めにかぶり直し、ジネを庇うトニーの前に立ちはだかって短剣を構える。その横を、モネが仕込み刀を閃かせながら風のように駆け抜けた!
「トニー、ジネをよろしく!!」
「おう! こっちは心配すんな、思う存分叩きのめして来い!」
メアリーはポニーテールを跳ねさせ、愛用の二挺拳銃を同時にジャキッと構えた。
「ジネの流した血の分……一滴残らず、最高に高いお会計を払わせてもらうわよーっ!!」
ズバババババンッ!!
「ひぃぃっ!? やれ! あいつらを蜂の巣にしろーッ!」
バレットが情けない悲鳴を上げながら地面を這い回る中、重火器を構えた大柄の用心棒たちが一斉に引き金を引いた。荒野に雷鳴のような銃声が轟き、大量の鉛の弾丸がメアリーたちへ降り注ぐ。
だが――怒りに燃える5人の前では、そんな雑な乱射など留まる理由にもならない。
「ジネの……流した血の分まで!!」
先陣を切ったのはメアリーだった。跳ねるようなフットワークで弾幕の隙間を潜り抜けると、両手に握った二挺拳銃が跳ね上がる。
――ズドン! ズドンッ!
「ぐあぁっ!?」
「俺の足が……ッ!」
正確無比な二連撃。メアリーは咆哮しながら、用心棒たちの銃を持つ腕と脚だけを正確に撃ち抜いていく。
「ジネの肩の分! そして……歩けなくした足の分よーーーッ!!」
至近距離からの容赦ない連射。メアリーの気迫に押された大男たちが、次々と悲鳴を上げて砂煙の中に倒れ伏した。
その頭上を、黒い影が軽やかに舞う。フランだ。
「ねえ、女の子に銃を向けちゃダメってママに教わらなかった?」
重機関銃を乱射していた巨漢の背後へ、音もなく滑り込んだフラン。耳元で甘く囁いた瞬間、短銃の重厚な柄で男の顎を鋭く跳ね上げた。
――ガキィッ!!
「ぶはっ!?」
脳揺れを起こして倒れる巨漢の肩を、フランはまるで跳び箱のように踏み台にして高く跳躍する。宙で優雅に体を捻りながら、周囲の用心棒たちの手首を正確に撃ち落としていった。
「あはっ、お掃除お掃除♡ メアリーちゃんを怒らせた罪は重いよ?」
一方、反対側の敵陣には、静かな殺気を纏ったモネが歩みを進めていた。襲いかかる刃物持ちやショットガン兵に対し、彼女は愛用の仕込み杖の柄にそっと手をかける。
「刃の届く間合いに入ったのが……運の尽きよ」
――シュパァァァンッ!!
一閃。銀色の閃光が走ると同時に、迫り来たるショットガンの銃身が真っ二つに切断され、空中に舞った。
「な、刀で銃が……っ!?」
戦慄する敵に対し、モネは刀を鞘へ納める動作のまま、重厚な木製の鞘で相手の溝おちを力強く突く。息を詰まらせて崩れ落ちる敵を冷ややかな瞳で見下ろし、風に銀色に光る髪をなびかせながら、舞を踊るように次々と敵を無力化していった。




