思わぬ出会い
宴会場へと続く広大な吹き抜けのホールは、すでに血煙と硝煙が立ち込める激しい戦場と化していた。
押し寄せる賞金稼ぎたちを蹴散らし、快進撃を続けていたメアリーだったが、狭い通路で挟み撃ちに遭い、体勢を崩してしまった。
「もらったぁぁぁ! 手配書首のメアリーーーっ!!」
頭上から、大型の斧を掲げた巨漢の賞金稼ぎが必殺の一撃を振り下ろす。メアリーは回避姿勢をとることもできず、完全に追い詰められた。
しまっ……! くっ、かわせない――!!
メアリーが歯を喰いしばった、まさにその瞬間。
ーーーガァァァンッッ!!!!
重厚な金属打撃音がホール全体に激しく響き渡り、空中でメアリーを押し潰そうとしていた巨漢が、まるで大砲で撃ち抜かれたかのように横合いへ吹き飛んで壁を砕いた。
「……相変わらず、無茶な戦い方をするのね。メアリー」
舞い散る粉塵と煙の向こうから、黒い革のロングコートを優雅になびかせて歩み出てきたのは――モネだった。
コートの下に纏っているのは、深々と胸元がざっくりとV字に開いた濃紺のカッティングドレス。動くたびに豊満で柔らかな胸の谷間が露わになり、しなやかな腰つきと相まって息を呑むような大人の色気を漂わせている。それでいて、手にした巨大な仕込み刀を軽々と扱う姿は、妖艶さと圧倒的な強さを同時に放っていた。
「モネ……!!」
メアリーがパッと表情を明るくする。
「遅くなってすまない。……ここからは、私も混ぜてもらうぞ」
モネはメアリーの前にスッと立ちはだかり、迫り来る敵の銃弾を仕込み刀の身で易々と弾き返した。圧倒的な剣技と立ち回りで、あっという間にメアリー周辺の包囲網を切り開いていく。
「助かったよ、モネ! なんでこんなところに!?」
「話せば長くなる。……だが、どうやらこの船自体が、最初から仕組まれた巨大な罠のようね」
モネがメアリーを守りながら背中合わせになった、その時だった。
「――久しいなぁ、フラン。それに……モネか」
ねっとりと響いた不気味な声に、後方で戦っていたフランの足がぴたりと凍りついた。
乱戦の奥から姿を現したのは、フランと同年代の若い男。
「お前……生きていたのか……」
モネが思わず息を呑む。
組織の本拠地が爆破されたあの日、幹部のウィリーがわざわざ人の少ない日を選んで決行したため、出払っていた優秀な構成員たちが散りぢりになって生き延びていたのだ。そしてその中には、昔からフランの圧倒的な才能を激しく嫉妬し、目の敵にしていたこの男も含まれていた。
「ククッ……お前らが生きててくれて本当に嬉しいよ。しかも組織を壊してくれたお陰で、今はすっかり自由だ。以前は仲間同士の殺し合いが固く禁じられてたが……もう何のルールもない! これでやっと、お前を心置きなく殺してやれるなぁ、フラン!!」
狂った笑みを浮かべる男――ベイル。
かつて同じ暗殺組織で「天才」と持て囃されるフランの影に隠れ、ずっと泥を舐めさせられてきた男だ。フランに対する強い嫉妬と殺意だけを糧に地獄を生き延びてきたベイルの全身からは、狂気に満ちた不気味な威圧感が溢れ出していた。
ベイルが腰の仕込み短剣に手をかけた瞬間、空気が一変する。
くっ……! こいつ、昔よりさらに殺気が増してる……!
冷や汗を流すフラン。ベイルの間合いは凶悪で、一瞬でも背を見せれば確実に首を狩られる。メアリーたちの元へ助けに行きたくても、指一本動かすことすら許されない死線が二人を縛り付けていた。
「チッ……! メアリーちゃん! ダメだ! そっちへ行けない……っ!!」
「くそっ、俺も囲まれて近づけねぇ!!」
トニーもまた、四方から押し寄せる敵の集団を喰い止めるので手一杯になり、フランとトニーの二人が分断される。
しかし――今のメアリーの隣には、強力な助っ人・モネがいる!
「メアリー! 目の前の敵を片付けるわよ!」
モネはざっくり開いた胸元から覗く艶やかな肌を濡らしながら、不敵に美しく微笑んだ。
「了解っ! 暴れ散らかすわよーッ!!」
モネが胸元を揺らしながら、肉厚の仕込み刀で敵の武器ごと強盗を叩き切れば、その隙を突いてメアリーが目にも留まらぬ脚蹴りと正確な急所撃ちで敵を気絶させていく。
「な、なんだこの女たちは……っ!? 強すぎる――」
「ひっ、怯むな! 囲んで殺せ!!」
賞金稼ぎたちがパニックに陥る中、背後からはトニーの「そうはさせるかよッ!」という乾いた銃撃のサポートが飛ぶ。
メアリー&モネの圧巻のタッグ、そしてトニーの援護射撃により、目の前の群がる刺客たちはあっという間に殲滅されていった。
一方――
「……ヘラヘラ笑うなよ、ベイル」
一人ベイルと対峙するフランの雰囲気が、ガラリと変わった。
いつもの甘ったるいデレデレ顔は完全に消え去り、瞳からは光が失われ、超合金のように冷たく鋭い「死神」の顔が覗く。
「メアリーちゃんとの甘い時間を邪魔されただけでも万死に値するのに……よりによって、僕の目の前でメアリーちゃんに手を伸ばそうとするなんてねぇ」
「ハッ! 吐き気がするぜ、その面! 昔からそうやってスカしやがって……死ねぇッ!!」
ベイルが床を蹴り、蛇のような軌道でフランの喉元へ刃を走らせる。
フランもまた、袖口から引き抜いた暗殺ナイフを交差させ、火花を散らしてそれを受け止めた…!




