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ガールライダー☆ 〜凄腕ガンマンの彼女と過保護な死神と真面目な元保安官の裏社会コメディ〜  作者: VANRI


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突然の乱戦

 暗闇を破り、ベランダのガラスが割れる音とドアが蹴破られる音が同時に響いた。


 ――ガシャアンッ!!

 ――バァンッ!!


 突入の瞬間、何も言わずとも体が動いていた。


 フランは翻る影となってベランダ側へ肉薄し、メアリーはドアの正面へと銃口を滑らせる。3年間、幾度となく死線を潜り抜けてきた二人の間に、作戦会議など不要だった。


「ひっ……!?」


 トニーは慌ててソファーの影へ飛び込んだものの、ただ隠れているわけではない。暗闇のなか、ドア側からメアリーの死角を狙って銃口を向けた敵に気づくや否や、迷わずトリガーを引いた。パンッと乾いた銃声が響き、敵の腕を撃ち抜く。


「メアリー、左だ!!」


 さらにベランダ側から流れてきた弾丸の軌道を見極め、トニーは飛び出してメアリーの肩を力任せに押し、間一髪で弾を避けさせた。新参者とはいえ、流石は元・保安官。土壇場でのフォローと判断力は確かだった。


 あっという間の出来事だった。


 フランの容赦ない打撃とメアリーの正確な急所撃ち、そしてトニーの的確なカバーにより、部屋に雪崩れ込んできた5人の刺客は一分も経たずに全滅、床に転がされて縛り上げられた。


 月明かりが差し込む部屋の中で、メアリーはため息をついた。

 ドレスを着直す暇などあるはずもなく、今の彼女は黒いタンクトップにタフなズボン姿。先ほどまでの高貴な令嬢の面影は消え去り、いつもの野性味あふれる雰囲気に戻っている。


 フランはジャケットを脱いだシャツ腕まくりの姿でナイフを弄び、トニーはタキシードのジャケットの汚れを払いながら、荒い息を整えていた。


 メアリーは散らばっていた髪ゴムを拾い上げると、さらりと流れる金の髪をまとめて、いつも通り高い位置でポニーテールに結び直した。キュッと結び目を締め、愛用の銃をくるりと指で回す。


「おい、吐きなさいよ。なんで私たちを狙ってきたの?」


 メアリーが踏みつけた男の胸元に銃口を突きつけると、縛られた刺客のリーダー格が、血の混じった唾を吐き捨てて引きつった笑いを浮かべた。


「ハッ……笑わせるぜ。お前ら、本当に何も分かってねえのか?」

「何だと?」

「この船に集まってる奴らはなぁ……全員、互いの首を狙い合う『賞金首』だらけなんだよ!  逃げ場のない海の上で、最後に残った奴が全部の懸賞金を総取りする……そういう極上のコロシアムなんだよここは!」


 刺客は忌々しそうにメアリーとフランを交互に睨みつけた。


「俺たちは最初、伝説の殺し屋『死神(フラン)』がこの船に乗ったって情報を掴んで、奴の首を狙ってこの船に乗り込んだんだ。……だが、女連れて部屋に入ってったから、油断して女と寝てると思ったら、お前『不殺のメアリー』がいて驚いたよ! お前がいるなんて知らなかったんだよ!」


「な~んだ、私のドレス姿に見とれて正体に気づかなかったのね〜」


 メアリーはニヤリと不敵で凶暴な笑みを浮かべた。


「全員が賞金首で、お互いを狩り合うコロシアム……。ふーん?」


 トニーが「おいおい、嫌な予感がするぞ……」と青ざめる横で、メアリーはポニーテールを揺らし、青い瞳を爛々と輝かせた。


「面白くなってきたじゃない」



 部屋の外、そして船の遠い区画から――


 ドドォォォンッ!!!!


 船体を大きく揺らす重厚な爆発音と、それに続く連続した銃撃音が激しく響き渡った。宴会場のパニックと、血に飢えた賞金稼ぎたちが解き放たれた混乱の悲鳴が遠くから風に乗って届いてくる。

 

「あら〜本格的に始まっちゃったみたいね」


 メアリーは肩をすくめると、ポニーテールをキュッと揺らして不敵に微笑んだ。


「メアリーちゃん、とりあえずこいつらの賞金はいただきだね!」


 足元で転がっている5人の刺客たちを見下ろし、フランは心底楽しそうに、そして可憐に微笑んだ。その手には手縄と、手慣れた手つきで奪い取った敵の身分証(手配書データ)が握られている。


「さあ!  この調子で稼いで稼いで稼ぎまくるわよ〜!!」


 メアリーは両拳をグッと握り締め、青い瞳を『$』マークに輝かせながら叫んだ。この危機的状況を「一獲千金のビッグチャンス」としか思っていない、圧倒的な陽のエネルギー。


「マジかよ……もう揉め事は懲り懲りだってのに……」


 頭を抱え、トニーは深々と重い溜め息を吐き出した。だが、文句を言いながらも手際よく銃の残弾を確かめ、メアリーの背中を守る位置へスッと移動するあたり、彼もまた立派にこのチームの「頼れる壁」になりつつある。


「トニー、泣き言はあと!  船内の悪党どもを片っ端から縛り上げて、港に着いたら全員懸賞金に変えてやるんだから!」


「そうだよトニーさん。足引っぱったら、メアリーちゃんの代わりに僕が海に放り投げるからね♡」


「なんで俺だけ脅迫されてんだよ!  行きゃいいんだろ、行きゃ!!」


 爆煙と悲鳴が包み込み始めた豪華客船の廊下へ、三人は勢いよく飛び出した。

 通路の先からは、血気走った賞金稼ぎたちの集団が武器を手に押し寄せてくる。逃げ場のない海上のコロシアムで、史上最も賑やかで凶悪な「賞金稼ぎ狩り」が幕を開けた――!




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