酒場【トニー】
メアリーに街の外れにある酒場に連れて行かれた。
街中心部の酒場とは違い、薄暗い雰囲気の中見慣れない連中ばかり。冷たい視線を投げられ敵意すら感じる。
『メアリー、ここは…』
「ちょっとここで待ってて。」
俺は入り口付近で待たされ、メアリーはカウンターの年老いた店主の元へ行く。
客に顔見知りがいるようで、手を振ったり挨拶をしているようだ。
店主と何やらコソコソ話をしており、時折2人で笑いながらちらちら俺を見てくる。
何の話だろうか。
数分後、礼を言いながらメアリーが小走りで戻ってきた。
「さあ、早く出よう。ここはアンタを歓迎してない」
歩きながらメアリーは話し出した。
「あの店主は賞金首の情報や仕事依頼を教えてくれるから、時々寄って情報を集めてる。今も仕事をもらってきた。」
『そうなのか…だけど街の中心部の酒場とはえらい違いだな。雰囲気も輩も』
「ぁあ、そうか。やっぱり気づいてなかったんだ」
フフと小馬鹿にしたように笑う。
『何に?』
歩きながら話し続ける。
「あの中にアンタに捕まったことがある奴が数人いたんだ。」
これまで保安官として何人も捕らえてきた。店内は暗かったし、どんな人間がいたかよく見てなかっ…
「結局そうなんだよ、保安官様は。」
見上げる冷たい目。
「捕まえた側は忘れても捕まった側はずっと忘れないってことさ」
『でも、もう保安官では…』
間髪入れず答えるメアリー。
「一緒さ。保安官でなくなったとしても、アンタに捕まった事実は消えない。
ま、せいぜい逆恨みに気をつけるんだな。」




