交差する足跡
「親分……本当によかった……っ!」
子供のように声を上げて泣くベイルの頭を、親分はどこか愛おしそうに、ゴツゴツとした大きな手で撫でた。
「泣くな、バカ弟子が……。それよりベイル、お前の後ろにいるお嬢さん方は……?」
「あ、はい! 俺が今、旅を一緒にしてる最高の仲間たちです! こっちがメアリーさんで――」
ベイルに紹介され、メアリーが優しく微笑みながら一歩前へ出た。
その瞬間、親分の目がカッと見開かれた。視線はメアリーの顔、そして彼女の腰に下がっている一丁のリボルバーへと注がれる。
「……お前さん、その顔立ち……それにその銃……まさか、トーマス・スペンサーの娘か!?」
「え……!? 父さんを知ってるの!?」
メアリーが驚きで息を飲んだ。
「ああ……忘れるはずもない。数か月前か……それとももっと前だったか、この温泉街の酒場で出会ったんだ。その銃に刻まれた名前と、なによりお前さんとそっくりな眩しい笑顔でな……『自慢の娘がいる』と、酒を飲みながらあんたのことを愛おしそうに話していたよ」
「父さんが……あたしのことを……」
胸がキュッと締め付けられ、メアリーの目頭が熱くなる。親分はゆっくりとうなずき、遠い目をして記憶を辿るように続けた。
「トーマスは言っていた。『北の鉱山都市、シルバークリークで大きな事件の匂いがする。放ってはおけない』とな……。あいつはそこへ向かうと言って、この街を去っていったんだ」
「シルバークリーク……!」
「……すまんが、わしが倒れていた期間が長くてな。それが具体的に何年前の出来事だったのか、今のわしには時の感覚が曖昧なんだ……。あいつが今も生きているという保証はできん……」
申し訳なさそうに眉をひそめる親分。だが、メアリーに迷いの色は一切なかった。
「ううん、ううん……! ありがとう、親分さん! 十分すぎるよ……!」
メアリーはぎゅっと拳を握りしめ、溢れ出そうになる涙をぐっと堪えて仲間たちを振り返った。
「みんな……あたし、シルバークリークに行きたい! そこにお父さんが行ったのは間違いじゃない……! 追いかけたいの!」
「決まりだな」
トニーが煙草の煙をふっと吹き出し、口元を緩める。
「ふふ、北の鉱山都市ね。新しい服でも買い足して向かいましょ」
モネが優雅に日傘を広げた。
「メアリーちゃんが行くなら、どこまででも一緒だよ!」
フランも肩の痛みを忘れて力強く頷く。
「俺の神がかった器用さの出番だな!」
ベイルが親分に向かってビシッと胸を張ってみせた。親分は目を細め、頼もしい仲間たちに囲まれたメアリーを見て、満足そうに深く頷いた。
「いい仲間を持ったな、お嬢さん。……トーマスの奴め、こんなに立派で愛されている娘がいるんだ、簡単にくたばるはずもないさ」
「……うんっ!!」
朝靄が晴れ、輝かしい太陽の光が湯煙の街を照らし出した。




