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シンクロナイズド・ダイバーズ  作者: 木天蓼 亘介
24/27

第24話・「なにしてるの?」




 轟音と共にドアが隔壁ごと吹き飛び、()()()がマイの部屋に突入していた。

 が、次の瞬間、その()()()たちはバラバラにされ床に崩れ落ちていた。

 それだけではない。

 それらの中から姿をあらわした者たちの首元に、鎌のような鋭い刃が突き付けられていた。

 それはツルギの触手だった。

 バスルームから伸びる触手の先端が、鋭い刃のようになって全てを切り刻んでいたのだ。

「え!?」

 そして、喉元に刃を突き付けた相手の顔ぶれにツルギは驚きの声をあげていた。

「ハルカ!!みんな、なにしてるの?」

 そう、マイたちを強襲したのはチーム36の仲間たちだった。

 ツルギが切り刻んだのは、彼女たちが装着していたパワードスーツだったのだ。

 それを失い、36の皆は全裸でそこに立ち尽くしていた。

「あなたこそ、ここで何してるの?」

 ツルギの言葉を掻き消すようにアンナが叫んだ。

「え!?」

「待てアンナ、冷静になれ」

 そんな彼女をいさめるようにハルカはツルギに話し掛けた。

「ツルギ、私たちはマイの部屋で対ブロッケン用の隔壁が作動したとメリルから聞いて慌てて駆けつけたんだ・・・」

「マイはどこ?無事なの?」

 ハルカの言葉を遮るようにアンナが叫ぶ。

「それもあるが、まずは()()物騒なモノをしまってくれないか?」

 首に触れるか否かの距離にある刃を指差しながらサンドラにそう言われ、ツルギは、刃を引っ込めながら胸元で不自然に盛り上がる触手の塊をほどいた。

 するとその中から、全裸のツルギと触手にぐるぐる巻きにされて“ぎゅっ”と抱き合う、やはり全裸のマイが姿をあらわした。

「ま、マイ、あなた何してるの?」

 アンナが呆然と訊ねる。

「な、なにって・・・」

「あ、あのマイさん」

「なに?エマ」

「もしかして、隔壁を閉じたのって()()()()()()だったんですか?そ、それなら、私たちはお邪魔でしょうから帰りますが・・・」

 と、エマが2人から目を逸らし頬を赤らめながらそう呟く。

「エマ、何言ってるの?」

 それを聞いたアンナはそうエマを一喝すると、

「ちょ、ちょっとツルギ、マイと何してたの?」

 返す刀でツルギにそう言っていた。

 だが、そんな怒り心頭のアンナにツルギはきょとんとした顔で、

「髪の洗いっこ」

 と答えていた。

「うそ」

「本当よアンナ」

「・・・マイ、なんでツルギとそんなことする必要があるの?」

「ツルギが地球とガリレオを救ってくれたから」

 そう言うマイに追随するかのように、

「ハニぃが私を助けてくれたから」

 ツルギもそう答えていた。

「そんな理由がある?」

 当然そんな理由に納得できるはずもないアンナが食い下がる。

 すると、

「あるよ。ね、サンドラ」

 突然ツルギがサンドラに向かってそう話しかけ、

「え!?」

 と驚いた皆が一斉に彼女を見た。

「ちょ、ちょっとツルギ」

 マイが止めようとするが、

「サンドラも頑張ったご褒美に彼女に髪を洗ってもらってるでしょ?私たちもそれをしてたんだよ」

 と言ってしまっていた。

「え!?」

「彼女に髪を洗ってもらってる?」

「司令が?」

 その、驚きの声と共に矢のように刺さる視線にいたたまれなくなったサンドラは、

「に、任務完了、現時刻をもって作戦を終了する。各自解散」

 大慌ての様子でそう言い残すと、アンダースーツ姿のまま凄まじい勢いで部屋から飛び出していってしまった。

「・・・・・・」

 残されたマイたちはだだ呆然とそれを見送るしかなかった。

「・・・・・・」

 気まずい沈黙が流れ、

「・・・2人とも、地球とガリレオを救ってくれてありがとう。じゃ、私たちも帰るから」

 そう重い口を開いたのはハルカだった。

 実は彼女たちの部屋は全てこのフロアにあり、ハルカの部屋も()()から数十歩の距離のところにあった。

 彼女は全裸になってしまっていたが、2人の邪魔をしてしまったのではないかという気まずさと、勘違いとはいえ部屋を壊してしまった気まずさから居ても立ってもいられず、部屋まで全裸のまま走って帰ることにしたのだ。

 すると、そんな彼女に便乗するように、

「ここの修理と、その間代用する部屋の申請、私がしておくから」

 とアヤが言っていた。

「ホント?アヤ、助かる」

 するとエマも堰を切ったように、

「マイさんツルギさんごめんなさい。もうお邪魔しませんから、次からは隔壁は閉じないほうがいいですよ」

 と頬を赤らめていた。

「エマ、何言ってるの?」

「マイちゃんツルギちゃん、またね~っ」

 リンが人懐っこい笑顔で手を振る。

「うん、またね」

 そう言葉を交わしながら次々に部屋から駆け出していく。

「・・・マイ、ごめん。ドア壊しちゃった」

 だが、最後まで残ったアンナだけは2人と会話を交わさず、そう言い残して出ていった。

「コンピューター、ドアの応急処置をお願い」

 マイがそう言うと、

『了解しました。エアバックを作動させドアの損壊部分を封鎖します』

 その音声ガイダンスに続いて壊されたドアの内側四方向から膨らんだエアバックが中心で重なりあい、出入り口を塞いでいた。

「・・・ハニぃの髪、埃で真っ白」

「ツルギだって、顔まで真っ白・・・」

 そこまで言ったところで、マイは思わず「ぷっ」っと吹き出していた。

「どうしたの?」

 話の途中で突然笑いだしたマイに、ツルギも驚きを隠せない。

「ごめん、・・・だってまさかツルギのこんな顔が見れるなんて夢にも思ってなかったから・・・」

 息も絶えだえにそう言いながら笑い続けるマイ。

「もぅ、ハニぃったら・・・」

 だが、口ではそう言いながら、ツルギは初めて見るマイの笑顔から目を逸らすことができなかった。

(・・・ハニぃ、こんな顔で笑うんだ)

 その顔を見ているだけで、何故か胸の奥がドキドキする。

「・・・かわいい」

「なに!?私の顔がどうかした?」

 突然そう言われ、自分がマイの顔に見とれていたことに気付いた彼女は、

「・・・え!?な、なんでもない・・・」

 しどろもどろになりながらそう応えるので精一杯だった。

「じ、じゃあ髪を洗うから」

 気を取り直しながらそう言うと、ツルギは2人を縛る触手をほどいた。

 そのままマイをくるりと回転させ、自分に(もた)れかかるようにして腰を下ろしていく。

 マイはツルギが開いた脚の間で、彼女の豊満な膨らみを枕にするように頭を埋めていた。

「!?」

 その感触に驚き身体を起こそうとするが、彼女の身体はまたしてもツルギの触手に押さえ込まれてしまっていた。

「だめだよハニぃ、じっとしてて」

 そう言いながら、マイの髪にゆっくりとシャワーをかけていく。

「じゃあ、シャンプーするね」

 ちなみにガリレオでは、シャンプーはリンスインタイプのものが支給されている。

 頭に垂らした()()を染み込ませように髪を指で鋤きながら同時に頭皮をマッサージしていく。

 それは、寝落ち間違いなしの気持ちよさだった。

「どお?」

「・・・うん。スゴく気持ちいい」

「ホント!?ホントに?」

 マイからの返事に、ツルギの笑顔が弾けた。

「うん。・・・ねぇ、こんなの誰から教わったの?」

「教えてもらってないよ」

「え!?」

「サンドラがお風呂の中で彼女にしてもらってるのを見て覚えたんだ」

「あなた何見てるの?」

 マイはツルギの話しを聞くたび、彼女がどうやってお風呂の中を見ているのか不思議だった。

 作り話にしては内容が生々しいし、かといって司令が彼女との秘め事をツルギに積極的に見せるとは到底思えない。

 だから、さっき便器の中から出てきた彼女を見て、マイはようやく腑に落ちていた。

 そして、サンドラの部屋で便器や通気口からそおっと顔だけ出し、興味津々の表情で彼女たちを覗き見るツルギの姿を想像していた。

(・・・もう、ホントしょうがないなぁ)

 こんなことを考えていられるほどリラックスできたのはいつ以来だろうか?

 マイは自分でも気付かないうちにツルギの豊満な2つの膨らみに更に深く頭を沈めていた。

(すっごく気持ちいい。司令が甘えるのも分かる気がする。こんなに丁寧にマッサージまでしてくれるなんて、司令の彼女さんて美容師さんかな?)

 そんな事を考えていると、

「じゃあ、流すからね」

 触手が器用にシャワー水栓を持ち、お湯をかけながら両手の指を使って髪を洗い流していく。

「熱くない?」

「うん、気持ちいい」

 マイのリラックスした反応がよほど嬉しいのか、ツルギは流し終った髪をいたわるように指や触手を使って鋤いていた。

「ふぅ、ありがとう」

「うん」

 はからずもマイにお礼を言われ、ツルギは嬉しさを隠せない。

「じゃあ次はツルギの番」

「・・・うん」

 すごく嬉しそうに、そして少し恥ずかしそうにそう返事するツルギに密着させていた身体を起こすと、マイは彼女の開いたままの脚の間に割り込むように向き合っていた。

「その前に顔を拭いてあげる。」

 ツルギのホコリまみれの顔を改めて見て、マイはそう言っていた。

「え!?いいよ、どうせ洗うんだし」

「だめ、ホコリが目に入って角膜に傷でもついたらどうするの?」

「・・・うん」

「ガーゼを取るからちょっと待ってて」

 そう言うと彼女は立ち上がり、化粧台の棚へと手を伸ばした。

 が、シャワー水栓を持つツルギの触手が《それ》を壁のフックに掛けながら、別の触手が彼女より早くガーゼを取り手渡していた。

「はい」

「・・・ありがとう」

 受け取ったガーゼを濡らして絞り、ツルギの顔を優しく拭いていく。

「どう?痛くない?」

「うん」

(改めて見るとツルギってまつ毛ながっ、鼻も高くてすっと筋が通ってるし・・・)

「・・・きれい」

「え!?」

「え、あっ!!」

 そう。マイは心の声を思わず口に出してしまっていたのだ。

「えっと、その、それはいいから後ろを向いて」

「後ろを?・・・こう?」

 ツルギはそう言うと、“ぐるん”と首だけを180度回転させて後ろを向いていた。

「これでいい?」

 だが、マイからの返事はなかった。

「ハニぃ?」

 もう一度振り替えった彼女が見たのは、泡を吹いて失神するマイの姿だった。

「は、ハニぃ、どうしたの?」

 大慌てで肩を掴み前後にブンブン揺らす。

 しかし、マイは目を覚まさず、頭がカクカクと力なく前後に揺れるのみだった。

「ど、どうしよう?・・・あっ!!、そうだ。こういう時()人工呼吸と心臓マッサージだってサンドラが言ってた」

 ツルギは大きく口を開らいた。

 “ゴオオオオォォォォォォ~~~~~~~~っ”

 彼女は、掃除機のように部屋中の空気を吸い込んだかと思うと、その口をマイの口に重ね、酸素を彼女の肺へ一気に送り込んでいた。

「ふぅ~~~~~~~~っ」

 ()()は、マイの肺をアバラ骨に食い込むほど膨らましていた。

 そしてツルギは、彼女の仰向けになっても全く形が崩れない、お椀のように盛り上がり“ぷるぷる”揺れる2つの膨らみの間に重ねた手のひらをあてがい、全体重を乗せて上から一気に押していた。

「ふん」

 “メキメキメキっ”

「ほぇ~~~~~~~っ」

 その瞬間、天地がひっくり返ったかと思えるほどの激痛にマイは飛び起きていた。

「ハニぃ、生き返った?」

「ゲホっ、ゲホっ、ゲホっ」

 あまりに大量の酸素が肺に一気に肺に送り込まれ、しかも《それ》を押し出すようにアバラの上から肺を圧迫されたため、うまく呼吸が出来ない。

「い、いってぇ~~っ、こ、殺す気かっ」

 息も絶えだえのマイは、そう言うのが精一杯だった。

「だって、ハニぃが急に・・・」

 そう言いながらこちらを見つめるツルギの瞳に、彼女が本当に自分のことを心配していることを感じとったマイは、

「うん、それに関しては、ありがとう」

 と、ちょっぴり気まずそうにお礼を言っていた。

「・・・うん」

 それを聞いて、ツルギの表情がパっと明るくなる。

「・・・あ!!ハニぃ、その胸」

「え!?」

 ツルギに言われるままに視線を下げると、2つの膨らみを跨ぐ格好で、胸に真っ赤に腫れる手形が残っていた。

 それは、さっきの心臓マッサージの名残りに間違いなかった。

「大丈夫?」

 ツルギがとんでもないぐらい心配そうな声で問い掛けてくる。

「・・・うん、大丈夫」

 彼女を安心させようとそう言うマイに、

「よかったらその傷痕、私が舐めてあげようか?」

 ツルギはそう返していた。

「は!?何言ってるの?」

 言葉の意味が分からず、更に聞き返したマイに、

「え!?でもニンゲンにはそういう習慣があるんでしょ?ケガは唾をつけとけば治るって」

 ツルギはそう答えていた。

「唾をつけとけばって、・・・そんなおばあちゃんの知恵みたいなこと誰から聞いたの?」

「サンドラだよ」

「司令から!?なんで?」

 まさかのサンドラにマイも驚きを隠せない。

「サンドラの彼女がね、ず~っと座りっぱなしで緊張しっぱなしの仕事をしてるんだ」

「美容師さんじゃなかったか」

「そのせいで頭が痛くなったり、肩や首や腰が凝ったり、ふくらはぎがむくんだりするんだって」

「それと唾をつけることがどう関係してんの?」

「で、彼女が疲れたって言うと、サンドラが凝ってるところをマッサージしてあげて・・・」

「あの司令が!?」

「そのあと、マッサージしたところをキスしたり舐めまわしたりしてるんだよ」

「え!?」

「それで、なんで舐めるのって後から聞いたら・・・」

「き、聞くな~っ」

「そうすると痛いのが早く治るからって、・・・違うの?」

「ま、まぁ、それは人それぞれ、かな」

(もう司令ったら、・・・ていうか、なんかここ数日、絶対人に話せない司令の禁断の情報ばかり聞かされてるような・・・)

「だからね、私にもハニぃの痛いところを舐めさせて」

「だ~め」

「え~っ、なんで?」

 ツルギは唇を尖らせ、駄々っ子みたいにそう言ったが、

「今は私がツルギの髪を洗いたいの、だめ?」

 と、逆にお願いされてしまい、

「そ、それなら仕方ないけど・・・」

 と、渋々納得していた。

「いい、今度は()()に後ろを向いて」

 マイにそう念を押されたツルギは、

「うん」

 そう返事して、やっぱり首だけを“ぐるん”と180度回していた。

(・・・これが普通なんだ)

 そう思いながら、

「じゃあ、まずはホコリを洗い流すから、斜め上を見て。視線を上げるんじゃなくて見上げるように顔を上げて」

 マイにそう言われ、ツルギが不器用に顔を上げていく。

「こお?」

「そう。これから流すから、そのまま動かないでね」

「うん」

 シャワーをかけながら、ツルギの髪を傷めないよう、指で丁寧にホコリを洗い流していく。

「大丈夫?痛くない?」

「うん」

(ツルギの髪、すっごくキレイ)

 そう感心しながら髪を指で鋤いていく。

「はい、次はシャンプーね」

「うん」

 だが、頭は後ろを向いているのに、身体がこちらを向いているというのは、やはりホラー映画以外の何物でもない。

「ごめんツルギ、やっぱりこっちを見て」

「前を?いいよ」

 そう言うと彼女は三度首を“ぐるん”と回し前を見ていた。

「これでいい?」

「うん」

 マイがツルギの髪を、シャンプーを泡立てるように優しく指で揉みほぐしていく。

「どう?痛くない?」

「う、うん」

 だが、ツルギはそれどころではなかった。

 彼女は髪を洗ってもらうため腰を下ろし頭を下げていた。

 対するマイは、彼女の頭を見おろせるように膝立ちになっていた。

 つまり、ツルギの目と鼻の先には、果肉のたっぷり詰まった、豊潤に実る果実のような2つの膨らみがあった。

 シャワーの飛沫が弾けるように流れ落ちていく、若々しい張りを保つ()()が、髪や頭皮をマッサージするマイの手の動きに合わせて揺れるたび、その頂点で重力に逆らうように“つん”と上向く桜色のちっちゃな蕾も“ぷるぷる”と小刻みに揺れている。

 ツルギは、()()から目を逸らすことができなくなっていた。

「・・・ぎ、・・・るぎ、ツルギっ」

「え!?」

 彼女はそこでようやくマイに呼び掛けられていたことに気付いた。

「なに???」

「どうしたの?ボ~っとしちゃって。大丈夫?どこか具合でも悪い?」

「う、ううん、大丈夫。その、見とれちゃって」

「え!?見とれるって、何に?」

「あ!!、その、なんでもない」

「そお?ならいいけど。もう少しで終わるからガマンしてね」

「・・・うん」

 ツルギは慌てて目の前の2つの膨らみから目を逸らした。

 流れ落ちる水滴を追うように視線を下げていくと、()()が鍛え抜かれた腹筋からおへそ、そして引き締まった下腹部を経由してマイの、赤ちゃんのほっぺみたいに“つるつる”の()()を伝い、内股を滴り落ちていくのが見えた。

 それをみた彼女は、大慌てで視線をまたマイの胸に戻していた。

(どうしたんだろ私?なんでこんなにドキドキするの?)

 生まれて初めての、胸の奥を締め付けられるような、その感情を理解することができず、どうしていいか分からないままツルギは困惑していた。

「ツルギ、シャンプー流すからね。・・・えっと」

 マイは思わず言葉を濁していた。

 本当なら後ろを向いてもらうのが一番洗いやすいのだが、それだとまたホラー映画になってしまう。

(・・・あ!!そうだ)

 そのとき彼女は閃いた。

(昔お母さんに洗ってもらっていたみたいにすればいいんだ)

「ねぇツルギ、私の膝を枕にして寝転んでくれる?」

「膝を枕って、なに?」

「私がこう座るから」

 マイはそう言いながら正座すると、

()()を枕にして寝ころがって」

 そう言いながら自分の太股をポンポン叩いていた。

「・・・え!?え~っ」

「どうしたの?」

 そのあまりの驚きようにマイも戸惑いを隠せない。

「・・・だって、()()って」

「なに?」

「・・・なんでもない」

「じゃあ早く」

「うん」

 ツルギはそう返事すると、クラーケンの姿のまま、ちょっぴりぎこちなさそうに動いて寝転がり、マイの太股に顔を埋めていた。

「これでいい?」

「こっちを見て、頭だけじゃなく身体ごと仰向けになって、いい?」

「こ、こお?」

 彼女は言われた通り、身体ごと仰向けになった。

「うん。じゃあ、流すからね」

 泡まみれになった髪をマイが丁寧に洗い流していく。

「大丈夫?痛いところとかない?」

 そう聞かれ、

「うん」

 と返事はしたが、ツルギはそれどころではなかった。

 なぜなら彼女が見上げる目の前には、重力に逆らうほどの張りと弾力を持つ豊潤な2つの膨らみがあり、しかも()()越しにこちらを覗き込むマイの顔が見える。

 マイの顔も2つの果実があり、その膨らみの頂点で“つん”と自己主張する桜色の蕾越しにこちらを見つめるマイの顔までもが水滴と照明に照らされてキラキラと輝いていた。

 マイの膨らみを真下から見れたことに、ツルギは胸がドキドキするのを抑えることができない。

 彼女は我を忘れて()()に見とれていた。

「・・・ぎ、・・るぎ、・ツルギっ」

「えっ!!なに?」

 何回呼ばれたのか?

 我にかえったツルギはようやく返事をしていた。

「次は後ろ髪を洗うから横向きになって」

「うん」

 彼女はごろんと頭を身体ごと外側に倒した。

「違うツルギ、こっちを見て」

「え!?そっち」

「うん、こっち」

「・・・わかった」

 ツルギはそう返事すると、頭と身体をくるっと回転させマイの方を向いた。

「こ、これでいい?」

「うん。そのまま動かないでね」

 そう言うと、ツルギの耳の後ろを指で鋤くように洗っていく。

 だがツルギは、耳と髪に触れる指と、反対側の耳と頬を埋めるに伝わってくる太股の感触や温かさ、そして目の前にある引き締まった下腹部や()()()が気になってしかたない。

「ツルギ、右耳っ」

「え!?」

 ツルギはマイに指摘されるまで、ぴたりと閉じた太股の間に溜まったお湯と泡に、自分の顔の右側が水没していることさえ気付いていなかった。

「ごめん気付かなくて、ちょっと頭を上げて」

「こう?」

 ツルギが言われるままに頭を上げると、マイが膝を開き、そこに溜まっていた泡とお湯が流れ落ちていく。

「もう下ろしていいよ」

「うん」

 彼女の開いたままの太股に頭を預けたツルギに、

「どう?脚を開いたままでも大丈夫?」

 とマイがたずねるが、

「う、うん。大丈夫」

 ツルギはそう返すので精一杯だった。

 いや、もはやそれどころではなかった。

 マイが脚を開いたことで、その奥から姿をあらわした、赤ちゃんのほっぺみたいな“ぷにぷに”の()()が彼女の目の前にあった。

「!!!!!!!!!!!!!!!!」

「ツルギの髪、ホント綺麗」

 後頭部や耳の裏を洗うために、マイが身体を屈めて覗き込む。

 それに合わせて彼女の下半身も動き、そのたびに目の前にあるマイのぷにぷにの《それ》が、真ん中を縦に走る()()を中心に“くにくに”と動く様からツルギは目が離せなくなっていた。

 それだけではない。

 その瞳は獲物を狙う蛇のようになり、口からは、先が2つに割れた細長い蛇の()()のようになった舌が獲、マイの()()目掛けてチロチロと妖しく動き回っていた。

「・・・ぎ、ツルギ」

「・・・え!?なに?」

「終わったから起きていいよ」

「あ!!・・・うん」

 ツルギは大慌てで起きていた。

 その口の中では、動き回る舌がガマンの限界を迎えて口から飛び出しそうになるのを、最後の理性でぐっと噛み締め、溢れ出そうになる涎を必死に飲み込み続けていた。

「じゃあ、髪を拭いてあげる」

 そういうマイを、

「待って」

 と、ツルギが止めていた。

「なに?」

 思わずそう聞き返したマイの耳に飛び込んできたのは、想像もしていなかった言葉だった。

「今度は私がハニぃの身体を洗ってあげる」

「え!?・・・い、いいよ、自分で出来るから」

「だめ、私が洗いたいの」

 そう言うが早いかツルギは、マイの手からシャワー水栓を奪い取っていた。

「ちょ、ちょっとツルギ、それ返して」

「だ~め」

 奪い返そうとする彼女の手から逃れるべくツルギが立ち上がると、それを追い掛けるようにマイも立ち上がっていた。

 そのためツルギはマイが背伸びしても、いや、ジャンプしても届かないぐらい高々とシャワー水栓を持ち上げていた。

 しかし、それに負けじとマイは勢いよくジャンプし、あと一歩のところで届かず着地した瞬間、彼女は“つるっ”と何かに足を滑らせていた。

「わっ」

 バスタブの底に激突する。

 そう思った瞬間、

「ハニぃ、大丈夫?」

 マイはツルギの触手にぐるぐる巻きにされ、“ぎゅっ”と抱き寄せられていた。

「あ、ありがとう」

 目と鼻の先にあるマイの瞳にまっすぐ見つめられながらお礼を言われ、ツルギは思わず顔を赤らめながら目を逸らし、

「・・・ケガしなくてよかった」

 と呟くので精一杯だった。

「でも危なかったぁ、なんに足を取られたんだろ?」

「これ」

 そう言ってツルギの触手が目の前に持ち上げてきたのは、ボディソープの容器だった。

 一連の騒動で棚から落ちた際に、ネジ式の蓋が損傷し、そこから液体が漏れ出ていたのだ。

 それを見た瞬間、マイは思わず「ぷっ」と吹き出していた。

「どうしたの、ハニぃ?」

 笑い出した理由が分からず、ツルギが不思議そうに尋ねる。

「だって、ボディソープで滑って転ぶって、昔のギャグじゃないんだから・・・」

「ふふっ」

 マイにつられるようにツルギも笑い始めた。

「ツルギ、どうしたの?急に笑い出して」

「それを言うならハニぃだって」

「だって、さっきまで死に物ぐるいで戦ってたのに、こんなコントみたいなことしてるなんて可笑しくって」

「私も、ハニぃの笑顔見てたらなんか嬉しくなっちゃって、こんな気持ち生まれて初めて」

「ふふっ」

「あははっ」

 2人は“ぎゅっ”と抱き合ったまま笑い続けていた。


 だが彼女たちは知らなかった。

 壊れたドアに代わるエアバッグに耳を密着させ、中の様子をうかがう人影がいたことを。

 彼女は中から微かに漏れる2人の笑い声を聞いた瞬間、両手で耳を塞ぎ、自分の部屋へと駆け込むと、そのままベッドに飛び込んで枕を頭に被っていた。

「マイ、どうして?なんであんな女と・・・」

 それはアンナだった。




                               〈つづく〉















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