過去と理由、そして怨念
1/22今頃ポリーエとリモーピォを間違えていることに気付きました。
元に戻しておきます。
「あれはあなたが六回目にこの世界群に訪問した時の事、その時は世界達が消滅する謎の現象が起こってた」
ポリーエが語り出すのは私の古い記憶、私はこの世界に何度来たとかはすでに忘れてしまったが数えているらしい。
見た目より長いこと生きているな。
そして世界達が消滅する現象、覚えている。
その時は私はまだ世界の狭間を飛び、様々な世界や世界群に訪れたり、世界管理官の仕事を手伝ったりしている時だ。
この世界達だけではなく、世界の狭間とつながる全ての世界からランダムに複数の世界が突然消え始める現象が起こった。
私がある世界で体を休めていた時に、その世界が消滅を始めて驚いたのをよく覚えている。
その消滅の原因である、ヲーゥルと呼ばれる病原体は世界が世界たるために必要となるとある要素を食らって育つ。
そして食われた世界は世界を維持できなくなり消滅する、そう言う仕組みでだ。
発生源は今私がいるこの世界群の中に出来た小さな病原体のみが住まう出来立ての世界で、そんなものが近くに出来てしまったという事は世界群は真っ先にその被害を受けてそのほとんどが消えかけの世界モドキと化した。
幸いヲーゥルに対する特効薬をソゥヲバーリュや世界管理官の奴らが総力を挙げて開発し、私がそれを元凶の中枢へと潜り込んで打ち込み、また感染した世界にばらまいて事なきを得た、が、いくつかの世界はその後の構築要素を戻すのが間に合わず消滅してしまった、この世界群はその中でも感染が早かったせいもあって得にたくさんの世界が消えた。
ポリーエはその世界のどこかの住民なのか。
「その時、わたしの世界も消えかけたけどあなたによって救われたの、そこは感謝しているわ」
違うらしい、ならば何だ?
「グァットジーイル、でもね、あなたも知っているでしょう? その時たくさんの世界が消えたのを」
ポリーエが言いながら私の目を見る。
その奥には憎しみが燃えているが同時にどこか苦しみや悲しみが混じっている事に私は気づく。
「そうだな、間に合わなかった」
答えると瞳の中の感情が渦巻き、膨れ上がり、あふれ出すかのようにポリーエはその両目から涙のような黒い何かが流れ出した。
と同時に彼女の髪が空に引かれるように浮き上がる。
「わたしは、そんな世界達の怨念、生きられなかった者達の生きたいって思い、行き場所がないそんなモノをこの身に受けた、だけど、行き場がないからってどこにもいかないワケじゃなくて、何度も体が裂けそうになったわ、でも、何とか抑えてきたの、でも全部無駄になっちゃった」
黒い何かはほおを伝うが落ちては行かず、こぼれた先から空中にとどまって彼女の体を包んでいく。
成程、彼女自身が私を憎んでいるわけではない、彼女は怨念をその身に偶然宿し、その怨念がぶつけるべき憎しみの方向を私に向かわせたわけだ。
「あなたがさっき言った事、わたしがあなたより強くなったと言ったじゃない? だとしたら今のうちに逃げておいた方がいいわ、わたしなんてこの思いの器に過ぎないんだから、あふれ出したら止まらない、わたしなんかよりずっとずっと大きくてすぐに押しつぶされちゃうんだから」
目から溢れる黒いそれ、世界の怨念か、溢れるそれは勢いを増して彼女の体を包み、塗りつぶしていく。
『なんかやばい事態だね、いや~めんどくさいな』
『お前が連れてきたやつだぞ』
『強さと力だけ見て連れてきたからね、しかも厳重に体の奥に封じ込めてたみたいじゃないか、わかりやしないよそんな思いなんて』
ビリゥヴァの中でくつろぐソゥヲバーリュがため息を吐く。
その沈んだ声から今は恐ろしい位にテンションが落ちている、使い物にならない。
元から勘定に入れてはいないからいいか、怨念の矛先は私だ。