嵐と選ばれし者、そして地面に生える
激しい雨が体を撃ち、風が四方八方から体を引きちぎろうと吹き荒れる中を私は飛んでいた。
ここは世界達の一つ、嵐に包まれた空から地面にほど近い所までのほとんどが雲に覆われた世界。
あの後、私はグァットジーイルのトップのブルーに誤解を解くために軽く話をして、どうにかこの世界達の中にいる選ばれし者達を鍛えて戦わせるという辺りに落ちをつけた。
だがグァットジーイルの中にはリモーピぉ以外にその素質を持つ者がほとんどいなかったために世界達の中を私とソゥヲバーリュで手分けして探す事となった。
ちなみにリモーピォには世界達の中身を案内してもらうために連れてきた。
もちろんそれは口実で、探すついでにリモーピォを鍛えようと思ってのモノだが。
さて、その鍛える対象である選ばれし戦士であるリモーピォは何をしているか、と言えばだが。
「わあああああああ!!! グァットジーイル!? 待ってください!! うわああああああ!!!」
風に翻弄されあちらへこちらへと飛ばされ、雨の中で天然の洗濯機にもまれてぐちゃぐちゃになっていた。
ちなみに今のリモーピォの格好は合体前の二人だった時の格好を合わせたモノでボディスーツの上から変な色のスーツを着て、ニット帽はかぶっておらず、顔は出していた。
「この世界達の中の住人だろう? 世界に順応しろ、それが出来なければ道は遠いぞ、世界の破滅と戦うには世界に寄り添わなければいけないのだから、お前の技で、経験で、心で、この状況を打開しろ」
呼び止める声にそう答えて私は一人で力を持つ者を探知する。
周囲を取り囲む嵐から障壁で身を守り、風を読んで飛ぶ。
世界の狭間を飛ぶ時は世界達の引力が激しい場所になるとこんな嵐のような場所はたくさんある。
ひどいモノになると盛大に肉片をまき散らしながら爆散して、かと思ったら世界の干渉で身体が分裂し、また爆散し、を繰り返して大きな人の塊になってしまう探索者もいる。
それと比べればこんな場所どうという事は無い、慣れている。
探知に引っ掛かる生物の反応、これは、下か。
「下に反応があった、先に行っているぞ、後から来い」
「へ? グァットジーイル! 厳しい! 待って!」
呼び止める声を無視して私は反応の元へと降りていく。
まあリモーピォにはマーキングしてあるので何か危ない時にはすぐわかる。自分で頑張ってもらおう。
私は反応の主が選ばれし者になれるかどうかを確かめる為に風に吹かれて弾丸のように向かってくる雨粒を払いながら雨雲の中を突っ切っていく。
視界にある黒い雲がなくなって白い雲が多くなり、風も穏やかになってきた。
ちょうど地面もほど近い、反応もこのあたりからか。
こんなに低い所まで来たのに雲は未だに晴れず視界はすこぶる悪い。
まあ、探知と解析の詠唱を使えば大体の地図が脳裏に描かれるので問題はないが。
さて、反応の主はどこか、と辺りを見回すと黒い影が雲間にちらりと見えた。
下も下、地面のすぐ上にいる。
「風よ吹け、閉ざす者達を打ち払え、我、詠唱す」
詠唱を唱えると上よりは弱いモノのかなりの強風が吹き、雲を払っていく。
そして地面に人がはっきりと見えた。
地面に顔を埋めて何もない空に足を着いて立っている服も何も来ていない裸の人間、性器はついていないのか、あいまい。
引き締まった身体、そしてそのうちに秘める力、間違いなく反応の主だ。
私は地面に着地し、その足を持って引き上げてみた。
「…………ん、ああん? 誰? おはようございます?」
「ああ、おはよう、起こしてしまってすまないな」
地面から出てきたその顔は額に硬い角、元は目であったであろう場所は固く閉じられていて、その代わりに耳と鼻の感覚が鋭敏なようで、鼻で私の匂いを嗅いでいる。
「悪い奴のにおいじゃない、というより懐かしいような……細胞の記憶?」




