信者と爆笑、そして選定
黙ってしまったリモーピョが答えを出す前に私達はある世界の入り口までやって来てしまった。
世界の滅亡に対して私だけでは立ち向かえないという事実にかなりのショックを受け、なおかつリモーピョの力が必要だと言われたのだ。そんなに早く答えは出ないか。
だが、今回の私は極力手を出さない。世界の人々に自立を促さないといけないのだ。
「リモーピョ、覚悟を決めておいてくれ」
「……はっ!はい!」
相当悩んでいるようで私の言葉に一拍遅れて答えが返って来た。
まっすぐな阿呆であるならこういう時には後先考えずに突っ走るモノだが、こういう悩むタイプは考えてしまい時間がかかる。
世界の中に期待する方がいいか?いや、どうだろう、私を探し当てて世界の狭間を渡ってこれる人間はそうそういない。
この世界達から出たのは隠居を決める前の事なので、居場所を知る事すら困難なのだ。
この世界達を救った時は私は一人で戦っていた為に、特に仲良くなった知り合いもいないので、ここに未練はまったくなかった。
そう考えるとどうやって私の居場所を探ったのだろう。リモーピォの力を解析してみるにそこまでの力はないはずだが。
今はまったく関係がないがそんな事が頭の中で浮かぶ。
ともかく、リモーピョに案内され、私達は巨大な本棚の中の一つの本の背表紙、もとい世表紙の中へと入っていくのだった。
世界の中は、すでに崩壊の侵食が始まっているのか、荒れていた。
建物の中から外を見れば、大地が裂け、海が空を舞い、その間を折れた木々やら倒壊した建物、そして生物の腐った死体が浮き沈みしている気分の悪くなる光景。
比べて建物の中はとても清潔だ。
だが、外の方が私にとってはましかもしれない。
清潔な床に並んで地に頭をなすり、私に信仰を向けている信者の群れが、まさしく今、私の前にいるからだ。
「ははははっ!ガゼル、こんなに人に仰がれたのはいつぶりかな?あの巨大地下帝国ぶりくらい?」
「いや、あの地下帝国では仰がれていたというよりは兵器として恐れられていたという方が正しいだろう」
ビリゥヴァに隠れたソゥヲバーリュがこの光景を見て、腹を抱えて笑っている。そんなに笑える事で何よりだ、信仰を向けられる側としては全然笑えない。
世界に入った後、リモーピョが組織の人間に成果を報告し、私を組織のトップと会わせるというので来てみたら、大量の信者共が私に一斉に目を向けて、膝をつき、口々に私に捧げる言葉を上げながら床に頭をつけた。
うるさいので防音の詠唱で音を塞ぐ。
「ははっ!っひぃ、くふふふ、すごいね、この信仰を貰えばこの世界達の神に変換されてしまうくらいだ、どうだい、神様業でも始めてみたら?」
「冗談を言うな、私は平穏を求める、神なんてやってられるか」
「だろうねぇ、ふっふふ、ガゼルはそういう奴だ、さて、じゃあこの中からも救世主を探すとするか」
「そうだな」
既にどこかの世界で神をやっていけるくらいには力を持っているが、私はそれを振るって世界を統治する気はない。
何十、何万の生物や無機物を管理するなんて疲れるし面倒な事はやっていられない、自分自身一人を管理するだけで十分だ。
ビリゥヴァの中身は混沌の小宇宙なので、それに関しては私が統治者と言えなくはないが、あれは収納であって世界ではない、中の自治もある程度はビリゥヴァが補ってくれる。
さて、救世主を探すと言ったが具体的に何をするかというと、この中から力を持ち、鍛えれば世界の崩壊に立ち向かえるようになる者を選定し、鍛えるのだ。
リモーピォは決定として、あと十人くらいは欲しい。
後世に力を受け継ぐとしたら人は多い方がいいが、いかんせんたくさんの人数を鍛えるとなるとこの世界達を救える程度の力が必要になり、バレる。
なのでまあ十人くらい、集めよう。
解析の詠唱を一つ使い、居並ぶ信者を見渡す。
ソゥヲバーリュの方でもいくらか見繕うので、私は六人くらい集めればいいか。
私に対する何らかの言葉を発する信者の中を見回す。
たくさんいる割には力を持つ者は見つからない、おかしい、よくこれまで生きてこられたものだ。
ここで私は思い当たる、もしや私を呼びに来る前に力を持つ者は破滅に立ち向かい死んでしまったのではないか? と。
世界達の破滅具合から見て、生物はまだたくさん生き残っていそうだが、力を持つ者がその中のほんの一握りだったらもういないのではないか?
「ソゥヲバーリュ、この辺の世界達の状況はどのくらい危険か?」
「全然、全然大丈夫なくらいにしか世界は壊れていないよ、世界の分析資料を調べてきたけど使えそうな人材はかなり出来てるし、ここにいないだけじゃないかな」
「そうか、それだけならいいが」
「まあ、そうじゃなくて仮にこんなゴミみたいな人材が全部だったら地団駄踏むよ」
「ビリゥヴァの中で暴れるな、ノーォの海山に突っ込むぞ」
不安を心に抱えながらも私達は一通りに信者の力の解析を終えた。
一応力を持つ者はいたが、鍛えても使い物にはならなそうな力だったり性格だったりするので、リモーピォと同じかそれ以上のもにはいなかった。
何故リモーピォが組織のトップではないのか、まあ、宗教団体みたいな奴らだし力を持っているからと言って頂点に立てるわけではないか、と考えていると、組織のトップらしいローブを身に纏い、フードで顔をすっぽりと覆っている背の小さい奴が進みだしてきた。
何やら口を開き、パクパクとしているが……そうだ、防音をしていたな。
「録音した言葉を再生します」
目の端に文字が浮かぶ、リーポォのモノだ、トップの言葉を直接私の脳内で再生してくれるようだ。
ちなみにリーポォは私の服の袖の中から入ってシャツのように私の体を覆っている。
さて、では、トップの言葉を再生しよう。
「グァットジーイル様、初めまして、この教団のトップのブルーと申します、本日はこの破滅に蝕まれているこの世界にお越しいただきありがとうございます、ですが報告で聞きました所、今回の破滅はあなた様でも手を焼き、我々の命も必要との事、そういう事であるのならばいくらでもお使いください、我が教団はあなた様の名を冠する通り、あなた様の手となり足となり、血となり肉となりましょう、教団の者達もあなた様のために死ねるのならば本望でしょう」
うん? 何か勘違いされているか、この世界達の人間を戦わせる気ではいるが、別に命を奪うワケではない、リモーピォはどんな風に話したのか、私の言い方も悪かったか。
まあ後で誤解は解いておくとしようか。
何も言わない私に何か機嫌を損ねるようなことをしたか、とローブの奥で冷汗をにじませているのが探知と解析の結果わかる。
ちなみにこのローブの中身は小さい女で、およそ数百年程度生きていると思われる。
この世界達の中にこんな長命な種族はいないのでおそらくは別世界からの移住者や漂流者か、離れてかなり経ったのでそういう種族が生まれていてもおかしくない。
力はない、ただただ生存能力に特化した種族のようで、水と塵を食ってれば、戦わなけれが長い間生きていける高効率な体のようだ。
さて、分析はそこまでにして私はとりあえず誤解を解くために口を開いた。




