吊るした二人と生意気な若さ、そして世界への目的
世界の狭間に現れた不審者二人はあっさりと拘束された。
今は詠唱で体の自由を奪って世界の狭間の重力と地面から突き出た岩がある所で逆さに吊るしている。
この奇妙な光景を絵にするのも悪くはないか、と私はペンと紙をビリゥヴァから取り出して絵に起こしてみる。
そういえば人物画を描く事は滅多にないモノだな。
初希やココココ子を描いて保存をしているが、それ以来か。
この奇妙な二人の人相を描いて世界管理官の方に届けておけばいざという時にも使えるだろう。
という事でオレンジのニット帽をかぶった方、確かクォリョとか言ったか、顔が見えないのでニット帽を脱がして顔を見てみると普通の女性の顔が出てきた、わりと凛々しい顔立ちをしている。
そして縞マネキンの方、口ゲンカでののしりあっていた時に聞いたがモーピォンォ、実体を見続ける眼を使い続けると副作用で頭が痛くなるので、姿を現す詠唱をかけてその姿をさらす。
こちらはどこか気品のある顔立ち、雰囲気からしてどこかの令嬢のようだ、服装の怪しさを覗けばだが。
さて、少しやりすぎて気を失ってしまっているので目覚めない内に描いてしまおう。
こういう絵を描くのは久しぶりだ、すみずみまでじっくりと細部まで細かく描写して、魔力を込めたら絵から出てくるくらい鮮明に描いてやるか。
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「ん、んあいい? 母さん? 朝ご飯はタンスの一番上……ってここはどこだあ!!」
「うるさいですよクォリョ、ここはあなたの家じゃなくてわたしの家ですから、ママ! 朝ご飯……て家じゃない! ここは、確かわたしは……」
「よく寝たようだな、おはよう」
あらかたまんべんなく描き終えたところで二人がほぼ同時に目を覚ましたのであいさつをしてやると二人ともに私を見て驚く。
「あ、ああ、あなたは、先程は本当に申し訳ありませんでした!!」
「お前! こんな所にあたしたちを吊り下げて何をするつもりだ!」
「う~ん、うるさい奴は黙らせてしまった方がいいか? 永遠に」
私としてはこの不審者の目的がこの世界に害意を持ったモノだというのはわかっているので、その害の大きさや凶悪性によってはこいつらの命を多少絞ってもかまわないとは思っている。
がそれをするかしないかはこの二人が何をしようとしているのか吐かせないといけないので、明らかに吐かなそうな奴はうるさいだけなので口を封じようか。
ビリゥヴァの中から長めの糸と針を取り出して脅してみる、実際にはやらないが。
「へ、へっ! 脅しなんて聞かねえぞ! お前が何をしようとしてるか知らねえけどな!」
「私は何故、私の住む世界にお前らが来たのかを聞きたいだけなのだが、話してくれるなら、まあ、目的のいかんによっては普通に開放しよう」
「だからお前に教える必要はねえって言ってんだろ!」
「クォリョ! いいです、このままでは最悪、手遅れになってしまいますから、お話いたします」
「で、でも、モーピォンォ、こんなわけのわからねえ奴に……」
「いいんです……話す前にお名前だけでもお教えいただけませんか?」
「ガゼル、だ、モーピォンォ、物分かりがよくて助かる」
「ガゼル……ガゼル? ガゼル!! あなたを探していたんです!」
私の名乗りにモーピォンォが反応した、私を探しているという事か、なら何故世界に害意を持ってきたのか、それもモーピォンォのくちから語られる。
「あなたにはわたし達をとある世界まで送って行ってほしいのです!」