仕事と防御結界、そして謎の二人
間が空いてしまいすみません
朝日が注ぐ部屋の中、いつも通りの朝だ。
掛け布団と敷布団の間で目を開けた私は、眠気からか少し痛む頭に手をやりながら上半身を起こす。
窓の外を見れば青い空、通勤通学の為に道を行く人々が見える。
布団を片付けて着替え、私は大きく伸びを一つ。
この世界で暮らすにあたって、私にも仕事がある、と言っても家の中でやる内職のような仕事だが、それでも働かなければ街の人間から白い目で見られるニートなる存在になってしまう。
そうでなくても働かざる者なんとやら、ぐうたらしていたら体が鈍る。
私の本来の体を覆う器はそこまでヤワなモノではないが気分の問題だ。
という事で折り畳みの机を取り出してそこにビリゥヴァから束になった紙とペンを取り出し、私が見てきた風景を描いていく、もちろんこの世界のモノではなく他の世界のモノだ。
あまり写実的ではなく、ところどころあいまいだが、一応売れるモノらしく、月に一度知り合いの美術商に買い取ってもらっている。
外で暇つぶしに描いている時に突然絵を売ってくれなんて言われたものだから驚いたものだ。
いつも私の絵をあげるとぼーっと眺めて数十分そのままになる事以外はとてもありがたく思っている。
この世界での数少ない知り合いでもあるので喜ばせる為に描いてあげるのも悪くはない。
私は白い紙の中に作り出す世界に集中して、ペンを走らせた。
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数枚書き上げた所で世界の外側から近づいてくる気配を感じた。
気配は二つ、詠唱により取り付けた防御結界を覗いてみると見覚えのない姿が二つ。
片方は穴の開いていないオレンジ色のニット帽を顎の下まですっぽりとかぶり、私が住むこの世界でいう所の商社マンのようなスーツを着てネクタイを締めている。スーツは黄緑でネクタイは深緑の配色の商社マンは見たことがないが。
もう片方は青と桃色の縞模様のぴったりとしたボディスーツを着た首のないマネキンのようなヤツ。
ボディラインから見て女性の体である事が予想できる。
その二人が防御結界の前に立ち往生し、結界を叩いたり、押したりしている。
この防御結界は世界に入って害をなそうとする者を弾くようになっているので、奴らは何らかの悪事を働きに来たのだろうか。
ちなみにこの結界は世界管理官のソゥヲバーリュが張っていった結界で、エンドフォグによって荒らされたこの世界がある程度修復されるまで私が結界を管理する事を任されている。
これ以上放っておくと結界が壊されそうなので世界の狭間に出て、防御結界の方に行く。
向こうからはこちらの姿は見えないので私は思念を飛ばして声をかけた。
「この世界に何の用だ、訪問者」
声をかけられて二人が硬直するのが見えた、ついで辺りを見回す。
その内心が焦っているのが思念から感じ取れる。
どこから声がするのかと辺りを見回す二人に再度声をかける。
「もう一度問う、お前達は何しに来た」
もう一度言った事で聞き間違いでない事を確信した二人が結界から距離をとり、警戒を始めた。
「どこから声を出しているんでしょうか、出来ればお顔を見せていただきたいのですが」
腰の低い丁寧な声を発したのはおそらくは縞マネキンの方、おそらく顔面が透明なのだろう。
透明化したモノの実体を映し出す詠唱を少し唱え、その姿を見ると、ボディライン通り女性の顔だった。
オレンジニットの方はスーツの内に手を突っ込んでいる。
思念を読んだところ、武器を取り出そうとしているようだ。
「どこからも何も今、お前達の目の前にいる、とは言ってもこの世界に害のある者にはこの結界を見通すことはできないがな、あと、武器で結界を壊そうとしているならやめた方がいい、結界を攻撃したら私はお前らを世界管理官に通報しなければならなくなるからな」
「ちっ! お見通しってぇかあ?」
オレンジニットの方が舌打ちする、その声は低いが男か女かは判断がつかない。
しかし、世界管理官の事は知っているのか、武器を懐から出すのはやめたようだ。
「で、何の用だ、場合によってはやはり世界管理官に通報か、私が直々に始末するが」
「秘密、というのはダメでしょうか」
私は無言で詠唱を一つ、二人の背中に冷たい風を吹かせた。
「だめ、ですか」
「乙女の秘密を暴こうだなんて粗暴で野暮な奴だな」
「……死が欲しいという事だな」
「ちょっ! クォリョ! 余計な事言わないでください!」
「ああ? だってよぉ、見えないとこからこそこそと卑怯じゃんかよお」
言い合いを始める二人に解析をかけ、大体の力の程を確認した後、私は結界の向こう側に出る。
乙女、言っていたという事はあのオレンジの方も女らしい。
出てきた私に気付かず言い合いする二人に私はため息を一つ吐き、詠唱を使った。




