こじょにゅぬと処刑、そして怒り
こじょにゅぬは立ちふさがり、私に向かって指をさす。
すると城の床が蠢いたので私はその場から飛んで離れる。
見れば先程まで私がとどまっていた辺りの床が、鋭い牙で敵を切り裂かんとする怪物となってぽっかりと口を開いていた。
あと少し遅ければ捕まっていただろう。
「ガゼルの人はやっぱりなかなかやるね、これはこじょじゃあ勝てない」
「そう思うなら引いてくれないか? 今回ばかりはたとえお前でも殺してしまうぞ?」
「……今度はなにしたお姉ちゃんなの?」
言いながらこじょにゅぬはまた私を指さす、今度は天井が盛り上がり、石塊を吐き出してきたので防壁で弾き、詠唱でこじょにゅぬの感覚を遮断する。
この城を操るといってもこいつはサーリョックォから操作権を貰っているだけなので、敵を視覚に頼る癖があり、城と同調するのはあまりうまくない、感覚を遮断してやれば攻撃は鈍る。
「私の恋人をさらって、そして殺そうとしている」
「んえ~、お姉ちゃん、やるやるとは思ってた人だけど、やったねえ、流石にそれは引く、どうしようかな~ん~、そうしよう~、ぬえいやあ!」
私の話を聞いてこじょにゅぬは実の姉に対して嫌悪を抱いたようだ。
というかこの姉妹は元々仲がいいというワケでも悪いというワケでもない。
妹であるこじょにゅぬがいつも気まぐれで適当なため、姉に対しての感情がころころ変わるのだ。
こじょにゅぬが声を上げると城の天井に穴が開く、見るとその上の階の天井にもそのまた上の天井にも穴が開いている、通してくれるようだ。
「お姉ちゃんがごめんねいつも、今回はもう嫌いだから殺しちゃっていいよ」
「ありがとう、そうだ! お礼をやろう」
私は異空間を開き、その中からこじょにゅぬが好みそうな果実を取り出して投げた。
こじょにゅぬはそれをつかんで一口かじる。
「ん、とてもおいしくなくない、ありがたく貰ったり貰わなかったりするね」
「それじゃあな」
「またねー」
顔をほころばせて手を振るこじょにゅぬに軽く手を振って私は穴を抜けていく。
またね、か、二度と来たくないのだけれどな。
一気に最上階まで穴をあけてくれていたようで、すぐに初希とサーリョックォがいる場所まで来ることが出来た。
「おい! サーリョックォ! その手を止めろ! さもなければ存在を消してやる!」
サーリョックォの後ろ姿が見えたので詠唱を使い、体を拘束する。
しかし、その拘束の体一つ分横にサーリョックォはいつの間にかずれて拘束を躱していた。
やはりヤツの領域では私は不利だ。
「もう、こじょにゅぬったらやっぱり使えない、姉であるサリーの恋愛を応援しようって気がないのかしら、どう思いますか? ガゼルさん」
「お前が異常で、こじょにゅぬが正常だ」
「やっぱりガゼルさんの目、曇ってる、ますます手を止めるわけにはいかない」
やはり駄目だ、ヤツの中に通っている理屈と私の中に通っている理屈が全く違う、話が通じない。
私とサーリョックォがいるのは広い部屋、騎士の甲冑が並び、シャンデリアが照らす何の部屋かよくわからない部屋、その中心にある私の背丈より二倍近くはある大きな柱の上に裸に剥かれた初希が張り付けられていた。
「ゴミは処理よ! サリーがやるの! ゴミクズは無残にバラバラにねぇ!!」
サーリョックォが叫び、柱に手を触れる、すると柱に何かの文字が浮かび上がり、光を放ち始めるとともに、張り付けられた初希の体が目を覚ましていないのにガクガクと動き出し、表情が苦悶に歪む。
「この柱はねえ、この時の為に作った特注品なの、合図を出せば後は……ね?」
「滅せよ、消し飛ばせ、世界よ、我、詠唱す!」
柱に向かって詠唱を放とうとしたが、発動しない。
サーリョックォが笑う、封じられたか。
「さあ、ガゼルさんの曇った目はもうすぐ晴れるわ、そしたらサリーはいっぱいあいしてもらうんだから」
「あ、ああっ、あああああああああああああああああ!!!」
狂った笑みを浮かべるサーリョックォの上で初希が悲鳴を上げ始める。
そうか、やはりこいつは消すしかないようだ。
怒りを抑える事はもうできなさそうだ。




