封印と城、そして登る。
冷静に、冷静に、と思うが心の中から怒りが沸々と湧いてくる。
それはサーリョックォへの怒りでもあるが、同時に自分への怒りだ。
情けない、長い時を生きてきて、様々な力を手にしたというのに、その力で大切な人一人守れやしない。
あの時、とっさにでも初希に手を伸ばして掴んでいれば、こんな事にはならなかっただろう。
だが、私は出来なかった、突然の事に詠唱を使おうとしたが、それよりも手っ取り早い方法もあったはずだ。隠居している間に勘がぼけてしまったのか。
今はサーリョックォを追おう。初希の居場所を探るマーキングをさっき封印される寸前につけておいた。
それで場所を確認する。私が封印されたここはこの世界のサーリョックォの住処、巨大な山の中に埋まった城の地下迷宮だ。
いっそ城を消滅どころか世界を破壊してサーリョックォを葬ってしまう、という考えも浮かんだが、初希が巻き込まれるので却下だ。
まとわりつくように上から落ちてくる封印を一息に弾き飛ばすと、薄暗い部屋が戻ってくる。本当に簡易的な封印だ、この程度なら解かずとも破壊することが可能だ。
さて、と初希のいる場所を探ると城の一番上の部屋にいることが分かる。
すぐに転移をしようとしたが、詠唱を使ったのに景色は変わらない。
先の封印に細工がされていたのか、他の詠唱は普通に使うことが出来るが、転移の詠唱及び、他の転移の手段を使う事は出来なかった。
用意周到、というワケか。
頑丈などころかいくらかの術式だったり、特殊な技術が施されたこの城を穴を空けて登るには時間がかかる、とするならば普通に登っていくしかない。
私は飛ぶ、幸いにも探知魔法は使えるので、地下迷宮の出口はわかっている。
最短の道を抜けていく、罠の類は無く、すぐに上へ行く階段が見えた。
それを抜けて上へ、その先、地下迷宮の上も未だに地下だ。
しかし、無骨な石の道ではなく、カーペットが敷かれ、ろうそくの明かりが照らす、廊下だ。
先程の地下迷宮はおそらく地下牢のようなモノだったのだろう。
勿論、内装を鑑賞する事は無く、探知魔法に示された上へと続く階段の元へと行く。
がそこに行く手を遮る影があった。
細く、しかしがっしりとした体、背はピンと伸び、白髪の初老の男。
毎度毎度あっているのでわかる、サーリョックォの世話係だ。
行く手を塞ぐという事は私の邪魔をしに来たという事で、光る剣をどこかから取り出して振り下ろし、斬撃と共に半月状の光を飛ばしてくる。
相手をしている暇はない。だがおとなしく通してくれる奴でもない。
「爆ぜよ、焼き尽くせ、消し飛ばせ、我、詠唱す」
なので建物の強度を逆手に取り、大爆発で吹き飛ばす。
光を躱し、爆発の中を突き抜ける、その向こう、吹き飛ばされた世話係が倒れていた。
申し訳ないが恨むなら私ではなく頭のおかしい主人を恨むんだな。
階段を飛び、さらに上へ、探知魔法によって罠を躱して登る。
頂上まではまだ遠い、思念を飛ばして初希の様子を確かめようとするが、まだ意識を失っているようで覗けない。近くにいるサーリョックォの思念は私に対してはいつでもオープンだが覗くと気が狂いそうなので見ない。
だが、何かをしそうなので思念の方から攻撃を仕掛けてみる。
強靭で狂った精神を持っているので、気絶までとはいかないが、ある程度動きを止める事は出来る。
次の階段には誰もいないが、その上にまた待ち受ける誰かの反応がある。
こいつもまたここに来るとよく会う奴だ。
階段を上り、フロアへ出ると壁が下りてきて道が塞がる、そして前に立つのはサーリョックォと同じくパーカーのような服を着て、フードをかぶった小柄な少女。
サーリョックォの妹、こじょにゅぬ、だ。
「ガゼルの人、お姉ちゃんがここで待ってれば会えるって言っていたりいなかったりしたよ、会えたね」
「私は今は会いたくなかったがな」
「こじょも同感なのがそう、だけど一応道を塞いでみたよ、気まぐれに」
こいつもこいつでワケが分からないが、この城の中を自由に操ることが出来るので厄介だ。
悪気がないのでたちが悪い、事情もさっぱり分かっていないのに何故か邪魔をしてくる。
しかも、先程の世話係とはわけが違う、なんせ奴の妹なのだから。
だが急いで倒さなければな。




