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毒をかじる

とある鬱蒼とした森の中で一人寂しき小屋の中に住まう貧相で貧乏な女がいた。


こいつは俗世とは和解することが出来ずに自身の社会との因縁にけりをつけてこうして隠居暮らしにふりきった女である。


さてこいつがいつものようにほうきで塵カスを掃いている頃、ことに王城では、王子が新たなる姫を求めて縁談、パーティーに耽り辟易していた。


そうして疲れ切った王子の前になんでも世界一美しい美女を紹介できるという占い師がいると聞きつけた。


王子は元来占いなどの呪術出来で非科学的な物には不理解を示していたがこの日は藁にもすがる思いでその話を受け入れることにした。


受け入れて数時間がすると王室にその占い師がやってきてどんな相手を求めているかを相談すると言った。


相談の上その条件を踏まえて絶世の美女が誰であるかをサーチするというのだ。


そうして数分して見合う相手の条件をすべて出し終えて占い師は明日結果を出しますと言って退室した。


さて話は戻ってかの鬱蒼とした森の中で身を潜めるよう生きる女のもとにフードを被った老婆がやってきた。


丁度窓の拭き掃除をしていた女は森の中から気味悪く出て来た老婆を、鏡像ではないかと睨む。


やがて小屋の前まで近づいてきて窓を叩いてきたので女はそろそろと窓を開き事情を尋ねた。


すると老婆は提げていたバッグの中からリンゴを取り出して女に見せ言った。


「白雪さん、このリンゴには毒が入っています。信じられないようなら、自分を信じられないようなら食べてしまって構いません。私はあなたに懇談を持ち掛けに来た仲介役です」


そうして完熟もとっくに通り過ぎた皺皺のリンゴを白雪に渡す。


「懇談…ですか?いえ、毒リンゴなんて持っててもですし、懇談もなんなのか…ごめんなさい」


差しだしてきた手を跳ねのけ白雪は再び窓の枠に手をかけて面倒事から避難しかけた、ここを老婆は見逃さず窓に手をかけて無理やり開きながらさらに続けた。


「白雪さん、あなたは幸運です。王子から懇談を持ち掛けられているのです。臆病になってはなりません、そう信じれないなら毒リンゴを食べてしまって構いません。私があなたの代わりをしましょう。」


老婆はまたも毒リンゴを白雪に差し出そうとする、白雪は頑なであり毒リンゴなど受け取ろうとしない。彼女は自身の理念を曲げないことを美徳として生きている。一見弱点にも見えうるこの性格を、一種自身の個性として喜ぶほどに彼女は身も心も貧乏だったのだ。


老婆は彼女のそのくだらない執着を冷笑して、侮蔑して有難みも道徳も教え治さねばなるまいと考えを改めた。


「白雪さん、あなたは貧乏です。何もかも。こんな生きている価値のない生活と性格で森林の一部の様に生きることも事実ままなっていないことは分かっています。どこにも迎合されることのなかったあなたの人生に降りかかった幸運を逃してしまう、逃せるほどに悪態をつけてしまう愚かさを残されるのなら、それでも自分を信じれるのなら、信じ切れるならば。ここで撤退しましょう。」


そう言い残して老婆は毒リンゴを置き残した。


森はやたらと静かに白く女を見つめていた。


ここで死ぬか生きるかここから出るか。


女はあたかもたったいま生み出されたかのようにその三者を見つめなおした。


さて彼女はこの先己の生活と生と死の値踏みと決断との二の足を踏みながらこの先の暗黒をも考えることになるのだ。

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