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病院
脳髄に進行するほどの病理に罹っているものが病棟にやってこられた。
かの物は服装、またふるまいから高貴であり、寧ろ医者らが彼に羨望すら抱いていた時、男は自身の患っているものの話をすると、今の振る舞いこそが病理に一端であることを理解して病床に迎えた。
なぜ立ち振る舞いが擬態する精神病にかかったのかのカルテを日々取っていると、日々の生活習慣、生活空間の安寧さから精神病にかかる原因なるものはないと頭を悩ませることになった。
医者は次第に男が想像の精神病に罹った道化師なのではないかと疑うようになった。
カルテに綴る質問項目も医者の思惑に迎合する誘導尋問的なものも多くなっていって、遂に男は陥落して病棟から出たいと言い出すようになった。
かの医者が務めていた病院は所謂ヤブ医者も真っ平承る倫理観の低迷していたところだったので、医者は己の思った通り患者の様態の疑惑が確信に変わると勝ち誇る情感に満たされた。
ヤブ医者とは則ち病人だ。
あなたは裁判官ではない。
ましてやその真贋すら直観なのだ。
病人は最後にこう言って立ち去ったという。




