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ヴェスタ平原の討伐クエストは、乾季になるとギルドが募集を受け付ける定期クエストである。
ヴェスタ平原は学院に近いこともあり、普段は学院生たちの訓練も兼ねた魔獣討伐によって魔獣の数が増えすぎることがないのだが――乾季に関してはこの限りではない。
多くの生徒が在籍する学院への物資の搬入は必要不可欠であり、都市から学院までの道中の安全を高める必要性は高く、生徒たちによる魔獣の討伐数が減る乾季にはギルドが率先して魔獣の討伐を働きかけているのだ。
ヴェスタ平原に到達したところで、ユハスは一同を見まわした。
「改めて言っておくが、今回のクエストで魔獣を討伐するのはバーデルとガルディウスだけだ。」
そんなユハスの発言に、あらかじめ話を聞いていたのかディアラたちは頷く。
「残りはどうすんだよ?」
バーデルの質問に、ユハスは淡々と答える。
「俺は傍観。エリシャはいざという時の回復。ディアラはエリシャの護衛――主にバーデルからのな。」
「……まあ、いいけど。」
ぞろぞろと連れてきて結局戦うのが二人だけということへ不満がないわけではないが、それが自分の異名に起因した対策であることはわかっているバーデルは、しぶしぶ頷く。
一方でガルディウスは、不満はないものの首を捻る。
「僕もかまいませんけど……。学武会前なのに、ディアラさんたちはそれだけのための同行でいいんですか?特訓とか何か、しなくてもいいんですか?」
「ああ。俺とエリシャは元々何度かペアを組んだ経験があるから、改めて特訓とかは考えてないんだ。パーティー登録は済んでるし報酬さえもらえれば俺たちはそれでいいよ。」
複数人のパーティーでクエストを受ける際にはあらかじめギルドにそれを申請しておけば、報酬はメンバー全員に均等に分配される。
クエスト中にパーティーメンバーが倒した魔獣は、ギルドカード――学院生はその代わりになる学生証にその数が自動記録され、ギルドへの報告時に均等に清算される仕組みなのだ。
今回は、ガルディウス、バーデル、ディアラ、エリシャの4名でパーティーを申請してクエストを受けたため、ディアラとエリシャは魔獣を実際に討伐せずともガルディウスたちの倒した魔獣分の報酬の四分の一をそれぞれ貰えるのだ。
「こいつらは金目当てだ。学武会は万全なコンディションでさえ臨めればいいから、無理をせずに金を稼ぎたいのさ。」
そんなユハスの発言にディアラは頷く。
「まあ、そういうことだ。俺もエリシャも一応単位は足りてるから、金を稼ぐなら院内クエストより通常クエストの方が効率がいいし、魔獣と戦うのはおまえらだから、普通のクエストよりも安全。俺らにとっては至れり尽くせりってわけだ。」




