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ヴェスタ平原で最も遭遇率の高い魔獣――ホーンラビット。
特徴はペットとして愛玩されることも多い兎同様の愛らしさと、額からはえる鋭く長い角だ。
魔獣ランクは最低のGだが、その角から繰り出される一撃はGランク魔獣の中で一番の威力を誇り、攻撃力だけならばFランク魔獣にも匹敵する。
愛らしい外見に惑わされれば、怪我では済まない恐るべき魔獣だ。
――とはいえ、Gランク魔獣といえど学院生にとっては単独撃破が可能な魔獣だ。
「ホーンラビットが3匹……とりあえず、僕は援護のみでいいですか?」
「ああ。」
ガルディウスの問いに頷いて先陣に立つバーデルだが、ユハスはガルディウスの背後で別の指示を出す。
「あいつの援護は不要だ。とりあえず自己防御だけでいい。自分の身を守ることだけ考えろ。」
「え?でも……」
「この程度の魔獣でくたばる奴じゃない。いざとなればエリシャもいる。」
「……わかりました。」
ガルディウスはホーンラビットからさらに距離を取り、念のために両手をわきわきと動かし自らの回避率を上昇させる。
それを改良した神眼付与の効果があるゴーグルをして見たユハスは、内心舌をまく。
何事でもないようにさらっと行使される魔術――
(この一瞬で五感強化に、反射神経向上に、脚力上昇の三重魔術だと?)
それもその全てが難易度の高さで知られる紋章術だ。
左手で五感強化、右手で反射神経向上と脚力上昇の紋章を同時に自己魔導で描く使い手の存在など、聞いたこともない。
たかだかGランク魔獣相手にと思わないでもないが、院内クエストで聞いたアルティナの言葉に今更ながら納得する。
あのアルティナに、身体能力は一般人以下と評されながら、回避に限定すれば魔法使いとしてはそこそこ動ける方だと評価されたのはこの手早い三重魔術の存在があればこそだろう。
一方でホーンラビットと対峙するバーデルは、右手にナイフ、左手にハンドアクスを握りしめ3匹の魔獣をうかがう。
バーデルの基本的な戦闘スタイルは二刀流――それも左右で異なる武器を持つものだ。
今回はナイフとハンドアクスだが、使う武器は状況によって変えている。
ヴェスタ平原に高ランクの魔獣は出没しないため、今回は携帯性重視でのセレクトだ。
ホーンラビットは高い攻撃力を持つが、突進してその角を突き刺すという攻撃特性から、まっすぐでしかない攻撃軌道は単調で読みやすい。
3匹いるため、それぞれの位置をしっかり把握する必要はあるが、武闘科の中でも身体能力の高さには自信のあるバーデルにとって無傷で倒せる相手だ。




