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毒舌家庭教師だけど、恋愛だけは完全に大赤字です―守銭奴、天使(仮)に貢ぐ―  作者: カナタ


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7話:通報しようか、葵ちゃん



夕暮れの路上。




箱山は遠くに葵の姿を認め、全力で「無視」を決め込もうとした。




しかし、葵の挙動はあまりに不審だった。




電柱の影から覗き込み、まるでその心拍数すら透けて見えるような挙動不審さ。




「……おい。警察に通報しようか、葵ちゃん。


今の君の行動は、完全に近隣住民を不安に陥れる不審者のそれだぞ」




「は?先生!!なんでここに!?


ん? 通報対象って ひょっとして私のこと!?


先生、今のセリフ、そのまま鏡に向かって言ってきたら?完全に変質者のオーラ出してるのはそっちでしょ」




葵が食ってかかる。




「理解に苦しむよ。


君は一体、何をしているんだ。


貴重な時間と酸素を、公共の場で垂れ流して」




葵は完全に箱山の言葉を無視して少し遠くを見据えながら続ける。




「……見て。先生。


今ね、一条くんがそこを走ってるのよ!見惚れてたの!!」




葵の視線の先には、


絵に描いたような爽やか美少年・一条健いちじょう たけるがいた。




夕日に輝く汗、


プロテイン飲料を片手に、まるで清涼飲料水のCMから飛び出してきたような生命力の塊。




「やぁ、香坂じゃないか。風が気持ちいいよ? 君も走らないか?まずは 5キロ。


……世界、変わるよ」




一条が声をかける。




「……っ!!


 (トクン……!)


 ねえ先生、聞いた!?


今の誘い方!これってもしかして両思い確定……!? もう、世界が薔薇色に見えるわ!」




葵の顔は真っ赤に染まり、乙女のファンタジーが全開に。




一条は無自覚な爽やかさを振りまきながら、箱山に気づく。




「おや? そちらの方は香坂のお知り合いですか? 貴方もいかがですか?


いいプロテインをご紹介いたしますよ。


筋肉は嘘をつきませんからね」




箱山は一条の「筋肉論」に、まるで汚物でも見るかのような冷たい視線を送る。




「……葵ちゃん。引き揚げよう。


彼はもう手遅れだ。脳の大部分が筋肉に支配され、思考回路がタンパク質の合成効率だけで最適化されている。


人間としてのOSが根本から異なるんだ。


あのプロテインとやらを摂取しても、君の偏差値は1ミリも向上しないし、君の恋という名の認知の歪みも改善されそうにない」




「はぁ!?先生、嫉妬してるの?あんなに清々しくてかっこいいのに!」




「嫉妬?…… 違うね。ただ、君が選ぶターゲットが『知性から最も遠い存在』であることに、家庭教師として深い絶望を感じているだけだ。


……行くぞ。


君の今のそのニヤけた顔、これ以上近所の住人に見せるな。


不審者扱いされるのは僕の方だ」




箱山は足早に去ろうとするが、一条の「プロテイン語り」が背中に突き刺さり、苦悶の表情を浮かべることしかできないでいた。






この度は家庭教師コメディをお読みいただきありがとうございます!明日も12時10分に次話を更新します。

もし少しでも気に入っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると執筆の励みになります!

なお、夜は20時10分に毎日更新している別作品で『告解者』という完全シリアスなサイコサスペンスも書いておりますので、もしよろしければお読みいただけると嬉しいです★

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