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毒舌家庭教師だけど、恋愛だけは完全に大赤字です―守銭奴、天使(仮)に貢ぐ―  作者: カナタ


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6話:天使に貢ぐ、守銭奴の成れの果て




夕暮れのリビングに葵の従姉妹、雪野カノン(ゆきの かのん)が舞い降りた。




「こんにちは、葵ちゃん!来ちゃった!あら?箱山くんも来てたのね!ウフフ♡」




箱山の瞳に写った彼女はさながら天使のようであったという。




途端に、箱山の瞳孔が収縮し、過呼吸気味に肺が痙攣する。




「あー、カノンちゃん!いらっしゃーい!」




葵が声を弾ませる。




「……カノンさん……ッ!


何故こんなホコリの舞う不潔な環境に……!


雑菌とハウスダストが君の気道を汚染する!避難させなければ、この僕が君の聖域を守らねば……ッ!」




箱山は床に膝をつき、まるで神の来臨を仰ぐような法悦の表情で震えている。




「……ねえ、人んちを汚物扱いしないでくれるかしら?


今明らかに ホコリっぽいのは先生の思考回路でしょ。てか、キャラが崩壊してるとかいうレベルじゃないわ。


誰か、この男を精神科か動物愛護センターに繋いであげて……っ」




葵が呆れ果てる。




カノンは冷ややかな微笑みを浮かべ、箱山の横に身を寄せた。


彼女の繊細な指先が、箱山の耳元を掠める。




「箱山くん♡ いつもありがと。葵ちゃん、手強いでしょ? 無理しないでね♡」




耳打ちの瞬間、カノンの表情が仮面のように切り替わる。




「ねぇ箱山く〜ん♡


前にくれた あのネックレスね、


私よりもね、私の最推し地下アイドルでこの地上が生み出した至宝の天使ことルリルリの方が絶対似合うと思ってプレゼントしたの♡


そしたら『これ高価だから受け取れないよ〜』って返されちゃって。


だからメルカリで売って、そのお金でチェキ券に変えちゃった♡


『その方がルリ嬉しいよ♡』って!ルリルリにも感謝されちゃったのぉ〜!いつもありがとうね!!箱山くん♡」




「ネックレス……?


………換金?……ルリルリ……?


……ハッ!!今!カノンさんから、明確に感謝されている!!


彼女の生活の一部に、僕の存在が寄与しているんだ……!!」




箱山はカノンの毒を、蜂蜜だと思い込んで飲み干している。




「フフッ!じゃ、頑張ってね♡


あ、そうそう箱山く〜ん、今度バイト代入るのいつ?


またランチ行こ。


カノンね、 今、欲しいものたーくさんあるの。私のために、精一杯頑張ってね?」




「……ッ!!今、カノンさんからデートの招待が!


愛の……いや、経済的な相互協力の要請が!心臓が、心臓が爆発する!!」




箱山の思考は、カノンという甘美な毒によって完全にショートした。




「……あーあ。


鴨が葱を背負って踊り狂いながら、自ら『(かまど)』という名の業火に飛び込んでいくわ。


しかも、その燃料は自分の時給っていうね」




葵は冷めた目で、箱山の背中を眺める。




箱山は既に、自分がカノンという名の底なしの課金沼を支えるATMに成り下がっていたことなど、露ほども気づいていない。






「ねえ先生………。


この間、私を『進化の袋小路』とか呼んでたけど、今の先生のその顔、鏡で見せてあげたいわ。




――『人間卒業おめでとう』ってテプラ貼っておいてあげる」








この度は家庭教師コメディをお読みいただきありがとうございます!明日も12時10分に次話を更新します。




もし少しでも気に入っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると執筆の励みになります!

なお、夜は20時10分に毎日更新している別作品で『告解者』という完全シリアスなサイコサスペンスも書いておりますので、もしよろしければお読みいただけると嬉しいです★

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