そして三人になるの巻
冒険者ギルドにおける重要な仕事にパーティメンバーのマッチングがある。
募集されるパーティメンバーは魔法使い、特にヒーラー募集が一番多く、他のメンバーを募集する場合でも当パーティヒーラー有、魔女有などと補足されていたりもする、いるだけでパーティのウリになるのだ。
そして、人間関係が煩わしいなど諸々の事情から特定のパーティに所属しないフリーの冒険者も魔法使いが圧倒的に多く、慢性的に不足しているものだから助っ人として非常に重宝されている。
あの人はさすらいのヒーラーだって話だったな……
剣士や騎士の募集はなかった、それどころか戦闘員募集には「除く剣士、騎士」わざわざ注記されているものさえある、臨時メンバー募集でもそれは同じだった。
やっぱり貴族出身は好かれてないんだな……
逆に当方剣士、或いは騎士、その他メンバー募集といったものはとても多い、ほとんどが貴族出身であるが故リーダー志向、こういう場合は実家の太さ金払いの良さでメンバーが集まるかどうかが決まるとギルド職員が言っていたが……ローランドはシオールをちらっと見る、困惑している様子はない、それどころかその表情は自信に満ちている、実家からの援助でも期待できるのだろうか?
「じゃ、俺たちもメンバー募集かけるか」
「あ、ああ……」
「わかったらさっさと書け、終わったら早速ダンジョンに潜るぞ」
「えっ!? まだ準備が……」
「そんなもん、その辺で適当に買ってけばいいだろ」
ただでさえワンマンなシオールは思いつきで動く、口下手で気の弱いローランドは頭を抱えるしかない。貴族出身者の中でもここまで厄介なのはなかなかいないに違いない、しかしほっとくわけにも行かないからダンジョンへついてゆく。
広い隧道を抜けた先にあるのは石畳の人工的な建築物の中だった、売店や休憩所などギルドの施設もあり、ここは第一砦というらしい。
元々は遺跡で上下水道など外の世界よりも優れた技術のものがまだ生きていて実際に使われていると壁に貼られたパネルに書かれている。
第一砦の外に出ると疎林や藪が点在している平原が広がっており、遥か向こうには巨大な山とその頂上には建造物らしきものが見える。
ネペタの言ってたとおりだ……
奇妙なことにぐるりと見回しても常に、巨大な山が正面に見える。
亡き親友から聞いた通りの洞窟内部とは思えない風景に感動と不安を覚えたが、シオールは何の感慨なさそうに歩いてゆく。
「いたぞ、魔物だ」
見た目は大きな角を四本もったアカシカより二回り程度大きな黒いヤギのような生物、喋りもしない魔物と動物がどう違うかわからない。
「フン、この程度の奴が初陣の相手とはな」
シオールが剣を抜いた瞬間雰囲気が変わりその立ち姿にローランドは言葉を失った、今までは呆れて言葉にならないからだったが、今回は違う、少年でありながら槍を構えたときの養父と同じ何か、手練が持つ一種独特の気配のようなものが漂っているのだ。
シオールが駆け出すと魔物さっさと逃げ出す、当然追いつける筈などなかった。
なお、この程度相手とは言っていた彼がこの生物について何かを知っているとはとても思えないが、シオールはそういう奴なのだからしょうがない。
「恐れをなしたか」
「いや、そりゃぁ……」
獣は人間と真っ向勝負などしたがらないのが普通だから罠を仕掛けたり遠くから矢で射る、シオールも貴族であるから狩りくらい嗜んでそうなものだが。
「弓で射るべきだったのでは?」
「は? 俺は剣士だぞ」
「しかし……狩りをするなら」
「狩り、ね……アレの何が楽しいか俺には理解できなくてね」
「おれも思う」
初めて気が合った気がした。
ローランドも畑に現れる獣の駆除はやってきた、それは田畑を守るためであると同時に有り難い恵みでもある。肉、皮革は勿論、骨なども肥料として余すことなく利用する、自分がこれだけデカくなったのも、ジビエがしょっちゅう手に入ったお陰もあると思っているが、娯楽として動物を殺すハンティングはどうも好きになれない。
「襲ってくるような奴じゃないと話にならんな」
「えっ?」
「そういう奴を退治したいんだが」
「いや、それは……ちょっと……」
昔話が子供向けの活劇物語みたいなことを本気で考えてるんだ……
「何を言っている? 強敵を打ち倒し名声を得る、冒険者とはそういうものだろう」
どうやらハンティング嫌いの理由が違ったようだ。……時代錯誤なのか、現実とフィクションの違いが判らないのか、彼は英雄物語のようなことをやりたいらしい。
結局、その日は特に何も得られなかった。
次の日、しかたがないので薬草採りを受注したのだが、当然というべきかひと悶着起こった。
「これ、ヤブレガサトウシュウじゃありませんね」
「は? どう見てもこれだろ?」シオールは見本の絵を見せる「わかった、タダ働きさせる気だな」
「これはヤブレシンクロウ……その見本にも似た形の植物との見分け方がちゃんと描かれてますけど」
「いちいちそんな長文読んでられるかよ」
ええー長文? 比較した絵と違いの説明だけなのに?
ギルド職員はため息をつき他の冒険者が採集したものを持って来た。
確かに葉の形が似てはいるが薬草ヤブレガサトウシュウのほうが切れ込みが深く、色合いや質感も異なるし、よく見るとついている小さなつぼみを見れば花も全然別物だとわかると比較しながら説明する。
「同じだろ、なぁ?」
「い、いや……違うと、思う」
なんで間違いを認めないんだ……
「なんだよ、俺のせいかよ? ならなんで先に言わないんだよ」
「ああ、うん……ごめん」
ローランドとしては付き合って間もなく、しかも何でも自分勝手に決める勢いのシオールに口下手なりに見本を貸して欲しいと何度か言ったのだが、荷物から出すのが面倒くさかったのだろう「今忙しい」「あとにしろ」など取り合ってくれなかったのである。
当然報酬は支払われなかった。
「だからこんな仕事やりたくないんだよ、こんなのやる奴は馬鹿じゃないのか?」
「……」
シオールがアホ過ぎると思う読者諸氏も多いかと思われるが、我々の世界においても山菜採りでの間違いや、ニラと間違えて水仙を食べるといった事故が毎年のように発生しているのだから、絵や写真を参考に識別するにはそれなりに植物に対する素養が必要なのだろう……多分。
その後、駆けだし向きとされる仕事を幾つか引き受けたが、地味なことが嫌いで英雄的行為を求めるシオールと振り回されるローランドのコンビはろくに稼げない日が続く。
しかも、度々トラブルを起こすものだからローランドはどんどん疲弊してゆくが、シオールは一切ブレることなくシオールだった。
ああ……とんでもないのと組んじゃったなぁ
今までは荷物運びなどで稼いでいたが、シオールは一般的な肉体労働を「やる価値のないもの」と見做しているため、それらでは稼げなくなった。
それをやる人がいるから世の中が回ってるんだろうに……とローランドは思うが、そういった仕事で糊口を凌いでいたとき、何のために出てきたのだろう……と虚しくなることがあったのも確かではあったし、シオールがいなければずっと冒険をしない冒険者だったことだろう。
「おい、飯にするぞ」
そして今、ローランドの経済状況は危険域に達していた。
「……もう金が」
「いいよ、俺が出す」
「えっ?」
意外な一言だった、金がないことについて何か言われると思っていたのだが。
「あ、ありがとう……」
シオールは案外気前がいい男である、ケチな奴は小物という認識で、深く考えず金を使う……という厄介性格ともそれは表裏一体で、食事のあと生活も楽じゃないのに何とか稼いだ金で何の相談もなく「俺も半分出してやる、この先必要だからな」と、ローランド用の大盾を勝手に買って困惑させた。
そして勝手なシオールに振り回される日々は続く。
ローランドが臨時メンバーを募集しているパーティに応募した際、シオールが剣の腕をアピール、評価されたまではよかったが、指図されることを嫌うだけでなく無礼な発言する、そもそも配慮することを媚びることだと思っているものだから、当然喧嘩別れになる。
「だから言っただろうが、お前があの程度のやつらとなれ合おうとしたからこうなったんだぞ」
「いや……傍若無人な態度はよくないと思うんだ……」
「は? 俺にあんな奴らに媚びろっていうのか?」
ええー……失礼な態度をとらないことが媚びることなのか?
ローランドの灰色の髪は生まれつきだし、シオールと知り合う以前のローランドを知っている者がいるのにもかかわらず、あのデカブツの髪は貴族の馬鹿ボンボンに振り回されたせいだと面白おかしく語られるようになった。
ただ、シオールには強い剣士という評価もちらほらと出てはきている、もっとも剣は人間以外の生き物を殺傷するのにあまり向いてないし、困ったちゃんゆえに悪い意味で少し有名なもんだから、今でも嘲笑い……いや、いじりに来る連中もいる。
「お前何マジになってんの?」
「あまり俺を怒らせないほうがいいぞ」
からかいに来た連中はシオールの発言を嘲笑う。
「ダサっ、いじられてキレるとかダサッ!」
「怒らせるとどうなんるんだよイカれポンチ」
「馬鹿の素でもまき散らすのか?」
「すみませーん、ヒーラーの方はいませんかー? 喧嘩が始まりそうなんですけど」
ローランドも慣れてきて前もってヒーラーを呼ぶ。ヒーラーが白い装束を着ているのは、清潔感だけではなく、こういうときすぐに見つけられるからなのかもしれないとローランドは思う。
シオールのトラブルメイカーっぷりには困惑するものの、お陰でアンジェリカさんと関わる機会が出来るのだから、困惑しつつもちょっと期待もしていて……そしてローランドは遠くからでもアンジェリカかそれ以外かを見分けられるようになった。
「……またあんたたち?」
「すみません……」
最寄りのヒーラーが別人だとちょっとガッカリする、そんな自分を疚しい人間だな……と常々思っている。
シオールはどんどん強くなってゆく、少し前までは喧嘩をする度負けていたのに、今は絶妙な足の運びで相手の攻撃を躱し、カウンターを入れて勝つなんてことも増えてきた、剣の試合しか知らなかった男が、徒手空拳の喧嘩に適応している、曰く「剣だろうと素手だろうと、やることは似たようなもの」とのことらしい。
みんなは馬鹿だと言うけど……案外そうでもないんだろうな、とローランドは思う。
「話にならんな、雑魚ど……もげっ!?」
「オゥラァ! 足元がお留守だぜ!」
「このイカれポンチがぁぁ!!」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね!」
勝ち誇っていたたところ足元を掬われてタコ殴りにされることもあり、やっぱり馬鹿なのかもしれない……と思い直したりもする。
「も、もう決着ついてるんで……これくらいに」
「うるせえぞデカブツがああああ!! 邪魔してんじゃぁねぇええええ!!」
「やっちまえー!」
ギャラリーはこの状況を面白がり、そして始まる底辺与太者名物「殺せ!」コール、そうなればイキがる連中のテンションは上がる。
そして、いつもシオールに振り回されるローランドを見かねた親切な人は「こんなやつと一緒にいても何の得にもならんぞ」と忠告してくれたりもする。
それでも、一緒にいて思うのはそんなに悪い奴じゃないということ。
「俺は攻撃を受ける前に殺るから防具は必要ない」と武具はローランドを優先するし、おなかをすかせていれば「お前はデカいから沢山食わなきゃならんだろう」と言って、食事の代金を少し出してくれたりもする、勝手な性格だけどシオールなりに思いやってくれているのだなと感じているし、過去を訊いてきたりはしないから楽だし、自分の成功を確信している異常な自信と前向きさや、馬鹿にされても長く根に持つことが少ないのは、ある意味大物な気もする……
まぁどんなに馬鹿にされようとも、その場で馬鹿にされた分だけ馬鹿にしかえす子供っぽい性格だし、ナチュラルに人を小馬鹿にしてくるのは問題だが、大抵の場合はさっぱりしているというかしつこく引っ張らないし、いじりという言葉で自身の行為を正当化しないなど、あまり陰湿なところがあまりない。
それと振り回されて大変な反面、引っ張っていってくれるところは自信のないローランドとしてはある種の頼もしさも感じるのだ。
今日も今日とてダンジョンに潜る、シオールはいつも通り自分を曲げたりしないから当然上手く行きそうになかったが……今回は状況が違った、聞き覚えのない生命体の声だ。
「おい、なんだ今の声は?」
「さ、さぁ……」
「強い魔物だな」
「いくぞ」とシオールは駆け出し「ちょ」ローランドは頭を抱える……いつものパターンだったが、これがもし本当に強い魔物だったら命が幾つあっても足りない、と思っていたら……
「あ、あれは……猿?」
なんと、疎林の中で巨大な猿と四人の冒険者が対峙していた。
サブウェポンとして弓矢を持っている者がふたりいるが、鉢合わせしてしまったのだろう、全員槍を構えている。軽鎧と兜でしっかり武装しているあたり、遠くへ足を伸ばす想定だったのが見て取れた。
「ヒトクイヒヒがなんでこんなところにいるんだよ?」
「オ、オレに聞くなよ」
「奴らのコロニーは第九より先だろ?」
四人も突然の強敵の出現に恐怖していたが、猿のほうも敵との遭遇に驚き戸惑っていいた。
ヒトクイヒヒの名前の通り狒々の魔物であるが別に人間を好んで食うわけではなく単にそう名付けられただけだ、そいつは2.5m程度、ここまでデカい個体はそうそういるものではないだろう。
奴は一頭だった、本来は少数の雄と多数の雌と子供で構成される数十頭の群れで行動するが、抗争で敗れ追放の憂き目に遭いここまで流れてきたのだ。
彼はいわゆるアルファ雄だったが、雌や子供にも不機嫌な態度で支配する暴君、いうなれば人望がなかっためNo2に倒されたのだ。本来ならば圧勝できた相手だが、No3も敵に回ったこと、そして休息を邪魔するなどといった下位の雄たちの草の根支援により消耗し打倒された。
猿の社会においても案外人望は重要で、強いだけの雄が君臨できるとは限らないという現実がある。
ヒトクイヒヒ雑食で狩りも行うかなり危険な生物ではあるが、人間の領域に近づくことはリスクが大きいため積極的に近づいたりはしない、だが彼は手負いだった。
こんなとき命をつないでくれる筈の植物の根や虫も少なかったのだろう、その原因が人間の活動にあることなど彼は知るよしもない。
人間は執念深く獰猛、残忍で狡猾、敵に回すと非常に厄介だというが、一方奴らはひ弱でのろまなのだ……万全ではない今でも狩れる。
しかもここにいる人間は男だけ、女は火を噴いたり凍り付かせてきたりしてくるが、それが出来る男を見たことがない……四匹くらいならなんとかできそうだと、ヒヒは判断した。
「怯むな……前殺った奴よりずっとデカいが手負いだ、囲め」
「応」
人間たちは武器を構えて囲もうと動いだが、ヒヒが僅かに隙をみせた一人に飛びかり兜の横から殴りつける。
「うわあああ!! バーレイ!」
バーレイは兜をかぶっていたが、殴りつけた衝撃で目が飛び出し首がかなり伸びた、痙攣しているが当然即死だ。
狩った獲物を持って退散するつもりだったが……
「ば、バーレイ……くそっ」
「こ、このままじゃ……」
「せ、背を見せるな! やるしかない……!」
冒険者達は怯えつつも引かず、狒々を囲む。
本来ならば視線を逸らさず後退するべき場面、だが仇を討ちたいという気持ちもあり、冷静な判断が出来なくなっていたのだろう、そして彼らは戦い慣れもしていたから戦って生き延びるという選択をしてしまったのだ。
ヒヒから見たら意味不明だった、撤退すればいいものをこちらに挑んでくる……コイツらは死を恐れない、悪魔の異常性を垣間見て恐怖する、だが同時にコイツらは一撃で殺れる、やはりのろまな獲物なのだという確信も芽生えていた。
デカい猿と、三人の冒険者……いや四人、一人は猿の傍らで死んでいる。
駆けつけてきたシオールの胸は高鳴った、ついにこの剣で魔物を討伐できるのだ……息を整える。
その間に「バーレイの仇!」と叫んだもう一人の冒険者の顔面も叩き潰され首も有り得ない方向に曲がってしまったが、猿にも槍が刺さり金切り声をあげる、そして怒り狂った腕で引き抜き投げた槍が一人の冒険者の太腿に刺さると、また悲鳴が響き渡った。
ローランドはその凄惨な光景に言葉を失った。
「行くぞ」
シオールは向かってゆくが、すべきことはまず救援を求めることではないか?
戦場においてもっとも損害が出るのは撤退時である、背を向けて敗走する相手を追撃したくなるのは人間も動物もかわりはない、逃げようとしたもう一人は後ろから鎧ごと体を潰され体の穴という穴から色々なものがまろび出た状態で痙攣している、太腿を負傷し生き残った最後の一人は、座り込みなんとか槍を持っていたが、すくんで動けない。
「おい猿」
そこに人間がもう一匹現れた。
狩猟中の興奮の中、人間など恐るるに足らずという慢心が彼の心中を支配していたが、この異様な相手と相対した時、人間に対する最初の恐怖が何故か蘇ってきた……さっきの連中よりも体も小さく、エモノが短いというのに何か異様なものを感じるのだ。
こいつからは逃げられない気がした、そしてさっきまで忘れていた痛みと不安が頭をもたげてくる。
間に合ってくれ……
少し離れたところで巨大な猿と対峙するシオール、ローランドは救難信号用の発煙筒を灯す。
最初はシオールが劣勢だった、攻撃を受ければ即死、間合いにも入れない、だがその攻撃をかわし続ける、十六.七の少年の反射神経に天才的な戦闘のセンス。
喧嘩に慣れてなけりゃ危なかったかもな
人間は他の動物と比較して圧倒的に持久力があり長期戦に向いている、一方猿は疲弊し傷ついた部位を庇っている、そこに隙を見いだし頸動脈を切断すると猿は悲鳴を上げ絶命した。
救難信号を見てやってきたパーティは、グレイヴを持った女、魔術師、刺股を持った男、柄を長くしただけの伐採斧を持った男、それにアンジェリカもいた。
「君がやったの?」
「ああ、期待外れだったがね」
グレイヴの女の問いにシオールはドヤ顔で応える。
負傷していた個体は身体能力は落ちているが、凶暴化していてより厄介な存在となっているのだが、大きな猿猴の長い腕をかいくぐり、剣で頸動脈を切断したというは間違いなさそうだった。
剣という武器は場所を選ばず取り回しが良いという長所があるが、飽くまで対人用の武器であって、人ならざるものを殺傷するのにはあまり向いていない。
そのため冒険者において剣士であってもポールウェポンがメイン、剣はサブウェポンとすることが多い、だがシオールは孤剣あるのみだった。
唯一の生存者の治療を終えたアンジェリカにシオールは言った。
「アンジェリカって言ったな、あんたフリーなんだろ? 俺のパーティにスカウトしたいんだが」
アンジェリカは少し考えて了承する、ローランドは喜びを隠しきれず「本当ですか! 助かります!」と目を輝かせ、シオールは実力を見せつけたんだから当然だと思っているようだ。
ただ同行していたパーティは「ええーっ」「これからはアンジェリカに頼めないの?」と困惑し気味だった。
「この子たち、誰かが見てなかったら、色々と大変な事になりそうだし」
その言葉に同行していた四人は「確かに……」と納得する、この二人はイカれた貴族の馬鹿ボンと振り回されてオロオロしているデカブツのあたおかウスノロコンビとして有名だったからだ。
「ただし今引き受けてるお仕事全部消化し終わったらね……それまでは危ないことしないこと、わかった?」
「はい!」とローランドはとても嬉しそうに返事をし「ああわかった」と信用ならない返事するシオール、今回の件が彼にとって危ないことに含まれていないのは間違いなかった。
今回の一件による周囲のシオールに対する評価は「漁夫の利を狙ったんだろ」「そもそも猿が死にかけていた」など、普段の行いもあって過小評価される結果となったが「脳味噌の代わりに馬糞が詰まってそうな奴だが、剣の腕だけは本物だ」など、それなりに正当な評価を下す者もなかったわけではない。
受注していたヒーラーの仕事を終えアンジェリカが加わったことで、ついに雷火の覇剣が本格始動する。
「あの、よろしくお願いします、アンジェリカさん……」
「アンジェリカでいいわ、パーティ内では女が優位に立ってはいけない、って妙な空気が冒険者にはあるのよ」
「そ、そうなんですか……」
「魔法使いって絶対数が少ないから選ぶ側なんだけど、パーティに入ったら男性優位じゃないとこのパーティの男達は腑抜けだって馬鹿にされたりするから」
面倒だけど波風立ててもしょうがないからと、アンジェリカは言う。
貴重なフリーのヒーラーが専属になったことに困惑するパーティも多かったが、アンジェリカが馬鹿とウスノロを仕切ってるお陰で、迷惑行為が減ったと喜ぶ声もあった。だからアンジェリカが面倒を見てるパーティと皆が認識している。




