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ローランドとシオールの巻

 ストロマンテが18才になるころには2m近くなり顔立ちも母より父に似てきて複雑な気持ちになる。

 ただ性格は相変わらずだし、要領が悪くよく叱られる、それを引きずらないくらいには老騎士とは信頼関係も築けていたし、以前よりは心身共に強くなっていたのだろう。

 ただ老騎士ローランドになかなか勝利でなかった、老騎士の技は鋭く、動きに無駄がないのは確かだが、それ以上に痩せた老人に本気で挑むわけにはいかなかったからだ。老人は衰え、若者は成長してゆく……初めて勝利したとき老騎士はとても喜んだが、ストロマンテはすっかり小さくなった養父に改めに気づき、少し淋しい気持ちになった。


 19才でストロマンテは騎士に叙任される、騎士が弟子である従騎士を叙任できたのは過去の話で、今はもう平民が簡単に騎士になれる時代ではなかったが、騎士の中の騎士と謳われる老騎士ローランドの人徳がそれを許したのだろう。


 ストロマンテは養父同様領主に仕えることとなったが、彼は口下手で世渡りも苦手だし、人を傷つけることが怖いとあっては馬上槍試合(トーナメント)でも負けてばかりであるから、でくの坊だの見かけ倒しという評価を下される。

 また、女性に対してはさらに不器用であったから気の利いたこともいえない、そのあたりも評価を下げる一因となっている。


 騎士の中の騎士ローランドの名を汚してしまった気がしていたたまれない……自分は養父のようにはなれそうにない。


「すまない……お前に世渡りを教えてやることができれば」


 そう詫びられストロマンテは悲しくなった。

 自分が至らぬせいもあるが、老騎士を騎士の中の騎士と世間は賛美していたのに、それを手本にすると、世間は何かズレた人間と見做すのは結構堪える。


「自分の騎士道が板についていない不格好なものであるからで……」


 誰だって最初から上手く出来る筈がないのに上手く出来ないことで笑われるのは辛い、それを表に出さず堪えるのが騎士道であろうこともわかってはいるのだが。


「……その理想自体が間違っているとは思えません」

「理想と現実はしばしば齟齬を起こすものであるし、時代は移り変わるのだ、お前にはもっと広い世界を見せてやるべきだったのだろう」


 今は亡き親友も似たようなことを言っていたことを思い出す。


「お前に相応しい場所を見つける力を育ててやれなかったことが本当に悔やまれる」


 ネペタは言った「この街だけがお前の世界ではない、どこかでお前を待っている奴もいる」と、多分今がその時なのだ……それにしても独りで試練に立ち向かい、やり遂げなければならないとは、まるで物語の中の美化された騎士である。


「自分は……旅に出たいと思います」


 ネペタ……

 ぼくは覚悟を決められるほどカッコよくないし、本当は迷ってる、傍に君がいてくれないのも不安だけど……


「どこかで誰かが自分を必要としているかもしれません」


 助けてくれなんて弱音は吐かないよう努力する、歯を食いしばって頑張ってみるよ……だから遠くでキャットニップでも囓りながら見ていてくれ


「遍歴の騎士か……」老騎士は渋い顔をする。


「冒険は……亡き友との約束でもあります」

「そうだったな……お前はまだ若い、様々なことに挑戦して失敗し、恥をかき、時に頭を下げて誰かに教えを請う……そんな経験をするのも良いだろう、だが遍歴の騎士が如何なる者かお前も知っていよう」


 その多くは物語で描かれるような騎士道とは縁遠い破落戸(ごろつき)で、殆どが底辺与太者と蔑まれる冒険者に身をやつしている。

 老騎士も若い頃は血の気も多い遍歴騎士だったが、その時はそれで名を上げられる時代だったし、弱い者イジメが嫌いだったからいつの間に現在のような評価になっただけで、騎士道精神を体現しているというのはただの買いかぶりだという。


「騎士道など所詮絵空事、その虚像を乞われたから演じただけのこと」

「演じていたとしても、貫き通せば本物だと、仰ったではありませんか」

「そうだな……ではお前だけには話そう……ニンファエアレス伯の奥方は私の娘、かもしれない」


 唐突な告白であったが、老騎士が彼に色恋の話をしたのはこれが初めてだった。

 ニンファエアレス伯の奥方とは現領主の姉にあたる人物……つまり、若き日の老騎士は仕えていた主君の奥方と不倫関係にあったということである。


「実際の私は騎士として貫くべき忠義に背いていたというわけだな」

「……父上がずっと独り身であったのは」

「機会がなかった、ただそれだけだよ」


 騎士道物語ではしばしば主君の奥方という手の届かない相手に愛と忠誠を誓うのが定番である、お互い惹かれあいながらも一線は越えない……物語ならば。


「騎士を演じてきたのは、忠義に背いた後ろめたさもあろうが、結局はただの意地である。窮屈で損ばかりしてきたが、もしこれを手放していたならば、私は何も出来なくなっていただろうという恐れもあった」


 損な性分であると、老騎士は笑う。


「お前は虚像に縛られず思い通りに生きるのだ、私のように引っ込みがつかなくなって窮屈な思いをしてほしくはない」


 しかし、何の得にならずとも自らに課したルールに従いやせ我慢、それが漢の華である、そんな養父の如くあるべくストロマンテは遍歴騎士ローランドとなった。


 神よ、我に万難を与え給え!


 と旅立った当初は意気込んでいたが、人付き合いも世渡りも下手、それらの克服も含め、一人前の男となるべく武者修行の旅に出たが……老騎士だけではない、屋敷の召使や領地の農民など……自分が如何に周囲の人々によって守られていたかを実感する。

 自身の社会性のなさに途方に暮れていたところ、断り切れず奢ってしまった酔っぱらいに「ゆく当てがないならドミナスに行って冒険者でもやったらどうですか」と、薦められた。


「ドミナス……」

「しらない? ダンジョンの前の街ですよ」

「名前くらいは……」


 ダンジョン……ネペタもよく話していた摩訶不思議な土地。酔っぱらいは朝にここを出て駅馬車でナモナキ村に向かい、急行に乗り換えれば、多分半日くらいで? いや一日あれば着く? とあいまいなことを言っていた。


 ナモナキ村はドミナスへの通り道にあり、元冒険者の魔法使いがいろいろと人を呼んで発展させているらしい。

 新しい加速魔法を用いた急行が格安だったのもよかったが、乗り心地はよいものではなく、着いた頃には一緒に乗っていたガラの悪そうな連中も文句を言う元気もなさそうなほどぐったりしており、加速魔法を使う魔法使いも「まだ改善の余地ありですね」など御者と話していたが、思っていた以上に早くドミナスについた。

 かくして、彼も底辺与太者と言われる冒険者となったのであった。


 ダンジョンの再発見により急ピッチで出来上がったドミナスは、都市計画も行き当たりばったりで歪、そして底辺与太者が屯するまさに人間達の吹きだまりであった。


 ローランドは2mを超える巨漢であるから、冒険者たちは彼をナメたりはせず、パーティに誘ってくれる者もいたが、どうにもガラが悪く騎士道なんて言おうものなら腹を抱えて笑いそうな連中ばかり。

 そして、冒険者にしばしばみられる仲間内で順位の低いものを小馬鹿にするいじりという行為……あれは見ていていい気分ではないし、本人たちとしては面白いつもりなのだろう、何度も同じネタをこすって笑いものにするのがいじりの基本スタイルである、騎士道はそのターゲットにされそうな気がしてならない。


 そして、誰も冒険者として必要なことは教えてくれない。ギルドに登録はしてみたが元々口下手な上にあまりにも解らないことだらけで何を質問したらいいのかがまずわからないのだ。


 ネペタが傍にいてくれたら……なんて情けないことを考えそうになる。


 とりあえず、荷物運びや土木作業など冒険とは関係ない日雇い仕事で糊口を凌ぐことはできたが、おれは何をしているんだろう……という気持ちにもなった。


 ドミナスやダンジョンに関する仕事だけではなく、少し遠くにある街道の山賊退治なんて依頼もあった、なんで冒険者ギルドにそんな依頼が来るのだろうとも思うが、冒険者は定職につかず一攫千金を夢見てダンジョンに潜る輩であり、気軽に使える労働者という側面があるのだからしかたがないのだろう。


 ある日のことある。

 16.7歳くらいの身なりの良い少年がスキンヘッド、モヒカン、逆モヒカンで鋲付きのレザーアーマーを着た三人の男から暴行を受けている場面に出くわした。


「ったく、ナメた口利いてんじゃねえぞ、コラ」

「おれっちもお坊ちゃまの心ない言葉に傷ついちゃったからなぁ~平民にだって心をあるんだぜぇ? あー心が痛ぇよぉ」


 詳しい状況は不明だが、ナメた口を訊いたからボコしたという状況なのはわかる、少年の顔は腫れ上がり、本来どんな顔だったのかもわからなくなっていた。


「ヘイヘイヘイヘイ」少年の髪の毛を掴みつつ逆モヒカンの男は言う「いいか? 神の前では皆平等なんだ」


 冒険者に身をやつす羽目になった貴族の子息はしばしば執拗にあおられ暴力を受ける。冒険者のほとんどは社会的下層の者たち、本来ならば絶対に敵わないであろう貴族に暴力で勝利することはすなわち、冒険者の大好きな下剋上の気分を手軽に味わえる素晴らしい娯楽なのだ。


「ザコは貴族だろうと平等にクズ、わかったか? お坊ちゃま」


「この剣やべえ~」スキンヘッドが抜き身の剣でぺしぺしと少年の頬を軽く叩く「慰謝料として貰っていいよね?」


 集団暴行を受けて死んだ友の姿と重なり怒りがこみ上げてくるが、ローランドは殴りつけたい気持ちを抑え止めに入る、三人のならず者は大男の登場に驚きつつも、一歩も引く様子はない。


「おいおいおいおい、何を誤解してんだ? 教育してやってんの、わかんだろ? 貴族の馬鹿ボンは殴って躾けてやらねえと」

「寧ろこっちは被害者なんだよなぁ~、心ない一言でおれっちの心は深く傷ついちゃったの、おろろろーん心がいてえよー」

「てなわけで慰謝料請求しないと、今な授業料と迷惑料と治療費もコミで剣一振り! わーお、お得感パネェ~」

「つうわけでよ、でっかいニィさん、俺らの問題は俺らで解決するから首突っ込むなや」


 どうしたらいいのだろう? 少なくとも話合いが通じる相手ではないことはわかるのだが。


「り、理由があれば何をしても許されるわけではない」

「じゃあどんな理由か知らんけどさぁ、こっちの話に首突っ込まないでくれる? 何をしても許されるわけじゃないんでしょ?」

「し……しかし」


 ど……どうしよう、け……決闘を申し込むしかないのか? でも、決闘ってどうやって申し込むんだっけ?


「袋叩きは……卑怯だし、その……ここまで痛めつけるのは」


 おろおろしているデカブツを見て三人は思う。


 ひょっとして……コイツ、見かけ倒しなのでは?


 ……となれば、やることは決まっている。貴族の子息たちだけではない、見るからに強そうだが実は見かけ倒しとみられた時も下剋上の対象となる、自分よりも格上と見える相手を自分より下におくのは最高に気持ちがいい、それが冒険者マインドだ。


「あれぇ、もしかしておニィさん、喧嘩売ってる? ヤバっ怖っ」

「やべえよやべえよ、でも……引けないよなぁー」

「だよな、売られた喧嘩は買わないわけにはいかねぇよなぁ、男として」


 少年を庇うローランドは殴る蹴るの暴行を受けた、痛いがそれ自体は大した問題ではない、敵意、嘲り、嗜虐……負の感情が向けられる、それが何より辛い。イジメの痛みは体よりも心の痛みなのだ、体がすくんで声が出ない、震えも止まらない。


「やべえ! こいつやっぱ見かけ倒しだわ!」

「お前が悪いんだぜ、しゃしゃンなきゃ、俺らだってこんなことしやしねえのによォ」

「迷惑料、迷惑料っと……え、ヤバッ、お前の手持ち少なすぎ!?」


 ローランドは恐怖を振り払い、なんとかモヒカンの腕を掴む。

 すでに格下とみなしている相手に抵抗されることほど、腹立たしいものはない。


「あ?」


「……返してくれ」という声は情けないのに、財布は恐るべき力で奪い返された……格下というのは思い込みだった? モヒカンは青ざめる。


「えっ? いや……でも、迷惑料が」

「おれにも生活があるんだ……頼む、返してくれ」


「てめぇチョーシクレてんじゃねぇーっ!」モヒカンを助けんがため掴みかかろうとする二人を全力で振り払うと、裏拳が綺麗に入ったらしく歯を折りつつ昏倒、ローランドは狼狽えてモヒカンから手を放したが、あちらは腰を抜かしている。


「あ……」


 ローランドはやってしまったことに戸惑いつつ「お、おい……ヤバイ! ヤバイ! ヤバイィ!!」と泣きそうなモヒカンを掴み尋ねる。


「ど、どうしよう……」

「え……ああ……ああ……と、とりあえずヒーラーを探さないと……」


 ローランドは「誰かー! ヒーラーの方はいませんかー!」と叫びながら走る、幸いヒーラーはすぐに見つかり、少年とならず者は治療された。

 さっきまでは酷い状況だったが、本来の少年の顔立ちはなかなか端正だった。


「フヒヒヒ、アンジェリカ先生、いつもサーセン」

「ヒーラーの姐さん方がいなかったらおれっちたち五回は死んでますわ」


 奇妙な光景だった、あれだけ粋がっていたならず者たちだったが、優しそうな眼鏡のヒーラーに対しては下手に出ているのだ、だが少年は尊大だった。


「油断したよ、剣を使えばあんな奴らに負けやしないんだがな」


「ほらね、コイツヤバいんっすよ」「こんなの治さない方が世界平和のためですって」と、ならず者達はやんややんやと騒ぎ立てる。

 ローランドも開口一番殺意の高い一言に困惑するが、ヒーラーは「あのね新人さん、喧嘩で武器や殺傷力の高い魔法は禁止なのよ」と冷静に対応する。


「あんた……何故、コイツらまで助けた?」

「このガキャ、また殴られてぇのか?」


「まま、落ち着けって」逆モヒカンがスキンヘッドを制止する。


「慢性的なヒーラー不足だし、乞われたら特に事情がない限りは怪我を治すべき、それがヒーラーってものでしょう?」

「強制されているのか?」

「強制はされてないけど、ほっとくは後味悪いでしょ」


 危険の多い冒険者業界においてただでさえ少ないヒーラーに見捨てらた者は仕事を続けてゆく上で大きな不安を抱えることになることは間違いない。


「強制されてないなら無視すべきだろ、なんの利益がある?」


 ヒーラーは呆れていたし、ローランドもそれは自分にも返ってくるのでは? 思った。


「ほらね、マジムカつくっしょ? ちゃんとわからせるのが優しさじゃないっすか」

「俺がヒーラーなら絶対放置だな、こんな糞野郎」

「なんでこんなことになったか一応聞かせてもらえる?」


 モヒカンが言うには、新顔が貴族のガキだったからちょっとからかってみただけなのに、このガキは「平民風情が」とか抜かして剣を抜こうとしてアブなかったから、ちょっとボコしてわからせてやったとのことらしい。

 まずはからかい、行動や発言内容に関して因縁をつけて暴力を振るいわからせる、世間知らずな貴族の子息への黄金パターンとでも呼ぶべき対応だ。


「まー俺らもちょっと弄り過ぎたトコあるけどさ、冒険者やってりゃこれくらい普通っしょ? 剣を抜くとかヤバイって」

「なら貴族の俺が平民如きを見下しても普通ってことでいいよな」


 これは売り言葉に買い言葉の結果で本心からじゃない……よな?


 ローランドは困惑した、内心どう思ってようと、あからさまに平民を馬鹿にすることはリスクが大きい。そもそも領民がいなければ貴族は生活できないということがわかっていないのだろうかと。


 わかってなさそうなヤンガーサンは大体事故死するのか……


「まーたこのガキャぁ」スキンヘッドは少し大げさに呆れてみせる「ほらね? ヤバいくらい人見下してンすよ、どういう教育受けてきたンすかね?」


「パパとママからの愛情が足りてなかったんじゃね?」「きょーだいからも見下されてたり?」その言葉にぴくりと反応したのを見て三人は大笑いする。


「生まれ育ちを馬鹿にされたって怒ってたあなたたちがそういうことを言うの?」


 ヒーラーの声は静かだったが強い怒りがあり三人は謝罪する、それでも少年には「お前には謝ってねーからな!」と付け加えたが。


「確かに……彼の発言には問題あるけど、喧嘩をふっかけたのはあなたたちだし、集団で暴行加えていいわけがないでしょう」

「先輩としてマナーを教えてやっただけなんっすよ、こんなヤバい馬鹿、俺らが教育してやらなきゃ、明後日にでも水路に浮いてますって」

「そーそー、平民を見下す発言とか糞だし、喧嘩で表道具使うとかマジヤバいわー」

「お前達は剣が怖いのか?」


 反射的にスキンヘッドは少年を殴り倒した。


「あーもうっ、そうやってすぐに手だす……剣士さんもいちいち逆撫でするようなことは言わないの!」

「今のは殴れって言ってんのと同じっすわ」

「へぇ……お前らやっぱり頭が悪いんだな」

「んだとゴラァア!」

「あーっもう! やめなさいってば……なんでいちいち喧嘩を売るの……」

「……俺は誰にも媚びないし、言うべきことは言う主義だ」


 こんな目にあっても言わなくて良いことを言うべきことと言い出したことにヒーラーは言葉も出ないほど呆れているようだった。

 あくまでも無礼な態度をとり続ける少年、この自分の立場をわかっていない、ある意味ブレない様子にローランドは、呆れを通り越して感心すら覚えた。


「集団暴行も人の神経をいちいち逆撫でする無礼な態度もやめてちょうだい……私は人を治すのが生業だけど、度が過ぎる人はねぇ……」

「サーセン! 今度から気ィつけます!」

「それじゃぁ」

「ありゃっしたー!」


 ならず者三人は愛想笑いをしつつ去っていった。


「あんまり喧嘩は売らないこと、それから買うのも駄目よ、あんまりしつこいようならギルドに相談して」


 ローランドは人見知りだし女性相手であるからかなり緊張するが、ガラの悪い冒険者たちとは違い理知的で温厚そうだ、わからないことを訊けそうな相手は彼女しかいない、やっと縋れそうな相手に出会ったのだ。


「あ、あの……自分たちはこれから、どうしたら……」


 自分が一体何がわからないのかすらわからないということから始まり、一つ一つ彼女と話していると自分が何がわからなかったのかわかるようになってくる、そこを懇切丁寧に教えてくれ、その上でギルドの職員にも新人さんだからと色々と頼んでくれている。


「受けられる依頼ってこんなのしかないのか? 俺は魔物の討伐がしたいんだが」

「そんな仕事滅多にないし、新人冒険者ふたりに危険な仕事をやらせるほど私らも無法じゃないんですよ」


 ギルド職員は呆れている。

 おれはこの少年の仲間ってことになってるのか……とローランドは思った、仲間ができるのは嬉しいが、色々と厄介な人物である。


「なんだよ薬草採りって、花を摘むとか女子供のすることだろ」


 パッとしない仕事はしたくない若い冒険者にありがちな反応らしく、職員はスルーする。


「他のパーティの助っ人として参加して、経験を積んだり顔見知りを増やしておくのもいいかもしれませんね、このアンジェリカはさすらいのヒーラーで食べてるくらいだし」

「それはヒーラーが少ないから成り立っているだけで……」




 色々と相談に乗ってくれた上にあれこれ必要な手続きまで手伝ってくれ、冒険者に必要なことをリストアップしたメモと、救難信号用の発煙筒や行動食などを少し分けてくた。


 女神だ……


 この心細い状況で優しくしてくれた女性というだけでローランドはちょっと好きになりそうだった。


「ヒーラーの装束の上からでもわかる胸も尻のデカさ」去って行く後ろ姿を見て少年は言った「だが、地味だし年も結構上だろうな、俺ならもっと上のランクを狙う」 


「えっ?」急に何を言い出すんだ? とは思ったが、ローランドも男、そう言われるとそこもとても気になる。

 ヒーラーに限らず冒険者の女性はリスクを避ける為、たいていの場合肌の露出は少ないし、体のラインも隠れる服装をしているが、動きの中で垣間見える瞬間はある、それを口にすれば気持ち悪いと非難されるが。


「おい、どうせお前も独りなんだろ? 俺と組まないか?」


 このような流れで、雷火の覇剣が結成された、命名者がシオールなのは言うまでもない。

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