15
なんだかんだと私と五橋の出会いが判明し、五橋は10年くらい片想いしてたんだなってしみじみ言ってるけど、すごいな最初は名前も知らなかったのに。
今もまた画像を見て、ニヤニヤと・・・あ、なんかきもい。
10代の頃の私の画像なんだが、いまだったらロリだろ、犯罪だろ。
これは確認せねばなるまいて。
「五橋君よ、10代が好きか?」
最初はキョトンとしてたけど、質問の意味がわかったらしく、五橋の目がすぅって細くなって、目は口ほどに物を言うって本当だ。同時に私の背筋にも冷たいものがつぅって流れ落ちたんだが。
「は? なに言ってんだ。10代だった頃の画像しかないから見てただけだ。まぁこれからガンガン撮ってくけど」
「そうか、10代にしか興味ない人種もいると聞くし、念のため確認したまでだ。忘れてくれ」
見るからに、がっくりと肩を落としてる。
「あのなぁ、俺は咲夜が好きなだけだ。再会した時も、再再会した時も全然気持ちはぶれなかったんだ。やっぱ好きだなって思ったのを再確認しただけだった」
そんな恥ずかしげもなく好き好きと声に出すなんて。
こっちが恥ずかしくなるじゃないか。
「なぁ咲夜、また、俺に着物を着せてくれないか。あの時の着物、まだ持ってるんだ。そんで一緒に散歩したい」
おお、いいな。
そぞろ歩きで散歩、きっと楽しいと思う。御徒日記でも書けるくらい歩きたいな。
「わかった。いつでも」
派手なことはしなくていいけど、日常の、ちょっとしたことを共有できるのってなんか胸が弾む。
「谷中あたりをゆったり歩くのもいいかもなー」
「うん。いいねいいね。釜竹のうどんも、愛玉子も、ふわっふわのかき氷もつけておくれよ」
大好きなんだ愛玉子。はぁぁぁぁぁ。楽しみだなぁ。わくわくする。
きっと楽しいだろうな。
「色気より食い気か」って笑う五橋がなんとなく眩しく見える。
五橋と一緒に歩く姿が自然と思い浮かぶんだが、もしかして
「私は五橋のこと、好きってことなのか?」
一緒に歩いている姿を自然と思い描けた時、その一緒に歩いていた五橋がいなくなったら?
考え過ぎかもしれないが、死に別れたらこんな気持ちになるんだろうか。ぬぐいきれない不安感がふつふつと湧いてくる感じで嫌な気持ちになる。
「うん、嫌だ」
「さっきから浮いたり沈んだりしているようですが、結論は出ましたか」
どうやら思考にどっぷり沈んでいたらしく、五橋の笑いを含んだ声が聞こえて来てようやく我にかえった。
「ん? なんのこと?」
「声。出てたぞ。俺のことが好きって言ったり、嫌だって言ったり」
ええええええええ。
ちょっ、ちょっと待って。無かったことにしてくれ。五橋の意識を落としちゃえばゼロになるのか?
「かわいいな咲夜は。もしかして好きって感情、初めてなのか? 初恋、とか?」
初恋!?
初恋って
「うえええええええ!? わ、私が五橋を好きな場合、五橋が私の初恋の相手になるのか!!!」
本人に確認してしまうくらい動揺したじゃないか。
忘れてた。
恋愛経験ゼロだったてことを。学生の頃にはちぃっともなかった感情だ。
このモヤモヤな気持ちが異性を好きになると言うことか?
「ちょっと、待って・・・本当に?」
ちょっと混乱。知らなかった感情に名前が付いてしまったってのがハッキリしてしまった。これは・・・腹を、括るしかない、か。
ん? 五橋の手が私の頬を包んでいるが、、、恥ずかしすぎる。
「咲夜はさ、認めたくないかもしれないけど、すでに咲夜の心の中に俺が住んでるんだよ。だから俺らは両想いってわけだ。俺は咲夜とずっと一緒に居たいし。それこそ死ぬ時まで一緒にいたい。もうね、誰にも見られないように閉じ込めておきたいって思うし、大事にしたいし、子どもだって欲しいし。俺、頑張るから」
おでこくっつけられてもなぁ・・・
ってか、今、なんて言った?
さらっと言ってたけどサイコか!? サイコパスなのか!?
せっかくなんかいい感じに聞こえてたんだけど、一瞬で素に戻ったぞ。でも、まぁ、まだ矯正の余地はありそうだけどな。ちゃんと向き合って危険思想は排除する。
けど、とりあえずこの状態からは離れたいぞ。
お、押しのけたら簡単に離れてくれた。けど、そんなに見るなよなー。
「・・・頑張らなくてもいい。頑張る時は一緒に頑張るので、一人で頑張るのは無しで。誰か一人だけ頑張るのはいいチームとは言えない」
「あははは、そうだな。一緒にがんばろうか」
楽しそうに笑っていた五橋の表情が、ふと、引き締まったように見え、こちらも自ずと身構えてしまった。
「ということで咲夜、俺のお嫁さんになってくれる?」
「あのーちょっと質問なんですが」
「なんでしょうか」
「さっきから、いきなりプロポーズばっかりだけど、お付き合いってやつはしなくていいのか? よくさ『あー彼氏欲しい』って聞くけど、とりあえずおつきあいからってことだろ?」
「なんか違うな。それって結婚はまだしたく無いけど一人は嫌だとかって思ってたりする場合が多々あると思うんだ。俺は咲夜に関すること全てにおいて責任を負いたいって思ってる。だから婚約か結婚したい。『彼氏』なんかより婚約者とか夫って立場がより強いじゃん」
「強い? 何に対してそういう見せ方が必要なんだ?」
「彼氏ってなんて薄っぺらくって、いつ横からかっさらわれるかわかんねーってイメージあるから。ハッキリ言うと、彼氏彼女って言葉より、もっと強いもので咲夜を束縛したいわけ。自己満足だけど、俺のものだから手を出すなって知らしめたいわけ」
「・・・一歩間違えはサイコパスだぞ」
「そうならないように、ちゃんと申し込んでるだろ。俺は理性の塊だと思ってる。名前も知らないお前を10年近くも想ってたんだし、俺って偉い」
ふふんってこういうのをドヤ顔っていうんだろうな。
「なー、質問。10年も彼女作らなかったって言ってたけど、遊んだりはしたんだろ?」
「んー、お前の質問の意図は、なんとなくわかるけど、あえて回答しない。だってさどうやったって過去には戻れないじゃん。俺、どうしようもないし」
確かに。
「でも咲夜がそういう質問をしたい理由は分からなくは無いよ。
俺だってさ、本当に好きな奴はいなかったのかって問い詰めたいし、それで好きなやつが居たならはっきり言ってムカつくと思うし。どうしようもなくムカつくと思うし、いま考えただけでムカつくし、その男を抹殺したいと思うし。
でもさ過去に遡っても気になるっていうのは、咲夜が俺を好きだって証拠だし、自分のものにしたいって思っている証拠だと思うんだよね。俺の全部を独占したいんだろう? ふふふ」
!!!
「ど、独占!?」
そ、そんなこと、え、え、え、えーーーー!?
「咲夜?」
だめだ、まともに五橋の顔を見ていられない。なんて直球な言葉なんだろう。疑いようのないほどに五橋の言葉が腹のど真ん中にぐいぐい刺さる。
「咲夜、ねぇ咲夜。顔を見せて。まさか顔を覆っているのは泣いてたりしない?」
五橋の心配そうな声に違うって言いたいけど、それには首を振っただけで答える。でもいつまでも両手で顔を覆っているのも子どもっぽいよな。早く顔の熱がひいてくれないだろうか。
「ちょっと、まって。向こう向いてて」
「嫌だ。その間にどっか行っちゃうかもしれないからな」
なかなか信用されてないらしい。っていうか、よくぞ見破ったな。
「顔を上げてくれないなら、こうしててもいいよね」
おわ!?
突如として抱きしめられた。なぜだ!!
「あ、やっと顔を上げたな」
憎たらしいほどに笑みを浮かべた五橋の顔があった。
「何をする」
「ほーんと、こうしてるとやっと捕まえたって実感する。それに、いつも思ってるけど、本当に綺麗だ。こんな状況でキスしないなんておかしいよな、キスしていい?」
「ダメだ! とう様にお話だけって約束してただろ、、ん」
「ハードルは飛び越えていくものだ。あはは」
キスしていいって聞いたから、NOって言ったのに、五橋め。
「あはははは、そんな顔してももうね、全然怖くないし。ほんと、明日結納したいくらいだよ」
こと、この恋愛感情においてはまだコントロールする術を持たない私はいいように五橋の掌の上で転がされているけど、いつか耐性がついた時には立場が逆転するように頑張るんだからな。




