第14部 因縁の二人
一回戦は激戦の末、ミカエラが勝利し、会場を盛り上がらせた。
お互いの技がぶつかり合い、試合の中でお互いを高め合って成長する。
まさにスポーツの試合を観ているようであった。
そう、この世界の卓球は単なるスポーツではない。
お互いに命を懸け合えば殺すことだって造作もないのだ。
むしろ、死んだ方がマシだと思える世界とも思えるかもしれない。
その一打一打に、自分の大切なものがかかっている。
それもまた異世界卓球の顔の一つ。
そんな卓球をどう見ているか、卓球は自分にとって何か。
考えは様々だが、ここで二人の男を例として。
一人は若き王。
若い年齢でありながら王位を次ぎ、強大な権力を持ち、一つの大陸を支配下に置いた。
その象徴は彼の右手にある大剣。
時には民の想いを背負い、時には王家の血筋としてのプライドを背負って戦う。
だが剣の力を制御することは困難であった。
やがてその力は彼の人格をも飲み込み、全く別の人格を確立させた。
王はやがて皇帝となり、卓球を戦争の道具のように使って大陸を支配した。
そして今、彼は世界をも支配しようとしていた。
「セパン。タオルをくれ」
試合が盛り上がる中、静かなトレーニングルームでひたすらに剣を振り続ける王が一人。
「次はカイザー様の試合ですぞ」
「分かっている」
側近のセパンがタオルを取り、駆け付けると、彼はとんでもない姿を見てしまった。
「か、カイザー様!いくらなんでもサポーターをつけすぎじゃないですか!?」
カイザーの腕や足には数十キロクラスのサポーター。それをつけながら、あの魔剣グラムを振っていたのだ。
「ユキムラサツキは一度とはいえカイザーブレイクを破った。それが偶然であればよいのだが、ヤツの成長性は凄まじい。いつ追いつかれるかも分からん。だから、一秒も油断できんのだ」
総重量が400キロを超えるサポーターを外し、魔剣を地面に突き刺した。
「初戦は…アスタロトか。あのつまらん悪魔か」
「ですが、カイザー様!やつは必殺技の使い手で…」
「フン。関係ない。デビルロンギヌスは既に対策している」
タオルで汗を拭くと、セパンにタオルを返し剣を引き抜いた。
「その床は治しておけ。次に使う奴の迷惑になるからな」
一人は銀の悪魔。
復讐の炎を滾らせ、魔王軍の幹部に成り上がった。
その象徴は冷酷な眼差し。
彼の生み出すドライブ回転は獲物を仕留める槍の如く。
ただ自分の目的とのために進んできた彼だが、仲間と出会い、戦う意味を取り戻した。
卓球はこの混沌の時代を変えるための希望。それが彼の考えとなったのだ。
「アスタロト、そろそろですわ」
「言われなくても分かってる」
アスタロトはラケットを鞘に納め、立ち上がって入場口へと向かおうとしていた。
「あの技は完成しましたの?」
「…ああ」
「もう、サツキったら、何処に行ってしまいましたの?」
「…フッ。心配しなくても大丈夫だろ」
「でも…」
「俺たちが信頼したたった一人の人間なんだ。きっと戻ってくる」
「アスタロト…」
「じゃあ、行ってくる」
彼が一歩踏み出したとき、天使もまた一歩踏み出した。
「待って、ローラン様には挨拶なさらなくって?」
「…これが最後になるかもしれねえからな」
「…!?」
「んてのは冗談だ。必ずカイザーを破って、お前との決着をつける!」
そう言い残して、アスタロトは入場口へと向かっていった。
「さあ!異世界卓球魔王杯!西ブロック第二回戦は!フローリア王国の帝王、オーディ・カイザー!パーサス!銀の悪魔、アスタロト・ルルビデ!」
因縁の二人がスタジアムに入場し、握手を交わした。
「カイザー!テメエを必ず、ぶっ飛ばす!」
「このカイザーを前に逃げなかったことは褒めてやろう」
「さて、今回もとびっきりのステージを用意したよ!」
魔王がスイッチを押すと、スタジアムが揺れ動き、だんだんとその形態を変えていった。
横幅が大きく広がり中央には通常の20倍ほど巨大な卓球台が現れた。
「あれは?!」
「ほう、巨大な卓球台か。悪いなアスタロト。この勝負、パワーが要となるな」
「フン。俺は秘策を持ってきた。卓球台がデカくなろうが関係ねえよ!」




