第15部 無敵の帝王
「ぐぁぁあああ!」
勢いよく、悪魔がふっとび壁に打たれる。
「その程度か?アスタロト」
「くそっ、まだまだ…」
カイザーvsアスタロト
8 ー 0
サーブ権カイザー
通常の何十倍近く大きい卓球台においては、カイザーが圧倒的に有利だった。
カイザーはこの大会ではNo.1のパワーを誇っている。
その秘訣は、彼が持つ神器「魔剣グラム」の恩恵だ。
魔剣グラムは通常の大剣より少し大きい代わりに全神器の中で最もパワーが高い。
しかし、今のカイザーはこの神器に頼っているだけではない。
その大きさ故の重さや力の制御をするために日々の鍛錬を怠らなかった。
その筋肉は他の種族にも劣らないものであった。
「くっ!台が広すぎる…!」
アスタロトは鋭いドライブ回転の打球を繰り出すが、だんだんと速度を落としていった。
「貴様のパワーでは相手側のコートに入れるだけでも精一杯だろう?」
一方、観戦席では…。
「…運がないですわね」
ミカエラは歯を食いしばって俯いた。
「でもアスタロトさんにはデビルロンギヌスがあるじゃないですか!」
「それはできませんわ」
「どうして?短期決戦を仕掛けた方が…」
「短期決戦を仕掛けたところで力負けしてしまいますわ。それに、アスタロトにはあのパワーを超える技なんてありませんわ」
「そ、そんな!」
「それに、卓球台は巨大な縦長の長方形…。自分コートから相手コートまでの距離が長すぎますの」
「しかも、パワー差を回転で埋めるのは難しいな」
「ジェイドさんまで!」
「でも、秘策がありますわ。わたくしにもわからない、カイザーへの対抗手段が…」
後ろ向きな言葉ばかりだが彼女らはアスタロトを信じている。エルからはそんな風に見えていた。
「アスタロト。何故デビルロンギヌスを封印する?」
「へっ、お前もカイザーブレイク以上の奥の手を使わないくせしてよく言うぜ」
鋭いドライブがエッジに引っかかった。
8ー4
サーブ権カイザー
「…小賢しい。これを狙っていたのか…」
「そんな、地味なもんじゃないぜ」
位置に戻るとアスタロトはサーブを繰り出す。
「…貴様!」
序盤のラリーとは違ってお互いにほぼ互角以上の打球を撃ち合っている。
「ラリーの精度が向上している?!もしかして、アスタロトさん、手加減していたの?」
「いいえ、アスタロトはこの試合の中で成長しているのです。悪魔は天使とは対の存在。信じるというプラスの感情で力を向上させる天使とは逆に悪魔はマイナスの感情で力を向上させるのですわ」
「つまり、自らを逆境に追い込むことでカイザーと同等以上のパワーを手に入れたってことね!」
アスタロトの右腕は闇のオーラに包まれていて、禍々しい。
カイザーがどこに強い打球を振ろうと回り込んで得意のドライブで切り返してくる。
「あの構えは!」
「デビル・ロンギヌス!」
カイザーは剣を構え、防御の体勢を取った。
アスタロトが振り上げると悪魔の槍が放たれた。
「どの方向に来る!?」
打球の進行方向が変わることはなかった。
しかし、軌道は螺旋状に回転していた。
「中心が捉えづらいぞ!」
カイザーは空振りしてしまった。
「カイザーのミスですわ!」
「これは一点貰いましたね!」
「甘いぞ。アスタロト!」
なんとカイザーは空振りした剣を無理矢理振り上げ、そのまま放り投げた。
そして、腰の鞘からラケットを引き抜いた。
「ツイングラディウス!」
9ー4
サーブ権アスタロト
「…!?」
アスタロトから見れば一瞬の出来事であった。
天から帰ってきた剣は地面に突き刺さる。
「俺の弱点は小回りの効きづらいところだ。しかし、些細な弱点なんぞ工夫ひとつでどうにでもなるのだよ」
剣を構えれば大会一のパワー。
剣を捨てれば大会一のスピード。
弱点をどれだけ見抜こうと対策をすぐに練られる。
「それなら死角を見抜くまでだ!」
アスタロトは左右に揺さぶり、カイザーを牽制する。
「…愚策だな。このカイザーに死角など無いわ!」
アスタロトはシュートドライブを繰り出す。
カイザーはそれを着地後すぐに返す。
「回転を打ち消すために大きく振り抜いたせいで隙ができた。いまだ!」
しかし、それに気づいたカイザーは剣を投げ上げ、指を鳴らした。
「集え!我が騎士団よ!カイザーファランクスだ!」
どこからともなく鎧を纏った騎士たちが集まり、巨大なコートを囲む。
アスタロトが繰り出したカーブドライブの先には騎士たちが待ち受けていた。
「こんな数の騎士をいつの間に…!?」
騎士は打球を剣で打ち上げた。
反則極まりないこの行動にアスタロトは唖然としていた。
「天使が龍になるのだから、騎士の軍勢がコートを囲むのも不思議なことではないだろう!」
カイザーは高く上がった打球を撃ち落とした。
10ー4
サーブ権カイザー
「さあ、悪魔よ。俺たちにどう立ち向かう?」




