第13部 竜王卓球
ゲーム数はドランが1ゲーム、ミカエラが2ゲーム先取。
ミカエラが点を取り返している理由。それは、彼女のもつ特殊能力「技能簒奪」を発動し、彼女のありとあらゆる技をコピーしていったからだ。
「ミカエラさんが!」
「ダンスオブドラゴラムに、追いついているヨオ!」
火花を散らす打球をいとも簡単に返球するミカエラ。1ゲーム目のときの焦りと疲れが嘘のように軽やかなステップを踏んでいる。
「あなたの足の動き、返球の位置、打球するときの癖まで、すべて読めていますわ」
ミカエラはダンスオブドラゴラムに追いつきついにはリードを握ってしまった。
「リードしますわよ」
さっきまで軽やかなステップを踏んでいたドランの足がだんだんと減速しやがて一定のテンポを踏むようになった。
(クソ!コイツ、あたしのダンスに追いついただけじゃねえ。あたしが踊らされているっ!)
「…!?テメエまさか?」
「ええ、回復魔法でしてよ?天使のみが使える魔法ですわ」
天使の魔法によって体力を回復した体はまさに試合前どころがそれ以上のコンディションになっていた。
「さて反撃開始ですわ。お覚悟を」
「フン。ミカエラの奴、天使の力をフルに使い始めやがった」
「アスタロトさん!あの状態のミカエラさんって」
「ああ、俺でも勝てねえ。名づけるなら、ジャッジメント・モード」
「…ジャッジメント・モード」
「あーあ。流石のドランもあそこまで追い詰められちゃ、どうしようもないね」
そう笑うジェイドをダイショが小突く。
「姉貴にはヨオ!最後の切り札があるヨオ!絶対に絶対に逆転するんだヨオ!」
そこからの試合は光の如く速い打球が一方的に試合を進めた。
誰がどう見てもドランには一切の逆転の余地はなかった
(姉貴、何故アレを温存するんだヨオ!逆転するなら今しかねえ、だから目覚めてドラン姐!)
「何、踊ってんだ?ダイショ」
「げげげげ!なんでもないヨオ!」
0-9
サーブ権ミカエラ
「くっ、もはやこれまでか…」
「何を言っているのです?あなたはまだ隠された力を持っている。違いますか?」
「……」
私は、ドラゴンという境遇が大嫌いだった。
子供の読む本では勇者を名乗る人間に退治され、神話では厄災扱いされている。
皆からの嫌われ者で自分自身が仲良くなりたいと思っても、自然と他人を傷つけてしまう。
私は…このドラン・ドラミングは…。実は半竜という人間とドラゴンのハーフではなく、元々は火山に住む竜であった。
私がヘビー盗賊団を立ち上げたのは種族差別に脅かされる者たちを救いたかったからだ。
私が住んでいた火山の付近にある町は種族差別による虐殺が行われていた。
主催者は頭の狂った人間貴族。
私は怒り狂い、火山を噴火させ、同法のみを非難させ、街をマグマの海に沈めた。
その頃からは私はこの姿でいることをあまり好まなかった。
竜は大きな力を持っているが故に繊細で孤独なのだ。
凶悪などではない。人間たちがそうさせたのだ。
私がこの大会で優勝したら、世界を支配する竜王となり、種族差別なんてない世界を作る。
それが夢だ。同法が辛い思いをしないように、私のような竜が孤独にならぬように…。
「私は…世界を変えるために、皆が平等になるように!ミカエラ・ジェルエン!お前を討ち、頂点へと成り上がる!」
竜の少女の眼差しはやがて赤い光となり、身を包んだ。それはだんだんと大きくなり本来の姿を露わにした。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「この…オーラは…まさか!?」
「姉貴ー!?」
ドランは巨大な竜に姿を変えた。いや、これこそが彼女の本来の姿なのであった。
「卓球台は壊していないからセーフだ。さあ来い、ミカエラ!」
「竜変幻…いや、あれは間違いなく彼女の本来の姿…」
圧倒的な大きさの竜。ミカエラはフットワークで翻弄しようとしたがそれも叶わなかった。
「あれは?火球を操っている!?」
竜の周りに漂う火の玉。これらは打球を跳ね返す役割を持っているらしい。
それが二、三個ならまだしも無数の火球が浮いているのだ。これでは序盤のように粘られてしまう。
しかし、ミカエラにはまだ策があるようだ。
「まさかアイツ!?」
(貴方が全身全霊を駆けるのであれば、わたくしもそれにお答えしなければなりませんわね)
ミカエラはボールを高く打ちあげた。天高く舞い上がる打球を必死に追いかける火の玉たち。
しかし、飛び上がった頂点は龍の目の前。
「火の玉以上に恐ろしいものを見せてやろう!受けるがいい!」
無回転かつ無造作の打球に竜は容赦なく火炎の息を浴びせる。
それは火球となり流星のように落下していった。
強い竜は爪や翼を見せつけようとしない。なぜなら、その吐息で全て片付くからだ。
だがその炎は仇となってしまう。
「ファイナルジャッジメント!!」
炎に包まれた天使の声が響き渡った。
そしてその炎を切り裂き、金色の天使が姿を現す。
「相手が悪かったですわね。私の得意分野は光魔法ではなく、炎の魔法ですわ」
彼女を襲っていた炎は吸い込まれるように渦巻き、炎の大剣を作り出す。
「熾天使剣・レーヴァテイン」
「…っ!」
龍は動揺する間も無く、大剣に貫かれた。
天使にとって炎の龍は所詮、太陽知らぬ無知な蜥蜴に過ぎなかったのだ。
勝者、ミカエラ・ジェルエン!
1ー3 (ノックアウトによる敗北)
フィニッシュ技「レーヴァテイン」




