第12部 紅い結晶
「ダンス・オブ・サラマンダイル?」
ダイショはラジカセをどこかから持ってくるとそのまま地面に置いてスイッチを入れる。スラップベースの奏でるメロディとともにダイショのナンセンスなラップが始まった。
「YES!姉貴のラリーは華麗なダンス!!打球の軌道は見えるけど、希望の光は見えやしない!GOGO燃える炎のダンス!焼き付きそうなそのスタンス!体力消耗エンドレス!」
軽快なステップを踏みきるとと変なポーズを決めた。
「え、えっと。つまりはあのダンスのようなラリーはわざと場所を教えて長引かせる戦術ってことですか?」
「しかもあの周りには炎の魔力が飛び散っている。いま、あの場所は火山の火口並みに暑いぜ」
「なんでいまのラップでこれだけの情報がつかめるんだよ…」
そんなことをしている間に、試合は進んでいた。
戦況は
ドランが1ゲームを取得していて現在は2ゲーム目。
得点は
0-8 サーブ権ドラン
「…諦めの悪い天使だ」
渇きの大地に煉獄の檻。
天使の体にはもう体力など残っているはずがなかった。
「わたくしは負けるわけには、ぐっ…いきませんわ…」
歩くだけでも精一杯であるのにミカエラは足を止めなかった。
「はあはあ…」
普通の人間なら確実に死んでいる。彼女だからこそ生きているのだ。だが、やはり現実は非情である。
沼と見まごう砂地とドランの必殺技との相性が良すぎた。まさに蟻地獄。抗おうものならどんどんと飲み込まれていく。
しかし、彼女はそれを知っていてもリタイアする気はないようだ。
「ミカエラ。もうちょっとラリーが続きそうだから、いいことを教えるぜ。あたしが知る限り、この試合まで、お前はストレート負けも0-11のスコアも残したことがなかった。まさにお前は天才だ。だが、天才も貴族も超えられない壁がひとつある」
ドランのラケットが燃え始めた。
「あ、姉貴の必殺火球がくるヨオ!」
灼熱の空間を引き裂くようなスイング。紅蓮の軌跡が打球を打ち返す。
「ファイアボール!イグニッド!」
つい転んでしまった天使の瞳に紅い球が映る。燃え盛るは太陽の如く。その速さは流星の如く。
「どんな奴も運命にはかなわない!お前は運命に負けた!そして、あたしはお前の不敗を破り、異世界卓球の頂点を勝ち取る!」
「運命…ね。確かにあなたの言う通りかもしれませんわ」
天使は立ち上がり、覚悟の意思を見せた。
「あの構えは!?まさか?」
「まさかのまさかだヨオ!」
ミカエラは打球に合わせて紅蓮の軌跡を作り出した。
「技能簒奪だ!」
だが彼女の軌道は炎ではない。氷だ。ボールの軌道とともに赤い氷の結晶が植物のように地から現れる。
「ブラッド・クリスタル!」
「返してやる!」
「そう上手くいくでしょうか?」
「紅い氷だと…!?」
気づいたころには血のように紅い氷に囲まれ、やがて出口を防がれた。辺りに生成された氷に足を傷つけられ、転倒。ドランに返せる余地はなかった。
「あ、熱い!でもこれは鉱石じゃない、正真正銘、氷のはず」
氷の壁は触れると思わず手を引いてしまうほど熱い。
「さて、反撃開始ですわ!」
「…お前、いつの間にそんな体力を…」
半龍の少女が目の当たりにしたのは神々しい存在。
天使の輪と背中には四つの翼。人口太陽の光を受け、その輝きを一掃に増している。
「信じる限り、天使の力は不滅ですわ!」




