第1部 強者たち
魔王杯本戦トーナメント一週間前…
選手たちはそれぞれの日常に戻り、その日常を謳歌していた。
とは言っても、誰かの願いや一人の命がかかっている16名に心が休まることはなかった。
そんな中、ユキムラサツキはアスタロトとミカエラとともにローランの城の卓球場で練習をしていた。
「いつも同じような練習ではつまらんじゃろう。というわけでわらわ直々にスペシャルゲストを呼んでおいた」
その一言から、普通の練習という概念は消え去った。
「どんなやつだろうな」
「もしかしたら同じ決勝トーナメントに出場する選手かもしれませんわ。油断なりませんわ」
「もうすぐ来るはずなんじゃがな」
(遅刻って…相当なやつなんだな)
「まあまともなくらいだのほうが少ないくらいだよ」
するとドタドタと忙しい足音と男の声がする。
「お待ちくだされお客人!ローラン様にご用ならそこまで私が案内しますぞ!」
「いえいえ、私ここに一回来たことあるんですよ!たしか面接してたとこは…」
「テレポート!」
ローランが魔法を唱えるとドタンと音を立てて、金髪で耳のとがった少女と鎧の騎士が尻もちをついていた。
「ヨロ太郎ご苦労じゃった」
瞬時に立ち上がり啓礼するヨロ太郎。
「いててて…ひどいですよお、ローラン様ー」
それに対して初対面とは思わないような口調で、尻を摩る金髪の少女。
はぁとため息をつきローランはその少女に
「そなたがそんな性格だから採用しなかったのじゃ」
「え?知り合い?」
三人は驚きローランを見た。
「ああ!お前は前に兵士の試験を受けに来たエルロットか!」
「あっ!あなたは…アスフォルト……」
「アスタロトだ」
あたりに沈黙が漂う。
サツキはこのことから人の名前はしっかり覚えようと決心した。
ローランは咳払いして話を戻した。
「とりあえず今回はエルロットに来てもらった」
ほら挨拶しろとエルロットへと眼差しの合図をとる。
「わ、私はエルっていいます。精霊魔導士ですっ。今日はよろしくお願いします!」
といって頭を下げる。
「それでは今からヨロ太郎と……」
「ローラン様、エルフの女など俺一人で十分です」
アスタロトが声を上げた。
「ほう?ヨロ太郎を出すまでもないと……」
「私はローラン様に従うだけの身なので」
ヨロ太郎は啓礼したまま動かない。
「いいだろう!面白い、許可してやろう!そのかわり絶対に負けるでないぞ」
幼女とはおもえぬ狂声で狂声で笑い、そう言った。
「はっ、ありがたき幸せ」
「ほんとに堅い忠誠心ですこと」
敬礼するアスタロトに対してミカエラはやれやれとほほ笑む。
「アスタロトとかローランちゃんってたまにキャラが壊れるよね……」
(異世界の人って情緒不安定なのかな)
「よ、よくわからないですけど、アスファルトさん!勝負です!」
「アスタロトだ」
アスタロトはラケットを構え、エルは武術的?な構えをとった。
「精霊魔導士…なんだよね……」
ミカエラもこれには驚いていた。
「ええ、恐らくあれは……古来から伝わる返し技、止水。この技は返し技の中でも動きが見えにくい技ですの。完全静止した状態で相手の様子を伺い、超高速で反撃する技ですわ」
彼女の眼は変わっていた。サツキのように色が変わるのではなく、誠意のある達人の眼差しをしていた。




