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〜異世界卓球〜 混沌の章   作者: 不滅のピン太郎
第三章 魔王杯 本戦編!
61/84

第2部 突風の魔術師

エルロットvsアスタロト

7点マッチ 

サーブ 2回交代

デュースなし

試合開始!


アスタロトがフォアサーブをバックの奥のほうに繰り出す。

エルロット、エルは止水の構えから微動だにしない。

ロングサーブが白いラインについたときエルは右手に持っていたラケットを投げ、エル自身は一回転しその遠心力を活かして回し蹴りをはなった。

この一連を何の前触れもなく繰り出したためアスタロトたちは驚いていた。

(おいおい!最初から飛ばしてるな!)

「……なんだよあれは」

回し蹴りに気づいたころにはアスタロトの腹にボールが突起物が突き刺さるようにあたった。

「ぐはっ!」

その痛みは本当に腹を殴られたような感覚だった。

判定はもちろんイン。

そしてボールとともに蹴られたラケットは真っ二つに割れていた。

「お、お前ナニモンだよ…」

アスタロトは呆然としていた。

「ラケットをも破壊する回し蹴り…」

「異世界卓球のラケットは特殊加工されているはず、なんだよね」

(脚どうなってんだよ……)

「これはちょっとした挨拶みたいなものです。甘くみてもらっては困ります」

本来ならば脚や割れたラケットに目を向けるはずだがたった一人、赤子の頭のように大きな彼女の胸を凝視している者がいた。

「どうしたの、ミカエラ?」

「あっ、いえ、なんでもありませんわ」

割れたラケットはもう使えそうにない。

「お前、替えのラケットはあるのか?」

「ラケットなど必要ありません。この拳と脚だけで充分です」

一瞬、風が吹き抜けると彼女の体を風のオーラのようなものを纏っていた。

「風属性の魔法か?」

「これが魔法拳(まほうけん)…ですっ」



1-3

サーブ権 アスタロト

点数を見ると一見、エルロットが不利に見えるが実際は違った。

エルロットの魔法拳(まほうけん)は魔力を拳に込める技。

魔力が込められているので魔法として判定するので反則にはならないようだ。

ラケットのようにリーチは無いがその拳は4回目のラリーでアスタロトのドライブの回転を打ち消すほど爆発力は大きい。

試合はまさに鍔迫り合いそのものだった。


「オラッ!」

悪魔の容赦なきドライブ回転を

「せいっ」

エルフの堂々とした拳がそれを打ち消す。

「しぶといヤツめ!」

「お互い様ですよ」

彼女の拳によってバック方向の深い場所にボールが落ちる。

「どいつもこいつもタマ運びが甘っちょれえんだよ!」

アスタロトは体を捻ってラケットを沈める。

「あ、あの構えは!」

(あの技は久々に見るよな)

「デビルロンギヌス!」

「で、出たのじゃ!」

「闇魔法?」

高く上がるボールは投げられた槍の如く回転を帯びていた。

「ど、どこに落ちてくるか。それさえ分かれば…」

しかし彼女に考える暇などなかった。

空中でねじ曲がったボールはネット際で旋回し横入れのように台の上を転がった。


2-3

サーブ権 アスタロト


「ロビングと見せかけてのループドライブ、と思ったらまさかの横入れ」

「アスタロトにはつくづく驚かされますわ」

「無限に進化を遂げる技。それこそがデビルロンギヌスなのじゃ」

(まさに完成形の無い自由の技ってことだな)

エルは黙り込んでいた。

「フン。あのときの悪魔小僧がここまで成長するとはのう…」

ローランは謎の声に反応した。

「し、シショー?!出なくてもいいって言ったじゃないですか」

エルは振り返り、そう叫んだ。

ローランは何かに気づいていた。

「まさかヤツは…!」

アスタロトも驚いていた。

「ああ、そなた!わらわの部下の一人だった…突風の魔術師ストーミィじゃな」

ローランは立ち上がり精霊を指差す。

「あの大賢者とも呼ばれたストーミィですって!?」

「これはこれはローラン陛下。お久しゅうございます」

ローランはその見た目に似合わないほど精霊を睨んでいた。

「そんなに有名な人なんですか?」

「ローラン四賢者のひとりですわ」

「ヤツが日本をこの世界に召還した張本人じゃ。そなたのことじゃから餓死でもしたかと思っていたのじゃがまさか精霊に転生しておったとはな」

ストーミィと呼ばれる精霊の見た目は魔人そのものだった。

「ストーミィ!あなたは死の理に反していますわ!これがアティア様に知れてしまえば…」

「フォーホッホ!その程度、覚悟くらいはできとるわい」

「し、師匠は悪い人なんですか?」

エルは深刻そうな顔をしている。

それに対して師匠は大丈夫だと笑みで返す。

「悪いことは言わん。今すぐ契約を解除しろ。その精霊は元はロクでもない魔導士じゃ」

「…イヤです」

「そなたは若い、そして真っすぐな性格をしておる。じゃが、それ故にそのドアホに利用されとるのを理解しとらんのか?」

エルは俯くと拳をグッと握った。

「元奴隷、元へっぽこ衛兵、魔法学校も暴行で退学処分。現在無職かつ魔王杯で人生一発逆転を狙う愚かな私のほうがよっぽどクズですしロクでもないですっ!」

突然エルが一喝すると周りは静寂につつまれた。

まさにそれは凍てつく獣の咆哮。

「アスタロト・ルルビデ。そしてあなたたちに宣戦布告します!」

「え?それって僕も…」

「問答無用!師匠を侮辱したこと、そして」

するとエルは自分の顔を殴った。

「私があなたたちを見くびって全力を出さなかったこと……」

彼女の頬には黒いアザができていた。

「決勝トーナメントで会いましょう。今度は全力ですから」

振り返ると風があたりに一面に吹き抜ける。

「うわっ!」

「ぐっ…」

「きゃっ!」

(き、きえた!)

風が止むころには彼女と魔人の姿は見えなくなった。

「……また敵を増やしてしまったようじゃの」

「…めんどく、大変なことになりそうですね」








「エルよ、ヤツはオオカミじゃ。非力なオオカミは力業ではなく地形や環境などその場に適した賢い戦いをする」

「……」

「にしてエル、お前はクマじゃ。奴らは温厚じゃが内なる本質は馬鹿にならんほど強い」

「その内なる力って魔法拳(マジカルパンチ)?」

魔法拳(まほうけん)でよいじゃろ。流石にダサすぎるじゃろ」

「あの、師匠、もしかして…気づいた?」

「ああ、当然じゃ。あの蛇女にわしらのデータを盗まれるわけにはいかんからな。もしあのまま続けていたら…」






「お姉様…データの収集、解析が不完全です…データ数が足りません。解析には1試合分のデータが…」

「この役立たず!」

「お役に立てず申し訳ございません」

「まあいいわ。回収できたデータは…」

「報告いたします」








「アスタロト・ルルビデの必殺技

デビルロンギヌスの解析が完了しました」











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