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〜異世界卓球〜 混沌の章   作者: 不滅のピン太郎
第2章 魔王杯予選編!
58/84

第43部 決戦カイザー!

1 ー 9

サーブ権 カイザー


圧倒的な差ができてしまった。

ツイングラディウスはカイザーの通常打球の二倍の威力を持っている上にボールがフォアに来るかバックに来るかわからない技だ。

見えているボールはふたつ。

右と左。フォアかバック。

2分の1だから偶然拾えたこともあったが思いのほか威力が勝り、ブロックやロビングはもちろん、カイザーの領域(コート)へと返球することすら許さなかった。


「だ、だめだ…勝ち目がねぇ…」

(活路が見えない…)

王の絶対的な得点力によって完封されていた。


「もう終わりか、ユキムラサツキ?」

いやまだ勝てると答えるように立ち上がるサツキ。

恐怖もあったが闘争心がまだ残っていた。

それは黒でも赤でも同じこと。


カイザーは気づくと背中の剣に手をかけた。

「では、こちらも本気で行かせてもらおう」

カイザーがサーブを繰り出すがその速度は速い。

カイザーほどのパワープレイヤーならば3球目を狙うのが王道的かつ安定するのだがカイザーは勝負を決めにかかったのだ。

「くっ…!」

なんとか返すサツキだがロビングに近い高さで返球してしまう。

「流石だ!この俺が目をつけただけはあるな!」

しかし、そう言いながらも下がるカイザー。

(相棒!まずいよ、あの技がくる!)

それに気づいたころにはもう背中に納められた剣は引き抜かれていた。

カイザーがサーブを出した距離から魔剣グラムを振ると台に当たりかねない。

それを考慮して下がったのだ。

「カイザぁぁぁぁ!ブレイクゥゥゥゥゥゥ!」

重々しい剣を振り切りボールを弾き飛ばした。

そのボールは剛球や魔球といった簡単な異名で呼ぶには失礼きわまりない質を持っている。

だが、必殺技を持っているのはカイザーだけではない。

そうカイザーが目にしたのは彼女が背を向けて走っている姿だった。

「相棒!このくらいでいいか!」

「何だと!この俺に背を向けるだと!?」


(ああ、一か八かの勝負だけど…命が賭け金ならやらない手はないね)

「それを言うなら命が賭け金だからこそこの選択をするんだろ?」

(相棒らしいや)

そう言うとサツキの眼が光ると共に雷の魔力がラケットに込められた。

その証拠に金剛のように閃光が煌めいている。

「くらえ、カイザー!バスターブレイク!」

打ち返されたボールに対してカイザーは反応する。

だがその大剣を斜め下に構え、両手で支えている。

「ぐぉっ!雷属性の魔法か…」

なんとカイザーはそのままボールを滑らせ打球を受け流した。


2 ー 9

一点を取ると周りから歓声が上がる。

ふと周りを見るといつのまにか観客たちが集まっていた。

一点を取っただけでここまで盛り上がれるとは、カイザーは今までの試合はほぼ無失点に近い形で試合に勝っていたのだろう。

夕暮れの空の下、カイザーはやれやれと言った。

「……もう飽きた。お前の勝ちでいい」

「え?ちょっと!」

「次は全力でお前を倒しに行く。覚悟しろユキムラサツキ」

彼の眼は獲物の顔を覚えたカラスのようだった。

今日は実質勝ちみたいなものだが、次カイザーと戦ううえでいつもの力は通用しない。

周りの観衆から囲まれ、適当なヒーローインタビューを受け流しながらそう考えた。

「うんうん、いい試合だったよ。サツキちゃん」

観衆はその声を聞くと散り散りになって逃げ離れていく。

「その声は…」

サツキの眼も黒くなってしまうほどの貫禄の持ち主といえば一人しかいない。

「はいどーも、魔王です」

(ま、魔王本人が出てきた!)

「いやー、カイザー君には困ってたんだ。それを最終日ラストの試合で見事勝利を勝ち取るとは、ますます気に入ったよ」

コソコソと耳打ちする観衆たち。

サツキは「いや、相手の降参ですし…」

と謙遜するが周りの観衆が魔王のお気に入りと知った途端に魔王とともにサツキを囃し立てる。

「ち、ちょっと胴上げは辞めて」

「おっと本来の目的を忘れてた」

魔王はモニターを開き、両手の指でモニターに常人には理解出来なさそうなプログラム式の文字を入力した。

「まあ、色々トラブルもあったけど魔王杯予選はこれにて終了。みんなお疲れ様!」

マイクのモニターに対してそう話す魔王。

テーマパークのお兄さんのような明るく朗らかな声にら世界の支配者という貫禄やオーラは全く感じられない。

というよりローブのフードに顔が隠れて未だにその素顔を見たことがない。

そういった人がほとんどだそうだ。

「結果については後日、会場で発表します。また上位16名が決勝に出ることができるよ。あっそうだ。みんな、あの一位のカイザー君に見事に勝利した日本人、ユキムラサツキちゃんを祝福してねー!」

「えと、あの、あ、ありがとうごじゃ…ございます」

本当迷惑な魔王だ。

ニャリルみたいに僕を狙う殺し屋でも来たらどうするんだ。

(まあ、それが魔王の狙いだろうよ)

体は蒼い光に包まれ、世界は白い粒子となって消えていく。

「それじゃみんなお疲れさん!」

魔王の一言で仮想世界は消え、僕らは現実世界へと戻った。


魔王の部屋


「あー、もう疲れたぁぁ」

お疲れ様。

「ハッ!この独特の雰囲気は」

魔王の部屋だね。

「僕だけ元の世界に帰れないの?」

そんな顔しないで、ちゃんとこのコーナーが終わったら送り返すから。

「というか相棒との通信が取れないや。人格との交信まで途絶えるこの部屋って…」

まあ魔王の部屋ですから。(本人)


魔王杯予選編最後は異世界卓球でよく聞くレートについて解説しよう。

「まず、この世界でいうと選手の強弱の分け方ってレートが基準なんですか?」

まあ、そうだね。

「まあ、レートはゲームしてる人なら大体分かるだろうけど、数値化されたその人のランクみたいなものだよ」

異世界卓球では一定数から始まって勝ちで数字が増えて、負けたら減る。

単純だね。

「でもこのシステムを悪用する輩もいますよね」

まあ、そうだね。

ヘビー盗賊団がよくやる方法だけど部下が集めたレートを上司と戦ったときに部下が降参して勝ち点を貰うっていう、方法だね。

「許していいんですか?」

うーむ。まあ終わったことだししゃーない。

それに大きな軍事力を持ってるのも強者の証だしね。

「まあ、実際僕もカイザーからレートを貰いましたし、人のこと言えませんね」

他にも大きな大会で優勝する。

とかでもレートを貰ったり、強い選手として認められたりできるよ。

「この魔王杯で優勝したら世界最強か…」

まあ、そうでもないんだよね。

「え?」

実は魔王杯の参加者は主に日本に近い地方からの選手が多いんだ。つまりは日本を含めた大陸の中の約4分の1人くらいしか出てないんだ。

「世界は広い、か…」

まあ賢明な人ならこんな大会出ないよ。

「願いがなんでも叶うのに?」

だからこそだ。

殺害が日常的にが行われてる時点でお察しだ。

「欲望って恐ろしい」


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