第37部 狙うは新星ユキムラガール
カイザーやミカエラが異形の中でも強い階級にあたる異形を倒したため、徐々に異形たちは次元へと帰っていった。
気がつけばもう6日目だ。
アスタロトが僕に通信を送ってくれたおかげで気づくことができた。
異形がいるにしろいないにしろ日にちなんて気にしないだろう。
僕もほかのプレイヤーも。
というか、
「あ、あの。何か用でしょうか?」
いきなりな展開だが目の前には黒い肌に銀髪のスタイル抜群の長い耳の女性が立っていた。
「あら、分からないかしら?ユキムラガール?」
僕の名前を知っている…。サイトに聞いてみたけど僕はそこそこ有名な人になっているらしい。
てかユキムラガールって…。
「私と試合してくださらないかしら?」
また、試合か……。
「いや待てよ、ダークエルフ」
近くで寝ていたサイトはその話を聞いていた。
「あら、あなたは?」
「俺はサイトウエスト。お前も名乗るべきだろ?」
「ふーん。年上には敬意を払うのが礼儀ってものでしょう?まあ、いいわ。私の名はアーク・ミリオネア。異世界卓球協会公認プレイヤーよ」
といって、胸の紋章を見せる。
「チッ、ついに公認プレイヤーに喧嘩を売られたか」
(確か、公認プレイヤーの名はアーツミリオネアだったはず。アークとアーツ。聞き間違えだったんだろう)
「あの紋章…魔王のところで見たことある」
(ああ、確かに。アレと似ているな)
「ま、喧嘩を売るというより、試合をしにきたというのが正しいかしら?」
「背に腹はかえられぬか…」
(やるしかないな、相棒)
何かのプログラムが作動し、卓球台が現れる。
サツキvsアーク
試合開始!
「ちょっと待ったぁ!」
「な、何かしら?」
物静かなサイトが急に叫んだので彼女らは驚いた。
「あのな、公式プレイヤーだがなんだか知らないがお前も一応その娘を狙ってる人ってことだよな」
アークは「何のことかしら?」と首をかしげる。
「とぼけても無駄だ。大体、この世界で好きで卓球やってる奴なんてそうそういない。そのほとんどが欲とこの世界のルールに従っている馬鹿野郎だ」
「あら、異世界卓球公式プレイヤーに向かってそんなことを…」
声が強くなったアークに対してサツキは黙っていた。
だが、サイトが失礼極まりない発言をしているのはわかっている。
でもよく考えてみたらそうだ。
サツキにとって異世界卓球が始まってから、本気で楽しいと思えた試合なんて…アスタロトやミカエラのやった試合以外にない。
サイトの考え方も強ち間違いではないのかもしれない。
「で?あなた、何がしたいの?」
「あ?あぁすまん。その娘と試合したいなら…」
サイトは立ち上がり中指で眼鏡をクイっと上げる。
「まず、この俺と試合しな!ちょっとした依頼でね。俺にはその娘を守る義務がある」
「ふーん。まぁいいわ。井の中の蛙大海を知らずって言葉、貴方にお似合いだわ」
(日本の言葉でも難しい方だと思うけど、よく知ってるよね)
(まあ、公式ってくらいだから外の国の言葉くらいは勉強してるんじゃないか?それよりまた、出番無しか…ここ最近、全く試合出来てない気がする)
「その言葉、アンタにそっくりそのままお返ししたいところだ」
サイトvsアーク
試合開始!
試合開始から魔法を使うアーク。
炎を纏うボールや風や氷での妨害、土での防御と完璧な立ち回りをしている。
1 ー 4
サーブ権 サイト
「まあ、魔法ってのは炎、水、土、風の基礎属性と光と闇の対抗属性がある」
サイトはジェイドの言葉を思い出す。
思えば異世界のことはほとんどジェイドに教えてもらった。
だが、ジェイドに教わった限り、ここまで魔法を使い分ける魔法使いは普通いない。
「大体の魔法使いは属性を1〜2つに絞る。属性を多用すると魔力が枯渇しやすくなるんだ」
「ん?別に他の属性を使ったところでなんら変わりないんじゃないか?」
「いや、例えば氷は炎で溶けるだろ?土は風に飛ばされるだろ?そのせいで不発になったり、他の魔法が出てしまうこともしばしば。単純な話だがそんなもんだ。あとは属性を持つ魔法は全て全く違った構造の魔力を持っている」
「ふむふむ」
「ここからが複雑な話になるが、属性魔法の中ではその魔力同士で引き離したり爆発したりするものがあるんだ」
「…?」
「正直、俺もよくわからない。ただ、何故か構造が違うだけで破裂するってのがあるし、それ以前に複雑すぎる魔法を沢山覚えられるかどうかだ」
ジェイドに手渡されたのは黒い書物だった。
「魔法ってのは複雑だ。初級のファイアボルトですら理解できない野郎も多い。解明できるのは何千年先だろうなぁ?」
そう言ってジェイドは笑う。
1 ー 5
考え事をしている間に試合は進んでいる。
「お前、属性魔法の使い手か…?」
(アークミリオネアとアーツミリオネアが同一人物、いやそれは俺の聞き間違いだとして。やつがアークだとしたなら恐らく全属性の使い手と呼ばれる公式プレイヤーだ)
正直、公式プレイヤーを自称する者もいるので、サイトは少し警戒をしていた。
だが、そんな考え方もサイトの頭から離れていった。
アークはサイトの質問にふふふと笑った。
「もう一度、紹介させてもらうわ。私はアーク・ミリオネア。 特殊能力、全属性の使い手よ」
やはり公式プレイヤーなのだろう。
そのオーラ、その威光、その強さは超能力で捻じ曲げられるものではないからだ。
「ぐ、どうすれば…」
匙を投げようとしたその時、あの記憶の続きが蘇る。
「その本か?ああ、お前にピッタリの魔法が書かれた本だ!」




