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〜異世界卓球〜 混沌の章   作者: 不滅のピン太郎
第2章 魔王杯予選編!
53/84

第38部 魔法と超能力

魔王杯予選も最終日に近づく中、注目される試合が行われていた。全ての属性の魔法を使える公式プレイヤー「アーク」と魔法すらねじ伏せる超能力者「サイト」が白熱した試合をしていた。

ここはヘルフォレストの奥地にあたる場所であり、人が寄らない場所でもあったが、何故か沢山の人が周りを囲っていた。アークはモデルやタレントをしている身でもあったため、人を沢山寄せつけてしまったのだろう。


1 ー 5

サーブ権 サイト


歓声が聞こえる中、サイトは考えていた。

この場を打開する手を。

(サーブに回転をかけても凍らせれてしまう、かといって速いサーブだと風魔法でコート外へ飛ばされたり、チャンスボールとして上げられてしまう)

「じゃあ、答えは簡単だな」

トスを上げ、ラケットにボールを当てる。

「あら?その程度のサーブ、返してしまいますが…」

右手には氷の魔力、左手には風の魔力。

やる気満々じゃねぇか。

と心で呟く。

凍って打ち返されるのも、風に飛ばされるのもボールが軽いから。

「これが俺の答えだ!グラビティチェイン!」

その刹那。その一瞬。

ズドンと響くようにボールが重力に従って落ちていく。

「はっ……!?」

一点奪われた。

それも一瞬。

「魔法の弱点は詠唱などでの使用過程のタイムロス。確かにその分のアドバンテージは付くさ。アンタが一歩半距離を置いているのもそれが理由だろう?ボールを打つまでの猶予は距離で稼ぐ、カットマンみたいなことしてるねぇ」

アークはサイトの言葉を無視してボールを手に取ろうとする。

だがアークは違和感を感じた。

「……重い!?」

鉛のように重くボールは持ち上がらなかった。

だが、サイトが超能力を解くとボールは元の重さへと戻った。

(グラビティチェインは重力を操るわけじゃない。無機物の重さを変える技だ)



2 ー 5

「でも、貴方も同じでしょ?」

森の中に風が吹き荒れた。

「くっ、卑怯な真似を!」

「だから、それこそ貴方もでしょ。けどそれが通じないのが異世界卓球ってものよ」

サイト側からしてみれば向い風。

アーク側からしてみれば追い風。

都合のいいタクティクスの完成だ。

「バトルタクティクス展開。もう遅いかしら。風の戦場(ハリケーンフィールド)、軽いボールは皆吹き飛ぶわ」

前髪が風でなびく中、サイトはサーブを構えた。

「おらぁ!」

サーブに念を込めて、回転をかけるが風によって戻されてしまう。

「サイ……!」

超能力で操る前にボールは何処かへと飛んで行った。

(風の影響もあってか、速い。速すぎる)


2 ー 6

サーブ権 アーク


(超能力も同様に発生までに時間がかかる。さらに手加減や制御を含めればそれに加えて疲労も伴うことになる。実際、卓球で超能力を使えば強力だがかなり非効率的だ)

「あら、そういえばユキムラガールの姿が見えないわ」

サイトはサツキの護衛をしていることをすっかり忘れていた。

周りを見渡すが黒髪で前髪で片目が隠れた少女はどこにもいなかった。

(まずい!また殺し屋にでも遭遇したら面倒な事になる!)

「でも、私との勝負が終わるまであなたはここを離れられないわね」

(だが、レートのほうも重要だ。俺はサツキの護衛のため、ここ二日間戦っていない。ランキングはまだ見ていないが、先日のブルシュがいい糧となった。だが油断は出来ない。ベスト16をなんとかして超えるためにも……)

「まずは公認のお前を討つ!」




ヘルフォレスト奥地(サイトとアークが試合をしていない場所)

「どうだ、俺らのオリジナルスパイスは?」

「美味いかヨォ?」

焚き火の炎が滾るなか、分銅鍋の中にはぐつぐつと煮込まれたカレーがある。

ヘビー盗賊団のアオダとダイショの目の前には、黒髪の少女が皿に盛られたカレーを食べている。

「うん、やっぱり美味しい!」

(いや、お前いかにも怪しいだろ!どうせ、アオダとダイショの事だからまた汚い手段でリベンジしに来たんだろ!)

「でも、これ普通に美味しいし…」

(馬鹿野郎!毒でも盛られたらどうすんだよ!?)

「いや、別に俺たち何もしてないから」

「普通に最高のカレーをご馳走してやってるだけだヨォ!」

「最高のカレーをご馳走するのって普通なのか…?」

(じゃ、なんでお前らが相棒にカレー作ってやってるんだよ)

彼らに魂胆も何もない。

美味いカレーを食わせてやりたいという気持ちは真実だ。

だがそれは彼女の全力を出させるためのものということは彼女は知る由もない。



2 ー 8

サーブ権 サイト

「嘘だろお前…」

炎、水、風、土だけでなく光と闇までをも使いこなす魔法使い。

エルフは魔法の使い手が多いと聞くが…まさかここまでだとは……。

「ふーん。この程度で私と張り合おうなんて…」

「おっと、何百年早いとかそんなお決まり事は言わせないぜ。こちらにはお前に対抗するための必殺技があるからな」

ハッタリが7割。残りが本気。

正直なところまだイメージがつかない。

「あら、メインディッシュはまだだったの?まあ、せいぜい私を楽しませてね」

魔法と超能力。

似てるようで似つかない。

この水と油のようなものをどうやって合わせるか…。

ラリーを続けながら必死に考える。

(風の戦場(ハリケーンフィールド)が常在する限り強いボールを撃たなければならない。だが、回転も全て皆無の状態。あの魔導書の内容はほぼほぼ覚えたがイメージがつかない。どうやってあの完璧を砕くか?)

「こちらから決めさせていただくわ」

彼女は精神を集中させ目を見開く。

ボールは氷の柱の中に佇んでいた。

「これこそ守りと攻めの両方を兼ね備えた完璧な必殺技」

彼女の左手からは炎が上がっている。

「天を凍てつかせ、大地を焦がさん」

「やっ、ヤベェ!」

彼はオーロラを初めてみた人のようにその場に釘付けになっていた。

「ソルライトブリザード!」

左手の炎で氷を砕き、二つの魔力を解き放つ。

「あれは受け止められない!」

その時、ジェイドの言葉が頭をよぎる。

「魔法を封じる魔法。この魔導書は強すぎるから鎖と鍵(・ ・)で封印したっていうのさ。可笑しいよな、魔法を封じるための魔法なのに自分自身も封印されちまうなんてな」


「そうか!鎖と鍵。俺ってやつは案外単純なとこで悩んでたのかもな」

頭の中に沸いたイメージは6本の鎖だった。

「6本あれば十分だ」

サイトは歯を見せ笑う。

「……?!」

ボールは氷と炎どころが風の加護すら受けていなかった。さらに吹き荒れていた風も止んでいる。

ボールは石のように落下した。

だが跳ねるのを見ると、軽さは変わっていない。

「バトルタクティクス展開ってとこか」

アークは唖然としていた。

アークの身体は自由がきかなかった。

「センサートラップ。そのタクティクスの名前だ。お前が魔法を使えばその魔力を察知して鎖でその魔力とお前の身体を縛る。1属性につき1つなんだが、お前は生憎6属性全て使えるから6本の鎖ってとこよ」

銀色の鎖は彼女の右手、左手、右脚、左脚、にそれぞれ1本ずつ。

残りは彼女の首に2つ巻かれている。

その鎖は黒と白。

「ちなみに首の2本には何か意味があるの?」

「ああ、光と闇は対抗属性。つまりお互いが引き離し合う関係ってことだ。その性質を利用したものだ。お前が光か闇の魔法を使えば、首の鎖が引き離し合ってお前の首を絞めるという恐ろしい鎖だ」

自分で言うか?と言いたげな顔をする。

「もう、降参でいいわ。随分汚い手段を使われたものね」

まだギリギリ動く左手で空間タッチパネルを操作し、降伏のボタンを押す。

「あなたとは二度と試合したくないわ」

鎖から解放されると森の外へと歩いて行った。

観客からはブーイングが殺到。

そりゃ、有名プレイヤーがこんな手で負かされたらファンも怒るだけじゃ済まないだろう。

「何とでも言え。俺はどんな手を使っても勝ってみせる」


その様子を見る魔王は和かに微笑みコーヒーを飲む。

「まさか、超能力者が混ざってるとはね…まあ、ジェイドくんの件で知ってたけど、彼の思想や戦い方も悪くはないと思うよ」

モニターをのぞいて高みの見物。

ただ死なない殺し合いを見て魔王は笑い欠伸する。

「異世界産コーヒーも美味しいけど、本場のコーヒーが恋しくなってきた」

くだらないのは言動だけなのであった。



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