第31部 逃れられぬ死の結末
ジ・オーシャン ギルードゥ船にて
「ギュラララ!」
海から飛び出してきたのは緑の鱗をもつ爬虫類、と思えば赤い蟹の甲殻をもつ異形だった。
「此奴が異形か?!」
「ええ、異次元の存在でしょうね。特徴的な見た目だから参加者ならいっぱつで分かりますよ」
「で、こんなバケモンでもこの世界に入ってくれば魔王さんの力で卓球がある程度できるようになるってわけか。よし、そいつは食えそうにないが、完膚なきまでに叩きのめしてやれ!」
ハンゾウ、エルロットを先頭に後ろには戦闘要員である海賊たちが立っている。
そのさらに後ろに大将キャプテンギルードゥが腕を組んで仁王立ちしている。
「ギュララ!ギュララ!」
敵は複数だ。
何体いるかはわからない。
しかし、1人だけ長だと分かる個体がいた。
「ギェッヘェ!この世界にも海賊がいたとはなぁ!」
そう言葉を話すことができるのが恐らく長だ。
体も大きく、腕には鋼鉄をも砕きそうなハサミのような爪を持っている。
「へっ、海賊で悪かったな!不法な侵入ってこたぁ、てめぇら一族を全滅させてもいいんだろ?」
その大きさに怯まずギルードゥが答える。
「ギェヘヘ!俺たちザリワニーも舐められたもんだなぁ!野郎ども卓球だがなんだが知らないがぶっ潰せ!」
それに答えるように奇声を上げて襲いかかる。
流石に試合をするにあたっては別の空間に飛ばされてしまう。
この船でも人数分の卓球台を設置するのは大変だからだ。
しかし、ここだけは船の上の戦いだった。
「で、残ったのが拙者と」
「対象の俺ってわけか」
フードの中から見える蒼い目はザリワニーと呼ばれる種族の長を睨んでいた。
「鬼の一族かい?」
ハサミのような爪を舐めながら聞く。
「半分くらい正解、というところかな?」
ハンゾウは懐からラケットを取り出す。
「まあ、どうせその体つきからして下級種族のゴブリンだろう。それなりに強そうだがこのザリワニーの長、ジャリー様の前で肉片となるがな!」
9 ー 0
サーブ権 ジャリー
「なん…だと?!」
ジャリーはその場に立ち崩れた。
ハンゾウの打つボールは全てジャリーの目に留まらなかった。
速いというより消えたと言った方が正しい。
「拙者の忍法、眩美閃光。目で捉えることのできない速さで駆けるボールでこざるよ」
「そ、そんなの勝てるはずがねぇ!」
逃げようとするジャリーだが後ろにはついさっきまでの水平線の景色が緑色の林の景色となっていた。
そう、ハンゾウとジャリーの後ろには無数の竹林が生えていた。
「おっと、まだ勝負は決まってないでござる。拙者の忍法の1つ。背水陣竹林でこざる。お主と拙者はこの戦いから逃げられぬ」
「う、嘘だろぉぉ!」
悲痛な叫びが海に響いた。
だがそれも、波の音とともに消えてしまう。
11ー 0
ハンゾウの勝利!
フィニッシュ技
「眩美閃光」
グランフレイムにて
灼熱牢獄によって捕らえられてしまったドラン。
服は燃え、角は一部焦げている。
裸の状態だが彼女にしては身軽。
10 ー 3
でドランが優勢を占めているが、灼熱牢獄は暑さによって体力を減らされ限界まできてしまった。
蒼炎の溶岩は赤いマグマと違い、ドラゴンのような上位種でも苦しむ暑さを与えるという。
さらに密封されているため、呼吸が困難になっている。
「はぁはぁ……」
彼女の口から出るのは息と呼吸音のみ。
それでも彼女は跳ね返るボールを打ち続けていた。
ボールが跳ねる音。
呼吸の音。
溶岩の弾ける音。
音が絡み合い長和して頭に響く。
(もう、ダメなのかな……)
意識が消える中、黒の空間に1つの赤い希望が写っていた。
(いや、まだだな^_^)
倒れるドランを見て、サファイヤーは勝利を確信していた。
ドランは倒れる寸前、ロビングを打った。
「少しの時間稼ぎだろうが、貴様の体力はもうない。この灼熱牢獄で干からびてしまえ!」
その時、ドランの目が開き光を放った。
その光がドランを包むと巨大な龍が現れた。
「り、龍?!貴様、その歳で龍変幻じゃと!?」
巨大な龍はたちまち灼熱牢獄を砕き空へと飛び立つ。
「卓球台は壊してないからセーフだ」
龍は上空で炎の玉を吐き出す。
吐き出すというより放つというほうが正しいだろう。
「火焔弾!」
ボールというより、弾丸のほうが近いだろう。
ロビングとして上げられたボールに追撃を加え、卓球台に着地。そのまま何処かへと飛んで行った。
「こんな立派な龍を死ぬ前に見られるとはな…充分賞賛に値する…」
弾丸は砕かれたサファイヤーの体の一部に命中しバラバラになってしまう。
不幸にもそこは核と呼ばれるコア部分の入っている部位だったのだ。
吹き飛ばされた蒼炎の溶岩は地面の中へと消えていく。
「サファイヤー。私はお前に二回勝ったぜ。1つは卓球。もう1つは脱出ゲームだ」
彼女は如何なる時も最大火力をモットーに困難を切り抜けた。
いわゆるゴリ押しだ。
だが、そんな一面も部下から慕われる理由なのだろうか?
魔王の部屋
「あのー。ここが魔王殿の部屋でござるか?」
ああ、そこ座って。カメラ回ってるからね。
おおっと。
今日は期待の選手、ゴブ・ハンゾウくんが来てくれたよ!
「ああ、どうも」
簡単に自己紹介をどうぞ。
「ゴブ・ハンゾウだ。いわばゴブリンの忍だ」
シノビねぇ、ロマンを感じるねぇ。
「いえいえ、これも師匠が教えてくれた忍法があってこそですから」
なるほど、日本人?
「……実は拙者の師匠は偶然にも日本の人間だった。そして師匠は30年前、拙者に数々の修行を与えた」
えっ?30年前?!え?ハンゾウくんって最近忍者に憧れたとかじゃなくて?
「ちゃんと修行したでござるよ」
ええっと。師匠って、何処から来たの?
「……拙者も詳しくはわからないが……もしかしたら異形たちのように次元からやってきたのだろうな」
転生とか召喚とかもありえるなぁ……ちなみに名前は?
「ハットリハンゾウと言った」
ふぁっ?!
「拙者は30年の修行を終えてこのハンゾウという名をいただいた」
ただの忍者ヲタクゴブリンかと思ったけど…ガチの忍者だったとは……。




