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〜異世界卓球〜 混沌の章   作者: 不滅のピン太郎
第2章 魔王杯予選編!
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第27部 天空の狩人

アナザーキングダム上空。

突然として現れた空間の切れ目。

そして突然として現れたゲール・ザナーガと名乗る細い手足が生えた鳥のような翼竜。

ゲールはアスタロトを跳ね飛ばしランキング上位のミカエラを浮遊島のコートへと連れ去らう。


ミカエラは見たことも無い悍ましい生物を見て恐怖で体が震えていた。

そして風の吹く中、ゲールから血の香りが恐怖を煽るように漂った。

「怯える事はねぇさ。俺は罪無き物と捕食対象以外は殺す気は無い。遠き時空にいた友と約束したからな」

「……ぅぅ」

膝がガクガクと震える。

呼吸が荒くなり、その場に立ち竦む。

(はぁはぁ…駄目ですわ!ここで勝たなければ私のプライドが…うっ…試合すら出来ないなんて…)

だがまだ試合が出来ないと決まった訳でも無い。

立つこともできるし、足も震えをさえなければ動かせる。

ただ目の前にいる敵が怖いのだ。

怖い。怖い。怖い。

そう頭の中で言葉が調和して止まない。

理性を保てないかもしれない。

「……ったくしょうがねぇな」

藍色の鱗が黒い光に包まれるとミカエラは目を疑った。

「これが俺の本当の姿だ。前の世界でもお前みたいに怯えられた」

そう目の前には無愛想な顔をした短髪の少女がいた。

その肌は少し人とはかけ離れていた。

とは言え翼が生え、頭にはツノが二本。

大きな尻尾は細っそりした身体とは縁のないものにも思えた。

彼、いや彼女は半竜だったのだ。

「あなたは一体…」


「俺は強い奴を求めているだけだ。姿だけで怯えられちゃ勝負にならねぇ。でもこの姿は嫌いだ。だから化け物みたいな姿でこの姿を隠してるんだ」

声は違っていたが性格や話し方、考え方はあの龍と同じだった。


「さあ、始めようぜ。可愛い天使ちゃん」

「え、ええ……いつでもよろしいですわ!」



5 ー 5

サーブ権 ミカエラ


さっきまでの恐怖は何事もなかったように消え去っていた。

試合は順調だったが、ゲールは卓球をした事がないような動きではなかった。

翼や尻尾による機動力が高いのは勿論だが、ラケットをほぼ完全に使いこなしているのがわかる。

相当器用な者でない限り異世界の者たちはラケットを使いこなすことは出来なかった。


(この試合、勝たなければあの者にこの世界で暴れられてしまいますわ)

孤島のフィールドは足場が少なく、三歩下がると地面は無い。

台から離れてボールが勢い失ったところを狙うカットマンなどの後衛軸の戦法をとる選手にとっては苦でしかないが、後ろは空。

翼があれば地面のフィールドより力を発揮できるだろう。

「いい風ですわ…」

「何を呑気な」

ラリー中ながらも彼女は余裕の表情を保っていた。

風こそが彼女の武器であり味方だ。

「見せてあげますわ」

彼女が舞い上がると同時にボールも空へと向かう。

「上昇キリュースマッシュ!」

天空から打ち出されたボールは風の力を纏っていた。

「くぁっ、追いつかねぇ!」

吹き抜けるようにボールは風と共に場外へと飛んで行った。

6 ー 5

サーブ権 ミカエラ

(やはり、異界の者。速いボールには対応し難いのですわね)

ミカエラはフォアサーブから展開した。

ゲールはバックに跳ぶボールをドライブで返す。

「お嬢さんにも俺の必殺技見せてやらねぇとな」

「是非見てみたいですわ。私のボールを返すことができるのなら…」


「この風…上昇気流じゃないな…」

「ふふっ、バレてしまいましたか…」

ボールを風で捉えるとボールは光に包まれた。

「……お前っ…何を…」

風でボールが包囲した事を確認するとミカエラはラケットをしまい、祈りを天に捧げる。

そして、右手と左手をクロスさせ十字架を描いた。

「グランドクロス!」

十字架は回転し矢のようにボールに突き刺さる。

ボールは風と光を纏い、ゲールの胸に突き刺さるかのように当たった。

ボールはそのまま重力に従い落ちるがゲールが拾い上げ握り潰された。

「クソ……いつボールが放たれたか分からなかった…」

「裁きの矢は、貴方の胸の悪を貫きますわ」

そう言うとボールをゲールの方へと投げる。

「……ちょっと平たいんじゃないか?」

「は、はぁ?」

「胸…お前の胸だよ!俺より小さいってメスの自覚あんのか?」

普段ミカエラは冷静な判断で煽りに動じる様子はなかった。アスタロトと胸のこと以外では。

ミカエラは後輩より小さい胸がコンプレックスなのだ。幼馴染にも相談したが。

「ミカエラは胸を代償に完璧を得たのですわ。完璧と絶壁。何か似てません?」

と笑顔で答えた。

小さいというより平たいというのが正しいだろう。

そのコンプレックスを馬鹿にされているのだ。

「貴方、言っていい事と言ってはいけない事がありますの!その言葉今すぐ取り消して下さいまし」

「おいおい、そんな怒んなって。まあ、取り消すつもりは無いね。ほらほら羨ましいか?俺様には重くて邪魔だけどな」

ミカエラはゲールの煽りに動じていた。

その証拠に耳や顔を少し赤くしていた。

「絶対に勝ちますわ!もう絶壁なんて言わせませんの!」

「いや、そこまでは言ってない」

ゲールは回転がかからない普通のサーブを打ち込む。

サーブの技術は無いが、機動力やパワーでミカエラを圧倒していた。

「はぁっ!」

「ぐぁっ!」

とは言え、経験差は明らかだった。

ミカエラがもう一度、上昇気流を作り出す。

「上昇キリュースマッシュ!」

風を纏うボールはそのままゲールの元へと飛んで行く。

しかしゲールは着地を見切っていた。

バウンドするとすぐさま己の翼で風の軌道を変えた。

「えっ、何故ですの?風の軌道が…変わっていますの……?!」

「何の為の翼だと思ってやがる!」

龍へと姿を変えると空へと飛び立つ。

「勘違いするな、自然な風ってのはお前に力を貸すわけじゃない。平等に分け与えるのが風だ」

というと炎を吐き、竜巻を熱風へと変える。

「プロミネンスハリケーン!」

竜巻自体の形は留めているが、それがむしろ厄介だ。

「何処にボールがあるのか、見極めなくては……」

そしてミカエラは思い出す。

アスタロトとの修行で身に付けた技をここで使うべきだということを。


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