第27.5部 侵入者たち
魔王はモニター越しに見えるもう1つの世界を退屈そうに眺めていた。
しかし、ジェイドの通報によって新たな事件が起きてしまう。
事の原因はニャリル・バナティア。
最古の獣人族の末裔で予知能力があるとも言われている。
そのニャリル・バナティアは元々は名のあるプレイヤーではなかった。
よくよく考えると人通りの多いアナザーキングダムの出入り口となる門で1人で検問をしている時点で相当な体力を持っているだろう。
とは言っても彼女はこの魔王杯が始まるまで、彼女の名はほとんど知られていなかった。
「恐らく、あいつらかな……」
独り言を言いながらモニターに文字を打ちつける。
ニャリルの肉体。そして魂も魔王のいる部屋に送られていた。
「異界転送起動」
そう呟きボタンのコマンドを入力する。
するとニャリルの肉体は泡のように消えていった。
「ジェイド君、これでニャリルは異界に追放できた。死んではいないから安心してね」
「そうか、助かったぜ。魔王さん。よし、お前ら帰っていいぞ」
他の2人が帰ろうとしているのがわかる。
感謝の返事を聞くと他のペナルティもこなしていく。
15分ほど経つと何やらサイレンが鳴り出した。
「………!?」
そしてモニターに映し出されたのは悪魔のプレイヤー、アスタロトだ。
しかし、彼はボロボロになっている。
衣服は土に塗れて、髪には砂が混じっていた。
「魔王……ヤベェことになった。異界の住人か知らねぇがバケモンがミカエラを……」
魔王は安心しろと返事をすると、アナザーキングダムのモニターを探し回る。
「まさか、空か!?」
そこには天使の少女と半竜の少女が奮闘しているのがわかる。
「まさか、異次元からの侵入者……異界追放しすぎて次元の壁が脆くなってしまったのかもしれない」
これまでも殺人行為などの重い罪によるペナルティ、異界追放をしていたがまさか次元の壁を破り侵略者が来るとは思ってもいなかった。
「異次元は果てしない…道を誤りその中を歩くのなら延々と次元の中をさまよい歩き続けるのかもしれない…だがそんなところからやってくるという事は……奴らは下手をすれば僕より高い実力を持っている可能性がある…」
魔王の特殊能力である次元解放は次元の壁を扉のように開くことができる能力だ。
魔王はこれによって反逆者や知恵のない生物を異界に追放した。次元は果てしなく続くがその中にも異界と呼ばれる世界があるのは真実だ。
例に、ローランの六賢者の1人、ストーミィは異界から日本国を召喚した。
これによって最悪1つは異界が存在する事を証明できる。
「……わかった。ミカエラが駄目なら時間を稼いでくれ。僕がなんとかするから」
そう言いキーボードで文字入力しようとするが、
「魔王様!」
「魔王様!緊急事態です!」
異形の存在とそれに怯えて逃げ出したり、奮闘したりするプレイヤーがモニターに映し出される。
「一体だけじゃないのか……マジか…でもこの世界をシャットダウンすると怪物どもは勿論、プレイヤーまで消滅してしまう」
でも6月7日になるまでこの世界からログアウトする事はできない。
やはり、次元の壁を破って来たか…。
モニターを見る限りでは怪物は4体。
アナザーキングダムの上空とアナザーキングダムの周りの3つの都市だ。
青い空には空間の破れ跡が残っていて、空の絵に虚色のインクを零したようであった。




