第17部 一筋の希望
「くそッ!避けられるはずがねぇ!」
銀の弾丸は目の前に一瞬見えた瞬間、サツキは反射的に目を閉じた。
キィィンと金属が削れるような音が聞こえた。
「…死んでない?」
(まさか…!)
赤サツキが指示を出すと黒サツキは空を見上げた。
そこにはスピードと引き換えに回転量を得て、空中を舞うボールが見えた。回転はどの向きかなんて全く考えていなかったがほぼ止まっているに過ぎない。
「クソエイムが!……はぁ…っ……!」
前にはニッと笑い二つの銃を互いに違う方向に構える獣人の娘。
打つしかないと考えたが着地の反動でほとんど動けなかったサツキ。
その刹那であった。
「……せいっ!」
サツキの片方の目は黒に戻り、土壇場でラケットを投げた。
「させるか!」
それに気づいてニャリルはラケットに銃口を合わせ、引き金を引くが弾丸は一発も命中しなかった。
ラケットは見事に命中。
ラケットはボールに当たると同時に撃ち落とされた鳥のように重力に従って落ちていく。
カタン!と運命を決める音が響く。
2 ー 1
サーブ権 ニャリル
「しゃあ!ナイス、相棒……」
(はぁ……はぁ…なんとか1点取れたよ…)
衰弱し、体がほとんど動かない中でも、もうひとつの人格と話し喜ぶサツキ。
それを見てニャリルは舌打ちをする。
「運が良かったな。だが次は無いと思え」
「なあサイト」
「なんだ?ジェイド」
霧の壁の外。まだ彼らは待ちぼうけ。
「……火薬の匂いだ」
「爆竹でもしてんのか?」
ツンツン頭はいつも呑気だ。
「ったく……」と紅茶を啜り、呟く。
「ニャリルの神器、黒式だ。武器の形はお前らの世界で言うところのハンドガン二丁ってとこよ」
「二丁拳銃ねぇ…でも神器は魔力でできてるんだろ?火薬はいらないはずじゃ」
「銃の神器ってのは中身が複雑だから結構難しいんだ。それに魔力の消費がデカいんだ。弾丸は勿論、属性補正に消炎、エイムアシストとかリロードにも魔力がいるんだ」
と言い人差し指と親指で銃の形を作る。
「なるほど、つまり作る方も使う方もたくさん魔力を使うってことか…」
「そうだ。各オプションや弾丸の性能への魔力の配分を考えてバランス良く作る。さらに何度も言うが中身のの構造は複雑だ。相当器用な神さんじゃないと作れないな」
パァンと撃つような仕草をした後、また紅茶を啜る。
「だが、バナティアの神器は別だ。ヤツの神器は周りに霧を発生させる能力がある」
サイトウは立つと霧の壁に触れる。
「だから撃つための動力源を原始的に補ってるって訳か」
「そういうことだ」
ビンゴとでもいいたげな顔をすると2人は振り返る。
「そこに…いるんだろ?」
同様するかのように草木が揺れる。
「出てこいよ。なぁにダチの部下には何もしねぇよ」
カサカサと草木の中から青く巻かれたマフラーと薄汚いゴーグルの2人が出てきた。
「よお。アオダ、ダイショ。サツキにボコされていらいか?」
「じ、ジェイド!」
「テメェ何してんだヨォ!」
その2人はヘビー盗賊団のアオダとダイショだった。
マフラーの方がアオダでラップ口調のゴーグルがダイショだ。
「お前らこそ、何してたんだ?まさか、サツキに復讐しにきたのか?」
「なんでお前が知ってんだヨォ!」
サイトウは眼鏡をクッと指で上げる。
「紹介が遅れた。俺はサイトウ。超能力者だ」
はぁ?と疑うがその疑いなどほぼ数分で終わった。
そして
「すいやせんしたぁ!」
「俺たちゃ悪かったヨォ!」
お得意の土下座である。
「まあいい。それでジェイド、この壁破れるんだろ?」
もう一度壁に触れる。
やれやれと腕を組んだ。
「超能力者には敵わなねぇな。まあ一応、穴はある。穴はな」
そうして上を見上げる。
「幻影陣から生み出される幻影壁はほとんどの物体をシャットアウトできる。だが2つ穴がある。
それは上だ。外側から見ると頂点には渦潮のような霧になっているところがある。そこが入り口だ」
盗賊2人が理解できているのかわからないが頷いている。
「ただ入ったところで彼女が辞めない限りこの霧は晴れない。その為にはサツキが勝たないといけない」
「それで使うのがコイツだ」
するとジェイドは箱包取り出した。
「神器相手に勝ち目はないからな。あと俺はテレパシーを使ってお前らの思考を見ることができる」
盗賊2人は険しい顔をする。
「協力するぜ……」
「しょうがないヨォ!」
ジェイドはニッと笑うと立ち上がり上の方を指した。
「じゃ、作戦開始だ!」




