第16部 幻影の銃
「ほう?立ち上がるか…」
「ここで死ぬわけには行かねぇからな。なあ相棒!」
(う…うん。頑張る……死にたくないから…)
2 ー 0
サーブ権 ニャリル
2点差離れているがサツキは諦めていなかった。
足掻きではなく勝利を目指して……。
「そうか、だが喜べ。私の更なる力を見せてやろう」
鳥が翼を広げるように両手を広げ、何かを呼ぶかのように呟いた。
「…………全てを覆い隠せ….…真実などない……眼に映るものは幻なり……」
瞬時に描かれた魔法陣がニャリルの足元で光を放った。
「あ、アレは……!?」
光の中から金の装飾が目立つ黒光りする二丁の拳銃が現れ、ニャリルは両手に持ち片方をサツキの方に構えた。
「余の神器、幻影銃黒式……この弾丸、いま衰弱している貴様に避けられるか?」
見たところ、ただの銃ではないだろう……。
「銃……くっ…やるしかねぇ!」
(相棒…)
「くそっ!バナティアの野郎!幻影陣を作りやがったな」
一方ジェイドは門の前で突如現れた霧の壁の前に立っていた。
「こりゃ通れそうにもねぇな」
「どうした?ジェイド?」
ジェイドが驚いて振り返るとそこには眼鏡のツンツン頭がいた。
「なんだサイトか」
「だから俺はサイトウだ」
サイトウだからサイトだろと笑い、サイトウにこれまでの事を話した。
「ああ、なるほど。ニャリルバナティアねぇ、聞いた事ないな」
「なんだバナティアを知らないのか?まあお前は日本の人間だしな」
「殺しを生業にしてる民族は怖いもんだな」
「という事で通行止めってわけさ」
いつも持ち歩いている自家製の紅茶の入っている水筒をグッと飲み、しばらく黙り込んだ。
「なんだ?お前、サツキが死ぬと思ってんのか?」
「……ま、信じてないわけじゃない。だけどバナティアが相手だ。運良く助かったとしてもトラウマを植え付けられて帰ってくるかもしれん…」
サイトウはスッと音を立てて立ち上がった。
風はツンツン頭を草木のようにさわさわと揺らしている。
「まあ、あっちも滅びの未来を知っているからこその行動なんだろうな。こちらも同じ目的だからアイツが死のうが別に構わない。というより好都合だ。だがアイツがそう簡単に死ぬとはおもえんな」
黙ってジェイドは水筒の紅茶を啜る…。
まだ目の前の霧は晴れそうになかった。
2 ー 0
サーブ権ニャリル
「ククッ……余のサーブは一味違うぞ…」
淡い灰色の空に向けてボールを投げた。
「ラケットもねぇのにどう打つんだ?」
「哀れな貴様に教えてやろう、悪は皆銀の弾丸で死ぬ!」
上空に右手の黒式を構え、上空へ放った。もう片方の手の銃は右に撃ち、右に回転し左方向に二発ずつ撃ち放った。
上空に撃った弾丸は命中した。
「なるほど、ボールを弾丸に当てて飛ばすサーブか….…」
(でもやけに弾丸が遅いよ。まるでエアガンみたいだ。それになんで他の弾丸は僕らやボールに向かって撃たないんだ?)
弾丸を受けたボールはニャリル側の台に着地するとロビングのような軌道で飛んでいった。
「だけど、高さを間違えたみたいだな!」
サツキはバック側に来たボールに合わせて回り込んだ。
すると、金属が弾け飛んだような音がした。
(相棒!危ない!)
相棒は気付いていた。
サツキが左方向を見ると霧の壁から細長いペンの先のような鉄の塊が目の前に一瞬だけ見えていた……




