第14部 殺し屋ニャリル・バナティア
「待て!貴様!」
ビクッとなって僕は振り返った。
「な……なんですか?」
「貴様、もしや滅びを呼ぶ厄災の双子ではないか?」
(はぁ?お前、何言ってんだよ?)
相棒は怪訝そうに言い返した。
「落ち着け赤い方。バナティア、何処に根拠があるんだ?いくらレートが上とはいえ初対面にそれは失礼だろ」
シュッと音を立てたかのようにバナティアは飛び上がり、気がつくと僕の目の前にいた。
「な、なんですか?」
「失礼、髪を拝見させてもらう」
バナティアは僕の前髪に触れると隠れている片方の黒い眼を露わにした。
「やはりな。余の知る逸話の1つに赤と黒の眼を持つ異界の双子の話がある」
(その逸話と何が関係あるんだよ!)
「その異界の双子は1人の力は弱いが双子が揃えば完璧と言われるまでもの力を発揮できるという。今は黒いが赤くなるのだろう?」
とりあえず、勘違いしてる皆様に言っておくけどこの逸話に僕は全く関わっていないし関係ない。
けど異世界の人は何かと僕に力があると信じている。
でもその双子のような力が無いといえば嘘になる。
少なくとも相棒にはその力がある。
「それに貴様、あのアスタロトを圧倒したとな」
やっぱり何故か僕の情報が流されている。
二つの意思のこともバナティアさんは理解しているようだ。
「ま、まあ。でも試合は負けましたよ」
とりあえず戦いだけは避けたいのでお茶を濁した。
「ほう?そこまで圧倒しておいて謙遜するか……マキシマスにも勝ったのであろう?」
「……」
「いずれ貴様ら双子は大いなる力に溺れ世界を壊す。余の知る逸話であり、1つの予言だ」
やっぱり知っていたか。僕は強いのか実際のところわからない。少なくとも弱くはない。
だけどこの大会で勝てる自信なんてものは微塵もない。だけどアスタロトやジェイドをも圧倒する力が僕にはある。
だけど…この力は……。
すると自然と僕の眼に強い光が差したかのような痛みがした。
「なら俺たちをどうするつもりだ?!」
(相棒?!)
ぼーっと考えているうちに相棒と入れ替わっていた。
「無論、貴様らを潰す!」
「いい度胸してんな!来い!」
よくわからないプログラムのような文字が空中に飛び交い、光と共に卓球台が出てきた。
「やれやれ……まあいい、サツキ!死なない程度に頑張ってくれ!」
死なない程度にってそんな危ないんですか……。
ふと門の端の方に眼を向けるといくつかの骨が転がっていた。
(も、もしかしてこれって……)
「おい!ジェイド!まさかこの大会……!」
流石に相棒も困惑しただろう。
何しろ彼女の服には赤く点々と模様がつけられている。
「ああ、この世界は怪我が治るのが少しばかり早いだけであって死なないわけじゃない。殺害もできないことはない。というより、彼女の本職は殺し屋だ」
彼女は獲物を捕らえた蛇のような嘲笑を浮かべた。
「そういえば申し遅れたな。余の名はニャリル・バナティア。一族を代表して貴様を討つ!」
(あ、相棒……)
「くっ…でもどっちにせよ殺されるんだ!無抵抗に殺されるくらいなら精一杯戦って死ぬ方がマシだ!」




