第12部 白翼の天使は何を見たか?
「もう終わりか?魔王ローランの手先よ」
「ハァ……ハァ……ここで終わってられるか!」
「もう無理なさらないで!私が代わりにお相手しますわ!」
「引っ込んでろ!クソ天使!これは俺の闘いだ!」
ミカエラはラケットを持ち駆けつけるがアスタロトはそう叫んだ。ミカエラは駆け足を止めた。
「威勢がいいのは嫌いじゃない。だが、貴様の体は大丈夫なのか?私は全力にして最高の試合を求めている。この辺りで辞めておけ、でないと貴様の命にもかかわる…」
「命を奪ったテメェがそれを言うな!」
「くっ……」
数年前のハスノハイ王国にて
ハスノハイ王国は数年前ほど秩序やルールに厳しい国であった。
不法に侵入した悪魔の処刑が行われていた。
悪魔に悪気は無く、他の国では追放くらいで済むものを悪魔という理由で死刑となった。
「カイザー!お前がこの剣で悪を成敗するのだ!」
次の王の候補であるカイザーが死刑の執行人となった。
王に渡された剣を握った。
「やめろ!私は何も…何も…!いや……いやぁ!」
必死に抵抗するが彼女の体は鎖で繋がれていた。
そして町中に民の歓声が溢れる。
カイザー!
やっちまえ!
そいつは悪魔だ!
悪魔を懲らしめるのが英雄様だろ?
「うっ、ううわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
カイザーは震えながら剣を振るった。
悪魔の悲鳴は聞こえず、何やら剣の感触に違和感を感じ、暖かな液が腕や脚に付着していた。
歓声が上がった。
命を殺めた罪悪感を背負いながら、民衆が空けてくれた道を歩んで城へと戻るのであった。
試合は進んでいた。
1 ー 4
マッチポイント
サーブ権カイザー
もうアスタロトは声すら出すのにも精一杯だった。
カイザーはフォア側にサーブを出す。
そこでアスタロトはなんとか返すが明らかに弱いボールだった。
容赦なく鞘から剣を取り出し、必殺技の構えをとった。
「いくぞ!カイザーブレイク!」
アスタロトは魔剣グラムが起こした風圧に二度吹き飛ばされ地面に倒れた。
「ぐ……ぁ…」
「し、しっかりして下さい!大丈夫ですの?」
「この世界じゃあ数時間ほどでその怪我は治るさ。今回はこのくらいにしておいてやる」
(私はこの光景を見ることしかできませんでした。アスタロトがただ魔剣グラムの力を前に立ち竦む姿を)
気を失った悪魔を抱えて必死に走りましたわ。
別に数時間で治るのですからそんなに焦らなくても良いと思った事もありましたが、天使の慈悲とは非常に厄介なものですわね。
アスタロトをベッドに寝かせて私は考えた。
私はあの時、彼に何をすべきだったのか。
いやというより、彼が負けた今、見ていただけの私が出来る事……。
見ていたから…?
「閃きましたの……。一か八かですが賭けてみますわ」
私はラケットを両手で持って、剣のように構えましたの。まるで龍を断ち切る英雄のように…。




