第10部 オーディンの剣
「よぉ!サツキ。いつぶりだろうな」
木の上にはラフなスタイルの服を着たサングラスの男がいた。
そして男はサングラスを外すと見覚えのある顔が現れた。
「ジェイドじゃん!」
(あったの結構最近、でもないか)
ジェイドの名を聞くと盗賊たちは震え上がった。
「じ、ジェイド!?あのレートハンタージェイド!?」
「いやハッタリかもヨォ?」
「ジェイド、その名は此奴らに恐れられるほどの名なのか?」
(僕は詳しく無いけど結構凄い人)
「卓球も中々強いんだぜ!」
「そこの盗賊ども!俺がジェイドならお前らの親分、ドラン・ドラミングが盟友として渡されるナイフってもんがここにあるんだがなぁ?」
アオダの近くに刺さっていたナイフをサツキは拾い上げた。
その柄の部分に龍の紋章のようなものが刻まれていた。
「な!そのドラゴンのマーク!」
「間違いねぇヨォ!親分の、いや俺たちヘビー盗賊団のマークだヨォ!」
「おお、そういえばそこのゴブリン達とサツキは俺の友人だ。ヘビー盗賊団は正当な悪じゃないのか?これはドランに報告かな?」
そういうと二人は土下座をして
ジェイドの兄貴今までの無礼申し訳ありませんでした!ヘビー盗賊団サイコー!ドラン様サイコー!
ジェイドの兄貴もサイコー!
と、盗賊にありがちな挨拶のようなセリフを言って
スタコラサッサと音を立てるかのように二人は逃げ出した。
「というか、異世界にも土下座っていう概念があるんですね」
(ジェイドは元から強そうだけど、そのドランってやつも強そうだな!)
相変わらず戦闘狂だよ、相棒。
「助けていただきありがとうございます」
「いや例には及ばない。当然の事だ」
「ジェイド殿、疑ってすまなかった。奴らを追い払ってくれた事、この子たちを助けてくれた事、感謝したい事ばかりでござる」
「ハハハッ。俺、あんまこういうこと好きじゃないんだがなぁ、なんか気分がいいぜ」
「ジェイドさんは何しにここに来たんですか?」
「ああ、それを伝えないとな。5日目に団体戦があるのは知ってるよな?ゴブ・ハンゾウ、だっけな?お前をメンバーとしてスカウトしに来た」
「拙者がでごさるか?」
(良かったじゃん!ハンゾウ!ボーナス有りの団体戦に出られるんだぜ!)
「うむ、まあ良いのだが拙者はゴブリン…。戦力になるかは別だがそれでも良いか?」
「ゴブリンには誇りがあるんだろ?自分を信じろハンゾウ!俺のチームは差別的な事はしないし、俺が認めたからお前は大丈夫だ!」
「大丈夫ですよ!貴方ならきっと役に立てると思います!」
「何より私たちに希望を与えてくれたのはゴブリンの誇りを持つ貴方です!その心こそチームに相応しいですよ!」
ハンゾウはジェイドに肩を叩かれ、決心した。
団体戦に出場し、この子たちのような貧弱な種族に誇りを持たせようと。
中央都市アナザーキングダムにて
「カイザァァァァァ!ブレイク!」
金属が破壊されるような音が響き、光のような速さのボールは卓球台のエッジギリギリに弾かれどこかへ行ってしまった。
「ま、参った!」
彼は退屈していた。
「もっと手ごたえのある奴はいないのか?」
代々伝わる神器、魔剣グラムは光の中へと消えていった。決して消えたわけではなく、魔力に戻しただけである。
神器のほとんどは魔力でできている。
その神器の元は様々だが神器と契約することによって神器界と呼ばれる魔法空間から神器を召喚できるのである。
魔剣グラムは本来、万物を斬る剣でありその重さ故に使いこなせる者はカイザーを含めたったの4人だけだった。天から導かれた才能とも呼ばれた彼、カイザーは生まれてからたった5年で魔剣グラムを自由自在に振れるようになり、10年で使いこなした。
剣の刃で斬るのではなく、表面の部分に当ててあたかも大きなラケットのようにスイングする。
それが彼の必殺技カイザーブレイクだ。
彼のレートは恐らく1万は超えているだろう。
完全無敗かつ完全無欠ともいわれていた。
もちろんランキングは1位。
はじめにあった小さなテントはバルコニーや大きな玉座がある、巨大な城になっていた。
もはや彼がアナザーキングダムの王だろう。
そう言われていた。
「…さてディナーの時間か…。セパンの料理よりはマシか……」
カイザーは出された高級料理の肉をナイフで切り分け口へと運んだ。
「不味くはない…。だが城で出された飯と同じくらいだな。非常につまらん」
同じような生活、変化の無い日々。
そんな毎日にカイザーは飽き飽きしていた。
「ふぅ。ま、作り物にしては良く出来ていた料理だ」
カイザーがディナーを食べ終えたところで何者かの足音が聞こえてきた。
しばらくすると足音は聞こえなくなった。
「……1人ではないな。私への挑戦なら歓迎だ」
バタン!と扉が開いた!
「オーディ・カイザー!ここにいたか!」
「カイザー、貴方を潰しに来ましたの!」
そこに現れたのは羽根が少し小さい金髪天使と目つきが鋭い銀髪の悪魔がいた。
「天使と悪魔が共闘か……時代も変わったものだな」
パチィン、と指を鳴らすと空間が作られた。目の前には卓球台が置かれていた。
「ちょうど退屈していたところだ。最初に私に挑むのは天使か?悪魔か?」
すると悪魔は
「じゃ、俺がお前をぶっ潰す!」
と言って腰の鞘に収めていたラケットを引き抜き、剣のようにカイザーの方向にラケットを向けた。
「ほう。ではその言葉、二度と出ると思うなよ?」
カイザーは手を前に出すと魔方陣のようなものが浮き出し、そこからまさに王者の風格とも言えるほど煌びやかな黄金の剣が召喚された。
「気をつけてください!相手は強大なパワーを持っていますの!」
「わかってらぁ。要はノータッチ、ってことだろ?」
「貴様らは運が良かったな!これぞ英雄オーディンの剣!魔剣グラムだ!」
魔王の部屋
(この魔王杯にオーディ・カイザーっていうめちゃくちゃ強いヤツがいるらしいぜ!)
「まさか相棒、闘うつもり?」
あ、やめといた方がいいと思うよ。
(魔王さん?!)
「いつの間に!?」
カイザーはハスノハイ王国ってとこの次の王様候補みたいな人なんだ。
「へー。だからキラキラの鎧みたいなの着てるんだ」
そして彼が扱う神器、魔剣グラム!
圧倒的パワーを誇る大剣だよ!
「はぇー。そんなんでよくボール壊れませんね」
まあ、異世界卓球にも耐えられるようなボールじゃないと本気の試合なんてできないからね。
(うーん。神器って王族とかの継承とかでしょ?ずるいなぁ。俺もあの剣振ってみたいぜ!)
あー、まあ、神器のほとんどは継承とかで受け継がれるけど魔剣グラムは扱いがかなり難しいんだ。何よりめちゃくちゃ重いからね。
「乙女の僕にそんな筋力ないです」
(じゃあカイザーはあのバカでかい剣を引きずって生活してるの?)
神器界っていう神器の倉庫みたいなところに自由に出し入れできるんだ。神器と契約したらの話だけどね。神器との契約にはその神器相応の魔力がいるんだ。って考えるとカイザーは超人だね。
(神器って自分で作れるのか?作ってみたい!)
まあできなくはないよ。まずは魔力じゃなくて実際この世界の素材で神器のベースを作った後、魔法の力を注ぐイメージをとってそのイメージを具現化する。そして意思を持った神器と契約して神器界に神器を送る。
手順はこんなもんだけど魔力と想像力が結構いるんだよね。
「あー面倒くさそう。相棒辞めておこうよ?」
(いや、諦めない!俺は俺の神器を絶対に作る!)
それ以前に赤サツキちゃん、魔法使えないよね。
「あ」(あ!)




