第3部 天使と悪魔
どうして私が悪魔と仲良くしなければなりませんの……。
悪魔は神の教えを背く魔物ですわ。
今は、どうかは分かりませんが悪魔は愚か者ですわ。
ちょっと頭の悪いところが気にくわないですの。
天使と仲良くなって良い者ではないですわ。
あのクソ天使となんで俺が………。
天使って苦手というか嫌いというか、なんか見ててイライラするんだ。奴らに罪はねぇかもしれねえけど、良い子ちゃんぶってるとことか悪魔をそこはかとなく見下してるのがムカつく。
エリート悪魔、アスタロトと
千の技を持つ天使、ミカエラ。
彼らが魔王城で戦った後の話である。
「納得いきませんの!ユキムラサツキは私が引き取りますわ!」
「いや、勝負がついてないから保留だ。なんならもっかいやるか?」
「それは僕が決めるべきなのでは…」
「まあまあ、落ち着け。また後日決戦といこうではないか、今日はもう遅い。天使であろうとも門限はあるじゃろ?」
「むぅ…。しょうがないですわね。今回はここで引かせていただきますわ。そこの悪魔、今度こそ勝ってみせますわ!」
「おう!俺も負けねぇからな!」
と言うと天使の翼を広げ、天へと帰っていった。
「まあ、どちらにせよ、サツキはわらわのものじゃ」
「え、それって……?」
天界にて
インターホンの音が聞こえる……。
「ふわぁ〜。こんな時間に誰ですの?」
ガチャ……。
「遅くにすみません。ミカエラ様。ITAの者です」
「いえ、何かご用で?」
「転勤です」
「は?」
「転勤ですよ。公認プレイヤーなので何処かのチームに所属する義務があるんです。ですからそのチームの拠点に転勤するんです」
「はぁ…?ま、まあ荷造りします。転勤先は何処ですの?」
「魔王ローランの城です。」
「え、えぇ!?魔王ローラン!?あの悪魔アスタロトがいる魔王城、ローランの城ですの?」
「よくご存知ですね。流石は公認プレイヤー」
「て、転勤は嫌ですの!私は許可をした覚えはないですわ!」
「女神アティア様が許可を出されましたが……」
「分かりましたの……今すぐ準備しますの…」
翌日
サツキは魔王城に呼ばれた。
「アスタロト!アスタロトはおるかー?」
バタァン!
「どうされましたか?魔王様!?」
だからどんだけ執着心強いんだこの悪魔…。
「サツキ、アスタロト。今日からそなたらの新たな仲間を紹介しよう!ほれ、入ってよいぞ」
扉が開くとそこには飛べそうにない小さな羽、キラキラと光る金の輪っかと髪。
そして、白金と特殊な絹で作られたのユニフォームのような軽い鎧を着た少女がいた。
「まさかあなたは!」
サツキが驚いていると王座の前まで足を運んだ。
「改めて紹介させていただきますわ。ITA公認プレイヤーNO03、ミカエラ・ジェルエンですの」
魔王杯に向けて僕たちの練習が始まった。
「オラ!その程度か?クソ天使!」
「手加減しなくていいんですよ?」
静かにボールの音が響く卓球とは違って彼らの卓球は煽り合いの駆け引きだった。
筋トレにて
「ふ、ふ、ふぅ。腹筋、15回でもキツい……(>_<)」
(おいおい、相棒。そんなんで大丈夫か?)
「あら?悪魔はその程度ですの?私、あと532回ほどできますわ」
「最近の天使は脳筋が多いんだな。ここで無駄に体力消耗させるわけにはいかねぇよ」
フットワーク練習にて
今回はファルケンベリという練習をしている。
ボールを飛ばしてくれる機械のプログラムにこれがあったのでこの練習を提案してみた。
知らない人のために説明すると
バック側→バック
バック側→回り込んでフォアドライブ
フォア側→フォアドライブ
これを繰り返して行うんだ。
「せいっ!はっ!あ、空振った!∑(゜Д゜)」
(ドンマイドンマイ飛びついてけ!)
瞬発力の向上とか体勢を崩さないようにする為の練習法だった気がする。
パタン、パタン、パチィン!
「ふぅ。こんなもんかな?どうよ、クソ天使?」
「まあ、私よりコントロールは劣っていますがパワーだけはありましたわ。パワーだけは」
「俺が脳筋とでも言いたいのか?」
「はぁ?私が珍しく愚かな貴方を褒めてあげているのにその態度、気にくわないですわ!
「んだと!オラァ!」
「あー、また喧嘩してる」
(まあまあ、しばらくしたら落ち着くだろうよ)
練習が続く中あの2人が話すたび、悪いときには目が合うたび彼らは喧嘩していた。
「んー。これもうローランちゃんに話した方がいいかな?」
(多分、あの魔王は分かってると思うぜ)
「でもこのままじゃお互いを傷つけ合って……」
サツキの心の中で赤サツキがフフッと笑う。
(お前のそういうところ。俺はいいと思うぜ。仲良くしてほしい。それがお前の言いたいことだろ?)
「う、うん」
(なら俺に聞くな。素直に魔王に言うべきだろ?)
「わ、わかった。頑張ってみる」
サツキはギーッと寝室の扉を開ける。
そこにはあまり見ないパジャマ姿のローランちゃんがいた。
「あ、あのー。ローランちゃん…」
「ま、まさか!よ、夜のお付き合いか?!」
「いや、そんなんじゃないです」
頰を赤らめたローランの発言を否定し、サツキはミカエラとアスタロトのことについて話した。
「ふむ。やはりそう来ると思っていたぞ。まあもとい、ミカエラはわらわが呼んだのじゃ」
「え、ローランちゃんってそんな権力あるんですか?」
意外と権力はあるようだ。まあLv7の中のうちLv6だからね。
「わらわも最初は迷った。天使と悪魔は仲が悪い。だが今はむしろアイツらが珍しいくらいじゃ。けれどわらわはこう思っとる。
種族にはそれぞれ違った考えや環境があって食い違うのは当たり前の事じゃ。でもわらわは互いに理解し合い、同じ環境で過ごせば相手の苦労や苦痛を共感し合いそこで仲良くなれるのじゃ。結局のとこ、相手の苦労や苦痛を理解出来ないものに友はできん。そう考えておる。じゃからアスタロトとミカエラを共同生活させ仲良くさせようとわらわは考えておる。
部屋も同じにしておるぞ」
「天使とか悪魔の年齢とか分かんないですけど見た目的に年頃の男女を同じ部屋に入れていいんですかね。しかも異種族同士で」
「まあ時を待てば次第に奴らもわらわたちもイチャイチャしているであろう」
「勝手にイチャイチャする路線にしないでくれますかね……」
「どうしてもわらわの考えが分からんというのなら。ほれ、奴らの練習試合を見ておれ」
スクリーンのようなものを出された。
そこにはミカエラとアスタロトが試合をしていた。
「なんでこんな時間までやってるんですかね…」
ローラン城卓球場にて
9 ー 10
ミカエラ マッチポイント
サーブ権 アスタロト
ゲームポイント
2 ー 2
「負けらんねぇよ!」
「こっちこそですわ!」
アスタロトがトスを上げ、そのままフォアサーブを打つ。フォアショートに転がり、ミカエラがツッツキで拾う。
「覚悟しろ!クソ天使!」
アスタロトは回り込み、身体を深くねじ曲げるように腰を落とし、バックロングにくるボールに合わせて振り上げた!
「デビル・ロンギヌス!」
ミカエラはねじ曲がるボールの軌道が読めず、ギリギリのラインで着地してしまうが、
「ブーメランラケットですの!」
ミカエラはラケットを投げその回転でドライブをかけデビル・ロンギヌスを返した。
「前のようにはいかないぜ!」
アスタロトは拳を地面に叩きつけ、紫がかったドーム状の空間を作り出した。
ボールは速度を落とし、ゆるゆるとアスタロト側のコートに入る。
「デスカルゴゾーン!」
速度は明らかに遅いがその分圧倒的パワーを誇るボールがミカエラ側のコートに飛んできた。
「白き紋章じゃ、返せないぜ!」
その言葉を聞いたミカエラはニッっと笑うとブーメランの如く返ってきたラケットをタイミングよく受け取ると片手の指を口に咥えた。
「何をする気だ!?」
ヒュー!と風が吹き抜けるような音が響いた。
彼女の口笛に答えるかのように天からケーキのような柄のの甲羅に羽根の生えたカメが舞い降りてきた!?
「ここまで来ると言葉が出なくなるね」
(ああ、もう摩訶不思議とかいうレベルじゃねぇよ)
舞い降りてきたケーキのような柄の甲羅を背負ったカメを片手で掴むと甲羅の表面をボールにぶつけた!?
「パンケーキ・タートル!」
デスカルゴゾーンの威力を完全に消して返球した。
「くっ!届かねえ!」
アスタロトが滑り込むが返球できなかった。
ゲームセット!
12 ー 10
11 ー 8
8 ー 11
12 ー 14
9 ー 11
勝者ミカエラ!
フィニッシュ技
「パンケーキ・タートル」
「痛ってて……」
クソ、あんなバカバカしい技でフィニッシュされちまった。おまけに最後の滑り込みで擦りむいちまった。
「ありがとうございましたの」
「は?」
手を出して急にありがとうなんて言うから俺は少し焦った。
「例え悪魔とはいえ、試合して下さったもの。感謝の気持ちですわ」
「お、おう。こちらこそ」
手を引かれ立ち上がるとクソ天使はしゃがみこみ、俺の膝に手を当てた。
「…何してるんだ?」
「ち、治癒魔法ですわ」
どうやら俺が擦りむいたのに気がついていたようだ。
なんだかんだで優しいじゃねぇか、天使ってのは。
「こんなところで怪我されたら困りますの。全力全開のあなたと卓球がしたいですわ」
クソ天使はそう言って立ち上がるとちょっとだけ微笑んで「部屋に戻りますわ」と一言かけるとその場を去った。
一瞬感じたこの気持ちは何だろうか。
俺には分からんが今日、アイツがさっき見せた微笑みは何故かローラン様の微笑みと少し似たような気がした。




