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奇怪音頭  作者: 頭隠尻見ヱ三郎


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3/10

私、怒ってます!

「まただ」

二通目の封筒を見ながら、紗和はつぶやいた。


文芸、雑誌、ウェブメディアを手がける中規模出版社、唐島出版。

ウェブメディア「きになるニュース」は、まるで小学生向けの媒体かのような名称と裏腹に、エンタメ、スポーツ、政治経済など様々な事象に対する記事を掲載している。言ってみればなんでもかんでも。


宮町紗和は、きになるニュースのディレクターの1人。

26歳の若手だ。


きになるニュースでは、定期的にテーマに沿った読者投稿のコラムを設けている。

次週アップのテーマは「私、怒ってます!」

イラッとした、本気で怒っている、ぶん殴りたいほどに。大きなことから小さなことまで。数々のエピソードが、メールもしくはきになるニュース公式Xのリプライで集まっていた。


なのでその手紙は、一際目を引いた。

今時手紙は珍しい。

さらに、差し出し人もない。

唐島出版の住所と、「きになるニュース御中 私、怒ってます宛」とだけ書いてあった。


きになるニュース御中ってなんだよ、と紗和は笑いながら封を切った。


奇妙な擬音が目に飛び込んだ。


ギイン・バッタン・エラ・ホイ・サー


読み進めてみる。

奇妙で、ちょっとコミカルな、古風な女性という感じの口調で書いた文章。

「東条豆子」という名前。


「なにこれ、ウケる」

ネタ投稿かな?ソフトモヒカンとか、あはは。


「お母さまの首に、手をかけた時でしたわ」


え?


一気に背筋が凍る感覚がした。


「殺人?」


いや、まさか。

日常の、ちょっとした怒りを投稿するコーナーに。

殺人の告白は、ないでしょ。


先輩の井戸敬一に、手紙を見せてみる。

「殺人予告とかなら、警察に届けるけどなあ」

そうですよね、これじゃあ。

「ただの怪文書じゃない?めっちゃネタっぽいじゃん。口調とか。豆の話とか絶対笑い取りにきてるし」


手紙が主流だった時代はこういうイタズラも多かったらしいよ、と仕事に戻って行った。

その日はそれだけで、手紙は一旦デスクにしまった。

次の日、である。

もう一通。届いた。


同じ体裁。同じ文体。

そして。

今度はもっと直接的に。


「殺しておきました」

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