7.乗馬大会の婚約者
気づけば夏の乗馬発表会の当日になっていた。
学園に通う生徒達の保護者を呼びお披露目会をするのだ。アマリアやミハエルの両親も訪れ、観覧席でミハエルの出番を待っていた。
「ミハエルくんは相当乗馬に力を入れているみたいだね。一年生で選抜に選ばれるのは優秀な証拠だ。ダルトン子爵も鼻が高いのではないかね?」
「学園に入ってからはより一層力を入れているようです。日が沈んでから帰ることもしばしばで…」
「それはそれは!今回の発表会での活躍が期待されるね」
(日が沈んでから帰宅されているのはオフィーリア様との密会の為なのですがね)
のほほんと心の中でツッコミを入れているとミハエルが登場してきた。緊張している様子もなく、胸を張って手綱を操っている。
「ミハエルー!!!!!頑張ってー!!!!」
オフィーリアが観覧席から手を振り声を張り上げていた。
「…彼女はプルド男爵家のオフィーリア嬢じゃないか…ミハエルくんのことを呼び捨てにして親密げに見えるが…」
横に座るミハエルの両親に厳しい目をむけるオルタオ伯爵。これは新しいパターンだとわくわくするアマリア。
「おっ…!オーフィリア嬢とは乗馬クラブでの友人らしくてですね!乗馬クラブ初心者同士助け合ってるようなのです!なぁに!男同士の友情に近いものでして!!!」
「男同士の友情ね……」
両親達の様子を心のネタ帳にメモしているうちにミハエルがスタートをきった。期待された新人の身のこなしに会場は盛り上がる!と思われたが……
「最初の障害を越えられなかったようだな…」
「馬が言うことわ全ぜ聞いておりませんわ」
「コースから脱走しそうになっているぞ」
盛り上がるどころか会場内が困惑の声で渦巻いている。コース内に控えていたクラブの仲間達は白けた顔でその様子を見ていた。散々な結果の後、ミハエルは逃げるように会場を後にしていった。
「…………期待とは違った結果になってしまったようだな………」
「こっ!これは!!何か馬の方に問題があったのでしょう!!!うちのミハエルにかぎってこんな………!」
(まぁ、当然の結果でしょう…毎日放課後は日が沈むまであの泉でお楽しみでしたし…)
ダルトン子爵の言い訳を華麗にスルーしていると、ヒルデとエリクが近くにやってきた。
「お初にお目にかかります。ドレイン帝国から留学で参りました。イシュー・エリクと申します」
「同じく、イシュー・ヒルデと申します」
「おお!君たちが留学生の双子か!いつもアマリアが世話になっているみたいだね」
「こちらこそ!アマリア様にはいつも仲良くして頂き、学園生活を楽しく過ごしております」
「アマリアは一人の世界に篭りがちだから、学園での様子を心配していたのだ。こんなに素敵な友人が出来たことに安心しているよ」
「私には勿体無いくらいの自慢の友人です」
和気藹々と会話を弾ませる4人に、ダルトン子爵はもぞもぞと居心地が悪そうだ。
「そういえば…オルタオ伯爵様はこの学園の最近の流行りをご存知ですか?とある小説が学園中を熱気に包んでいるんですの」
ヒルデの言葉にアマリアは慌てた。何せ学園で自分の書いた物語が読まれている事は両親に話していなかったのだ。
「僕も読んでいるのですが、とても面白いですよ。今は物語の元となった学園の聖地巡礼が行われているんです」
「ほほう…!アマリアは学園でのことはあまり積極的に話すことがないから、流行りなどに疎くてね…」
「よろしければ、ご一緒に小説を準えながら学園内を歩きませんか?アマリア様の学園前のお話も色々お聞きしたいです」
「それはいい考えだ!ダルトン子爵も一緒にどうだね?」
「それは是非とも!」
これ幸いと食いついた子爵にヒルデとエリクはニヤリと笑う。アマリアは二人の提案にヒヤヒヤしてるばかりで何も喋れなくなってしまった。
「では最初に……物語のメインである森の泉へご案内いたします」




