6.双子の布教活動
次の日、ゆっくりと休み心身ともに回復したアマリアが教室のドアを潜ると異様な雰囲気が漂っていた。
(何かしら…皆さん同じ本を熱心に読んでいますわ…)
本好きのアマリアが知らない本をクラスの半分上が読んでいる。ちらっと見えた表紙のタイトルは…
(森の妖精と麗しの貴公子??)
どこか既視感のあるタイトルだ。ますます混乱したアマリアの前にヒルデとエリクが現れた。
「アマリア様ごきげんよう。体調の方は良いのですか?」
「やあ、アマリア嬢。今日はフラフラしてなさそうだね」
「ヒルデ様、エリク様、ごきげんよう」
いつもと変わらぬ二人の様子に少し安心しながら、挨拶もそこそこに本のことを尋ねる。
「もちろん。あれはアマリア様が書いた小説よ」
返ってきた言葉に強メンタルのアマリアも流石にびっくりである。まさか半日で自分の本が製本されクラス中に配られているなんて。
「このクラスだけではないわ。学園中に配りましたの」
さらにびっくりである。
「私、アマリア様の小説を…どうしても世の人々に知って欲しくて…作者の部分を空欄にして製本所に持って行きましたの。ごめんなさい。アマリア様には止められていたのに…」
ヒルデのような美女にそこまで言われてしまえばアマリアも言い淀む。本を出すつもりはなかったが、ここまできてしまえばどうにでもなれである。焦っていたのも一瞬で、いつもののほほんとした空気を取り戻した。
「そうでしたのね…。ヒルデ様がそこまでの気持ちを持ってくださっていただなんて…。わかりました。誰が書いたのかは皆さんに知られていませんし、このまま書き続けようと思います!」
「さすがアマリア様だわ!」
「さすがアマリア嬢だね」
そこからの日々はあっという間だった。
毎日こっそりと泉を訪れては二人を観察し、昂る気持ちのまま物語を綴る。週に一回発行される小説は学園の生徒たちを虜にしていった。幸いなことに、秘密の関係で夢中になっていたミハエルとオフィーリアは小説には気付かず、アマリアとのお茶の回数も激減していった。そして物語の続きが出るたびに気づくものがぽつぽつと現れた。
「ねぇ。前回出てきテラスってここの事ですわよね。机の配置や見える風景が一致しているのよ」
「僕もそう思ってたんだ!誰もいない教室にこっそり二人で訪れた時の話も教室にたどり着くまでの装飾品の場所が同じだったり…」
この憶測は生徒達の周りでどんどん広がっていき、ついに一部のもの達が『聖地巡礼』を行い始めた。物語にでてくる場所を見つけては写真を撮り、物語と照らし合わせるのだ。そして、その足取りは自ずと森の妖精と貴族男子の出会いの場所である泉へと向かっていくーーー




