5.伯爵令嬢の新作
「アマリア様!?どうしたんですのそのお顔!」
「フラフラしてるじゃないか!何かあったのか?」
「あっ…ヒルデ様…エリク様…ごきげんよう…」
次の日、昼食へと向う廊下でアマリアを見つけた二人はギョッとして近づいた。
「実は寝不足と空腹で…昨日屋敷へ帰ってからずっと興奮状態で…今疲れがどっと出てきてしまいましたの…」
「興奮状態?…何かありましたの?」
エリクがアマリアに気づかれない程度に動揺したことをヒルデは見逃さなかった。
「はい…新しい長編小説を書き出したら止まらなく…」
「まあまあ!もう新しい物語を!しかも長編で!見せてくださる?」
「はい。こちらです」
分厚い紙を受け取ったヒルデはざっと目を通す。そんなヒルデを横目にエリクも小説に目を通した。
小説の内容は、美しい森の妖精に学園の貴族男子が一目惚れするところから始まった。婚約者がいるにも関わらず、森でであった美しい妖精に惹かれてしまう。二人が会えるのは日が出ている時間だけ。泉のほとりで愛を育み障害を乗り越えていく…という物語だった。
「これって…」
「なんて素晴らしい物語なの!!!!!!」
エリクが何か言おうとしたのを遮り、ヒルデが頬を高揚させアマリアの両手を握った。
「今までの物語も素晴らしかったけど、今回の物語は臨場感が素晴らしいわ!まるで見てきたかのように描かれる背景や登場人物!!最高よ!」
「ヒルデ様ありがとうございます!今回学園の森でとても良い刺激を受けることができました。ここまで執筆にのめり込めたのは初めてです」
アマリアの疲れた目の奥にはキラキラと輝く感動が見えた。
「でもアマリア様…このように体調に影響してしまって…私心配ですわ。今日は帰ってゆっくりと休んでくださいまし。午後からの授業は私が責任を持って先生方に説明をしておきます」
「そうだな。倒れたら大変だ。僕からも先生方に事情を説明しておくよ」
美しい双子に気遣われ、寝不足と空腹で動かない頭のせいなのか、だんだん家に帰った方がいいと思えてきた。
「そう…でございますね…。今日はゆっくりと休もうと思います。ヒルデ様、エリク様、ありがとうございます」
ぺこっとお辞儀をしてアマリアは荷物を纏めに教室へと戻っていく。
その後ろ姿を見守りつつ悪巧みを始める双子…。
「素晴らしいわ…これを読むだけでどこで何があったのか全てわかる。早速製本所に持って行き一冊作り上げてもらわなきゃ」
その綺麗に製本された本はどうするつもりなんだよ」
「エリクったら!そんなのわかりきってるでしょ?」
誰もが見惚れる美しい笑みで悪魔のような言葉を放つ。
「布教活動よ」




